慶應大、4K映像と多チャンネルオーディオの同期・再生実験に成功
世界初 4K映像と多チャンネルオーディオの同期・再生実験に成功
~4K映像と高品質デジタルオーディオの遠隔制作、編集に先鞭~
慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(以下、DMC機構)は、10月9日午前(米国時間8日午後)、共同研究を行っているカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)Calit2(*1)、および南カリフォルニア大学(USC)などと協力して、DMCスタジオを含む日米の複数地点からの4K映像(ハイビジョンテレビの4倍以上の高精細な画像)と多チャンネル(8チャンネル及び24チャンネル)オーディオ信号をサンフランシスコのLetterman Digital Arts Center, Premier Theater(以下Lucas Film Theater)まで伝送し、同期・再生する実験に参画し、成功しました。4K映像と高品質デジタルオーディオを遠隔で制作、編集し、楽しむことを可能とする技術であり、全米音響学会(AES)の技術者、Lucas Film関係者の高い評価を得ました。
■ プロジェクト内容
DMC機構では4K映像を用いたアプリケーションの研究を行っています。特にネットワークを用いた新たな映像の制作、共有技術と利用法の実証を、CineGridという名前のプロジェクトで進めています。今回は、その実証実験の一環で、4K 映像と多チャンネルデジタルオーディオ信号を、複数の場所から伝送し、それらをリアルタイムで同期させて再生するという、世界初の試みを行ったものです。
■ 実験概要
この実験は、DMC機構とUCSD:Calit2, USC, Lucas Filmなどが共同で実施しました。DMC機構(港区三田)からLucas Film Theater(サンフランシスコ)への伝送には研究開発用高速光ネットワーク(WIDE,JGN2,CENIC)を用いています(4K映像と多チャンネルオーディオの伝送にはNTT製のJPEG2000 CODEC(*2)を使用)。
実験1: コンピュータグラフィックによる4K映像と音響用の標準タイムコード(SMPTE Time code)をLucas Film Theaterに伝送し、Lucas Film TheaterではCalit2で同期して生成された24チャンネルオーディオをミックスして同期再生します。これは遠隔での編集技術に利用できます。
実験2: 慶應義塾大学の学生オーケストラであるワグネルソサイエティの演奏をリアルタイムミキシングして再生しました。大画面による遠隔音楽演奏の楽しみ方の可能性を示しました。聴衆は全米音響学会(AES)の技術者など約300名で、4K映像の臨場感と多チャンネルオーディオの効果が絶賛され、今後の4K映像の応用の開拓に先鞭をつけました。
■今後の予定
DMC機構では、今後も4K 映像の新たなアプリケーションに向けて、劇場映画以外のエンタテインメント・研究・教育分野の利用法の実証を、共同研究のメンバーと共に進めていく予定です。
(*1)Calit2 (California Institute for Telecommunications and Information Technology)
カリフォルニア通信情報機構。カル・アイティー・スクェアード(Calit2)と発音。カリフォルニア大学が、サンディエゴ校(UCSD)およびアーバイン校(UCI)にまたがって設置した通信および情報技術に関する研究機関。
(*2)JPEG2000コーデック
デジタル化された映像信号を、高品質符号化方式JPEG2000フォーマットで、符号化もしくは復号する装置。
JPEG2000は、1画面(フレーム)単位でデジタル情報量を減らす圧縮符号化方式。フレーム間の相関を用いるMPEGに比べて圧縮率は低いが品質に優れている。
* DMC機構は文部科学省の科学技術振興調整費の支援を受けています。