ライオン、植物原料界面活性剤「MES」による衣料用洗剤のデンプン分解酵素の活性化を確認
世界で初めて確認
植物原料界面活性剤「MES※」が、衣料用洗剤のデンプン分解酵素を"活性化"させる
※MES:アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム
ライオン株式会社(社長・藤重 貞慶)は、当社独自の方法で製造され、『トップ』をはじめとする当社衣料用洗剤に配合されている植物原料の主洗浄成分「MES」が、洗剤中のデンプン分解酵素(ステインザイム)を"活性化"させることを、世界で初めて確認いたしました。今回の現象は、一般に洗剤の酵素活性は、洗濯水中の陰イオン系界面活性剤の存在により弱められてしまうという認識に反して、「MES」が酵素の活性を向上させていることを確認した貴重な結果と言えます。
1.研究の背景
植物原料の高機能界面活性剤「MES」は、(1)少ない使用量で高い洗浄性能を発揮する、(2)カルシウムイオン等の濃度が高く通常洗濯に適さない「硬水」中でも洗浄力を有する、(3)生分解性が高い、(4)洗剤に配合されているたんぱく質分解酵素の活性を保つ、などの優れた特性をもつ界面活性剤です。2006年3月発売の『トップ』では、MESの配合量を増やし、洗浄成分中の植物原料比率を約4分の3にしたところ、特にデンプン質の汚れの分解に関し、洗浄力の向上が見られました。そこで、MESの新たなる特性を解明するため、MESがデンプン分解酵素「ステインザイム」に与える影響について研究を重ねてまいりました。
【植物原料界面活性剤「MES」】
当社は、枯渇する化石資源から、再生産可能な循環型資源への移行を目指し、1991年 より主要な洗浄成分の「植物原料への転換」を行いました。その中で、高い生分解性と高洗浄力とを併せ持つ、植物原料の高機能陰イオン界面活性剤「MES」の工業規模での製造に世界で初めて成功いたしました。以来今日まで「MES」は『トップ』をはじめとする当社衣料用粉末洗剤の主洗浄成分として配合されています。
2.研究内容の詳細
1979年、当社が日本で初めての酵素配合洗剤「トップ」を発売して以来、衣料用洗剤への酵素の応用は、急速に広がりました。酵素は、洗濯時に優れた汚れ分解作用を発揮する一方で、一般に、洗剤の洗浄成分である陰イオン界面活性剤の存在下では、活性が低下してしまう傾向にあることが知られていました。新しい「トップ」では、界面活性剤「MES」の配合比率を増やし、その結果洗浄力が向上しました。この「MES」と酵素の活性との関係を明らかにするため、今回下記のような手法で検証を試みました。
(1)界面活性剤の種類と酵素活性
水中に、デンプンの分解により発色する指示薬とデンプンとを含んだ錠剤(ファデバス錠)を粉砕後投入し、デンプン分解酵素を加えた上で、時間経過毎に色素の濃度を測定した。デンプンが酵素により分解されると、その量に応じて指示薬の発色が増すため、色素の濃度を分析することにより、分解の進み具合が定量的に観測できる。この測定法を用いて、(1)水のみ、(2)「MES」の溶液、(3)一般の衣料用洗剤の代表的な洗浄成分であるLASの溶液について観測し、その違いを検証した。
各溶液中のデンプンの分解量の経時変化を調べた結果、一般的な洗剤成分LASの溶液中では、界面活性剤なしの場合と比べて、デンプンの分解量の低下がみられた。一方、
MES溶液中では、界面活性剤なしに比べて、デンプンの分解量が向上することを確認した。(※図1参照。)
(2)界面活性剤の濃度と酵素活性
次に、各界面活性剤の「濃度」が、分解効率に及ぼす影響を検証するため、(1)と同じ手法で、界面活性剤濃度を変化させた条件で、単位時間当たり(60分)でのデンプンの分解量を測定し、濃度変化による影響を調べた。
その結果、LAS溶液中ではLASの濃度が高くなるほど、デンプン分解量は低下した。一方、MES溶液中では、界面活性剤濃度が高くなるに従って、デンプン分解量は増加した。(※図2参照。)
(1)(2)の結果は、MES溶液中ではデンプン分解酵素の活性が向上することを示唆していると考えられる。
3.総括
上記の結果から、洗剤に配合されたMESは、洗濯水でのデンプン分解酵素(ステインザイム)の反応を助け、洗濯時の汚れ分解作用を向上させ、高い洗浄力を発揮していることが考えられます。
当社は今後、脂質分解酵素・たんぱく質分解酵素などに対するMESの効果や、そのメカニズム解明に対しても研究を行い、MESのさらなる有用性を検証してまいります。
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