フジタ、「FTマッドキラー」で改良した浚渫土による植生基盤でヨシ群落の再生に成功
浚渫土を「FTマッドキラー」で土質改良して植生基盤に有効利用
環境負荷を抑え、ヨシ群落の再生に成功
株式会社フジタ(本社:東京都渋谷区、社長:網本勝彌)は財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構(大阪市中央区、理事長:森詳介氏)と共同で、湖沼の浚渫土にペーパースラッジから製造した土質改良材「FTマッドキラー※」を混合した改良土で植生基盤を造成し、ヨシ群落を再生する実証実験を行った結果、
(1)栄養塩の溶出を抑制できる
(2)ヨシの生育が川砂等を使用する在来工法と比較して促進される
(3)圧密沈下等の地形変化が起こらない
(4)水質や水生生物への悪影響がない
などの成果を得、ヨシ群落の再生に成功しました。
※FTマッドキラー:製紙工場で発生するペーパースラッジを加工、製造した無機多孔質のリサイクル土質改良材で、1999年に当社が開発。高含水比の土砂等を物理的な吸水効果により瞬時に所定の強度に改良でき、改良土は中性域で環境にやさしいことが特徴。これを用いた「FTマッドキラー工法」は、国土交通省の平成15年度テーマ選定技術公募システムのテーマ名「浚渫土砂のリサイクル技術」に選定。NETIS(新技術番号CB―010011)に登録
【 開発の背景 】
近年、浚渫土の処分場不足や処分費用などの課題に対し、湖沼内での有効利用が求められています。一方、湖沼等ではヨシ等の水生植物群落を再生し、生態系修復や水質浄化等を行う事業が増加しつつあります。
しかし、浚渫土を沿岸のヨシ群落等の植生基盤に使用することは(1)高濃度で含有する窒素・リンの溶出による水質汚濁(2)生育に必要な基盤強度の不足や植栽工事の施工性悪化(3)造成後の沈下等の可能性――などを理由に適用が困難とされ、川砂等が使用されています。
そこで2者は、浚渫土を湖岸のヨシ群落の植生帯の基盤に有効利用する工法の開発を目的として、約2年間にわたって室内試験や実証実験を行いました。
【 実証実験の概要 】
改良土がヨシ生育に及ぼす影響についての実証実験は、琵琶湖・淀川水質浄化共同実験センター(Biyoセンター)において行いました。改良土は「FTマッドキラー」の配合割合により強度を調整できますが、本実験では2種類の強度(コーン指数qc=300kN/m2、500kN/m2)と、比較のために従来工法で使用される川砂の、計3種類の基盤材を陸域から水深30cmまでの植生帯となるよう締め固めて造成し、ヨシの植栽を行いました。(以下、強度の低い改良土:A区、強度の高い改良土:B区、川砂:対照区、と呼びます)
【 実験結果 】
室内試験の結果から、改良土の強度が高いほど、窒素やリンなどの栄養塩の溶出速度が抑制されることが確認されました。
実証実験2年目のヨシの生育は、B区がいずれの水深(基盤高)においても優れていました。対照区に対するA区、B区の生育量(刈り取り後の乾燥重量)は陸域から水域の全域の平均で、それぞれ1.6倍、2.3倍ありました。対照区ではとくに水深約20cm以上でヨシの生育不良が見られ、この水域でのA区、B区の対照区に対する生育量は、3.0倍、3.9倍となりました。これらは、改良土に含有するリン等の栄養塩がヨシの成長に寄与したためと考えられます。また、改良土の基盤は顕著な沈下は見られず地形が安定していました。改良土の水中植栽部では、動植物プランクトンやヨシ以外の水生植物などの生息への悪影響も見られず、改良土の陸上植栽部では、オケラ、ミミズ、昆虫の幼虫が見られ、これらの生物の生息場になることがわかりました。
【 終わりに 】
今後は、水深や周辺地形等の現地の施工条件に応じた、低コストな施工方法の検討および試験施工を行い、実用化を目指します。