実大振動実験により信頼性を実証
株式会社アキュラホーム(埼玉県さいたま市、社長:宮沢俊哉)は、通常建設している住宅をベースに新しい工夫を加えて高い耐震性を持たせた住宅の実物の性能を、兵庫県南部地震波と新潟県中越地震波2波の合計3波を再現した実大振動実験により実証しました。
<実験の概要>
今回の実験では、新潟県中越地震においても全壊・半壊がなく耐震性能について信頼性が確認されている「新世代ハウス」(注1)と同仕様の建物を建設し、耐力壁や接合部などに独自の工夫を加えて、より高い耐震性能を持たせた住宅を実験体としました。
この住宅を三次元振動台に設置して、兵庫県南部地震波1波と新潟県中越地震で記録された震度7クラスの地震波2波の合計3波を再現し、同じ建物を一日のうちに3回振動させるという過酷な条件を設定して実験をおこないました。(注2)
この実験の検証で、3回の大規模地震に被災したにもかかわらず、構造体については実験前の状態に比較して接合部の緩み、金物の変形、材の破損などが全くない高い耐震性能を確認できました。また内部も壁紙が下地の継ぎ目に沿って切れ目が入った程度の軽い損傷であったため、そのまま住み続けられることが確認されました。
今後この技術情報や施工ノウハウをアキュラネット会員工務店(注3)に提供していくことで、全国のユーザーが高い耐震性能を持ち被災後も住み続けられる住宅を、地域に密着した地元の工務店で建築できることになり、新しい耐震住宅の選択肢として注目されていくと思われます。
<実験の背景>
昨年発生した新潟県中越地震において様々な被害が報告されています。その中で最も被害の大きかった小千谷市、長岡市、小出町地区にアキュラネットの工務店が建築した「新世代ハウス」は5棟ありましたが、いずれの住宅にも全壊・半壊が見られず、その耐震性能について信頼性が確認されています。当社で現地の調査をおこなった結果、被災地域では多くの家庭で家具の転倒や食器等の飛散も激しく、倒壊はしていなくとも住み続けることができない住宅が多くみられました。
当社では、兵庫県南部地震の被災地を見てから、大地震でも倒壊しない強度とともに、内部の被害も少なくして被災後も住み続けられる住宅を低コストで実現しようと地盤対策から構造まで研究を重ねてまいりました。すでに十分な性能を持つと確信しておりましたので、今回のような厳しい条件設定での実大実験となりました
今回の実大実験の詳細は、以下の通りです。
被験建物 : 「新世代ハウス」木造2階建 延床面積 97m2 外装仕上済 内装一部仕上
実験内容 : 以下の地震波のシミュレーションによる耐震実験
一波 兵庫県南部地震 神戸海洋波 818gal(気象庁観測)(注4)
(x軸818gal、y軸617gal、z軸332gal)
二波 新潟県中越地震 川口波 2036gal (気象庁観測)
(x軸2036gal、y軸1640gal、z軸549gal)
三波 新潟県中越地震 小千谷波 1314gal(K-NET観測(注5)
(x軸 1314gal、y軸 1144gal、z軸820gal)
測定内容 : 層間変位、筋交い軸歪、横架材曲げ歪など、住宅内約200箇所に変位センサーを取り付けて変形測定
場所 : 株式会社大林組技術研究所
建物の耐震性能以外の実験:
商品化予定の免震装置を機能させて、免震住宅としての実大実験。家具調度品・食器・家電製品・建具・住宅設備などの挙動、及び屋内の安全確保について市販の耐震アイテムの効果
以上
※本件は「国土交通記者会」、「国土交通省専門紙記者会」にて配布しております。
写真データは下記URLよりダウンロードすることができます。
URL:<http://www.aqura.co.jp/news.html>
<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社 アキュラホーム
広報課 丸山
TEL:048-631-3020(ダイヤルイン)
Email :hidetaka@aqura.co.jp
関連URL:http://www.aqura.co.jp/
(注1) 新世代ハウス
先進的企業などが独自に開発した合理化工法や営業設計ソフト、品質向上技術、維持管理のノウハウなどを、地域の工務店やビルダーが地域割など非競合的な制約を受けずに活用できるシステムのみが、財団法人 日本住宅・木材技術センターによって「新世代木造住宅供給システム」として認定されます。同システムにより建設された住宅を「新世代ハウス」と呼びます。アキュラネットの「新世代ハウス」はこの仕組みに加えて、地盤調査や第三者機関による施工中の検査、引渡し後の定期的なアフターメンテナンスや、(財)住宅保証機構等の第三者機関による性能保証を盛り込み、さらに「住宅の品質確保の促進に関する法律」(品確法)、性能表示制度の耐震性能(構造躯体の倒壊等防止・損傷防止)において最高等級である「等級3」を獲得しています。
「等級3」
建築基準法に定める最高等級で、「極めて稀に(数百年に1度)発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊・崩壊などしない程度」とあります。
数百年に一度とは、たとえば東京において気象庁の震度階で震度6から7程度
(建物に作用する地震動の加速度で400cm/s2(gal)程度)となり、関東大震災の震源地の小田原や阪神淡路大震災の神戸の揺れに相当します。これの1.5倍は、600cm/s2(gal)程度の揺れに倒壊・崩壊しない程度となります。
今回、等級3を獲得している「新世代ハウス」を被験建物とし、実際に818gal、
2036gal、1314galの地震波で実験をおこないました。
(注2)実験内容
最初に起こした振動は、兵庫県南部地震の際に最大の振動を記録した神戸市神戸海洋気象台での地震波で(神戸海洋波:震度6強、マグニチュード7.3 最大加速度818gal)大きな横揺れが特徴の波を再現しました。第二波は新潟中越地震の際に観測史上最大の振動を記録した新潟県川口町の地震波(川口波:震度7、マグニチュード6.8 最大加速度2036gal)で、細かい縦揺れから大きく突き上げるタイプの波を起こしました。さらに第三波は、最も被害が大きかった地域の一つである新潟県小千谷市での地震波で(小千谷波:震度6強、マグニチュード6.8 最大加速度1314gal)横揺れを伴って建物を激しく振動させる波を再現しました。
(注3) アキュラネット
全国の地域ビルダー・工務店約600社のネットワーク。1998年12月に発足し、(財)日本住宅・木材技術センターの「新世代木造住宅供給システム認定」による供給ルールに則り「新世代ハウス」を供給しています。事務局を(株)アキュラホーム内に置き、同社代表の宮沢が主宰を務めています。2003年度の木造住宅総受注棟数は7,805棟でありFC・VC等において日本最大級となります。累計では約27,000棟となっています。
(注4)gal(ガル)
地震の大きさを示す単位の一つで、物体を加速する大きさの単位です。
地震動の加速度で一秒間にどれだけ速度が変化したか表す単位で、1ガルは、1ガル=1cm毎秒毎秒(1gal=1cm/sec2)です。これも、震度と同様に、同じ地震でも観測地点の位置によって違う値を示します。標準的な地球上の引力(=重力加速度)は980galで、これを1Gと表すこともあります。ニュートンのリンゴもこの980galの加速度をうけて落ちていきました。阪神淡路大震災の818Galは、水平方向に重力加速度にもう少しで同じとなる値、新潟中越地震の2036Galは重力の2.5倍近い、大変大きな加速度が生じたという事になります。
(注5)K-NET(防災科学研究所 強震観測網)
Kyoshin Net (K-NET)は、全国に約25kmの間隔で建設した強震観測施設。この施設に設置された広ダイナミック・レンジの加速度型ディジタル強震計、及び記録された強震記録を収集して編集する強震観測センターを軸として、強震記録をインターネット発信するシステムです。強震観測センターでは、気象庁発表の速報震源を強震記録のファイルに付加して強震記録のファイルを発信します。