米IBM、特許の創出と管理に関するグローバル方針を発表
IBM(R)、イノベーションを推進する特許に関するグローバルな方針を確立
-コミュニティーによる特許出願のレビューのために数千時間を提供すること、およびビジネス方法の特許を削減することを公約-
[米国ニューヨーク州アーモンク 2006年9月26日(現地時間)発]
IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)は本日、2ヶ月に及んだ数十人の専門家によるオンライン・フォーラムでの議論に基づき、特許の創出と管理に関する画期的な企業方針を発表しまし
た。
今回発表されたグローバルな方針は、IBMの長年の慣行である質の高い特許と権利帰属の透明性に基づき策定され、高い倫理規範、イノベーションに向けたより健全な環境および知的財産権に対する相互尊重を促進するものです。IBMは、現在法律で義務付けられているものよりも厳しい同様の方針や運用を採用するよう、特許関係各位に働きかけました。
IBMがビジネスを行うすべての地域に適用されるこの新しい方針の理念は、以下の通りです。
○特許出願人は、特許出願の質と明確性に責任を持つべきです。
○特許出願は、一般による審査に付されるべきです。
○特許の権利帰属は明白で、識別容易であるべきです。
○技術的利点が欠落している純粋なビジネス方法は特許を受けるべきではありません。
この新しい方針の詳細については後述します。IBMはこの方針を速やかに導入、支援するために、いくつかの対策を実施します。
○IBMの技術者たちは、特許庁に出願され、公開された特許出願のレビューに年間数千時間携わります。たとえば、米国特許商標庁(United States Patent andTrademark Office:USPTO)の試験的なコミュニティーによる特許のレビュー(USPTO Community Patent Review)の一環として、IBMの技術者たちは、関連先行技術を米国特許商標庁に提供し、米国特許商標庁がより迅速、正確に特許性の判断ができるよう支援を行います。IBMは、他の専門家にもこのプログラムに参加し、時間と知識を提供することを奨励します。
○IBMは、自身の特許出願をコミュニティーによる特許のレビューに提供します。
○IBMは、IBMが保有するビジネス方法の特許の約50%にあたる100件を超えるビジネス方法の特許を一般に開放します。開放された特許は、イノベーションを活性化するためにオープンに活用できます。今後、IBMは十分な技術的内容を含んだビジネス方法を出願することを目標とし、結果としてビジネス方法の特許の出願件数の大幅な削減を見込んでいます。
○IBMは、IBMが所有する特許権および公開された特許出願の譲渡を、自己の名義において速やかに、かつ公式に記録・登録します。
IBMのテクノロジー・知的財産担当シニア・バイス・プレジデント、ジョン・E・ケリー3世博士は次のように語っています。「この方針の中核は、特許の質に対して責任を負うのは出願人であるという理念に基づいており、私どもの施策もこれを支援するものです。これらの理念は、新興地域にも、より成熟した経済圏にも同様に該当します。IBMは、法律で義務付けられているよりもより高い基準を設定します。なぜならば、イノベーションを促進し、知的財産権の保護と活用により明確性を与えるために特許の質が高められることが急務だからです。」
IBMが実施した2ヶ月にわたるオンライン・フォーラ・ムが、この方針を共有し、特許権者のためのベスト・プラクティスについてオープンに論じるきっかけとなりました。このフォーラムには、政府、学界、経済界の各分野から数十名の世界で最も著名な知的財産の専門家が参加しました。wiki技術を活用することにより、フォーラムの参加者が差し迫った知的財産に関する問題について討論したり、解決策を提案したりすることができました。
オンライン・フォーラムの参加者の一人であるテキサス大学法学部のロナルド・マン氏は次のように語っています。「情報技術や基礎科学の進歩によりイノベーションが変化し、知的財産の相対的価値が高まることにともない、知的財産を創造し保護するシステムを改革することが極めて重要です。それまでは、一連の方針を順守し、行動に関する高い基準を設けることにコミュニティーが協力して取り組むことがさらに重要です。」
IBMは、特許に関連するより正式な行動規範が広く採用されることにより、様々な問題を呈している特許出願や特許訴訟の増加に対処する現行の司法制度や行政制度への負担が軽減されると考えています。
IBMの特許に関する方針
○特許出願人は、特許出願の質と明確性に責任を持つべきです。特許出願にあたっては、充分な先行技術調査を行い、明細書と特許請求の範囲は明確に記載されなければなりません。特許出願の前に特許性があるかどうか調査するのはもとより、出願する特許庁にすべての関連先行技術を提供する必要があります。
○特許出願は、一般による審査に付されるべきです。通常、特許出願は申請してから18ヵ月後に自動的に公開されますが、そうでない場合は出願人が18ヶ月後の公開を求めるべきです。出願人はまた、公開された特許出願に関する一般のコメントを認めることにより、特許審査の過程で、最良の先行技術やその他の関連情報を特許庁が入手できるようにするべきです。
○特許の権利帰属は明白で、識別容易であるべきです。特許権者は、ペーパー・カンパニー・の会社名で特許を登録するのではなく、自身の名義で特許を登録すべきです。また、特許出願人は、その特許出願の本来の権利者が誰なのか、出願書類にその権利者の氏名を記載すべきです。
○技術的な利点が欠落している純粋なビジネス方法は特許を受けるべきではありません。その一方、技術的な利点を伴うすべての発明は、特許要件をすべて満たしている限り、特許可能であるべきです。出願人がもし同様のビジネス方法に関する特許を他人が取得することを阻止したいなら、特許を取得することによってではなく、純粋なビジネス方法に関するイノベーションを公表することによって、これを行うよう努めるべきです。
オンライン・フォーラム・:知的財産マーケットプレイスwiki (IP Marketplacewiki)
知的財産を創造し、活用し、保護することは、ビジネスを行う上で極めて重要なものとなっています。企業は、ますます外部のバリュー・チェーンと連携する世界的に統合された企業になろうと努力しています。その結果生まれた知的財産は、将来さらに発展するこの流れのなかで中心的な役割を果たしていきます。30近くの国および地域から178の組織を代表する248名のオピニオン・リーダーが世界規模で討論したIBMのグローバル・イノベーション・アウトルック(GIO)でも、これらの課題は一貫した底意でした。
IBMは、法律、学術、経済、政治、技術などの分野の専門家50人を世界中から集め、IBMの専門家と共に2006年5月、6月の2ヶ月にわたり、コラボレーションツールとして知られているwikiを活用して、オンラインで課題について討論し、適正に機能する知的財産マーケットプレイスの主要な特性を定め、意義ある変化をするための青写真を作りました。wikiは、共通のウェブサイトを通して共同作業で文書を作成することができる新しいメディアであるWeb 2.0ツールです。今回共通の議論の場として活用したwikiは、6つのセクションに分かれており、それぞれ討論の場が付随しています。これら6つの討論の場は、知的財産マーケットプレイスに関する新しいアプローチや新しい考え方が醸し出せるよう、自由に、オープンにアイディアを出し合えるようデザインされました。参加者は、知的財産に関するいくつかの最重要課題について討論し、時には解決策に合意し、時には見解が相違することもありました。
このプロジェクトの結果は、知的財産の創造、権利帰属、ライセンス供与、等価な交換のために機能するマーケットプレイスの基礎を構築する文献という形で共同作業でまとめられました。この文献は、以下のURLからダウンロードすることができます。 http://www.ibm.com/gio/ip
以上
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日本IBMトップページ : http://www.ibm.com/jp/
プレスリリース : http://www.ibm.com/press/jp/