武田薬品、2型糖尿病患者を対象とした「アクトス」の脳卒中再発減少結果を発表
2型糖尿病患者を対象にしたアクトスの大規模臨床試験PROactiveの追加解析結果について
― 脳卒中再発予防に関する効果を公表 ―
9月3日(欧州時間)、スペイン・バルセロナで開催されている第15回世界心臓病学会議(World Congress of Cardiology: WCC)において、大規模臨床試験PROactiveの追加解析として、塩酸ピオグリタゾン(製品名:アクトス(R))が、高リスクを有する2型糖尿病患者における脳卒中の再発を有意に減少させる、という結果が公表されました。
■追加解析結果
・ 脳卒中再発率:
アクトス投与群において、プラセボ投与群と比較して47%減少しました(p=0.008)
・ 心疾患による死亡、心筋梗塞(無症候性のものを除く)、脳卒中の合計発症率
アクトス投与群において、プラセボ投与群と比較して28%減少しました(p<0.05)
(脳卒中の既往歴のない患者では、アクトス投与群とプラセボ投与群で発症率に差は見られませんでした。)
このPROactive試験追加解析の発表者であるRobert Wilcox教授(循環器学、University Hospital, Nottingham, 英国)は、「今回の解析により、脳卒中の既往歴のある2型糖尿病における再発率が、プラセボ投与群の10.2%に対して、アクトス投与群では5.6%とほぼ半減する、という結果が得られました」と述べています。
PROactive試験においては、血糖をコントロールする経口糖尿病薬が、高リスク患者における死亡、心筋梗塞、脳卒中などの心血管イベント発症率を顕著に抑制する可能性を示唆する結果が得られています。
<PROactive試験について>
PROactive試験は、無作為割付け、二重盲検、プラセボ対照大規模臨床試験であり、心血管疾患の既往のある5,238名の2型糖尿病患者を対象として、糖尿病および循環器疾患の標準治療(*)にアクトスを追加投与することによる大血管障害に対する進展予防効果を、次の2つの項目で評価しました。
(*) ACE阻害薬、βブロッカーなどの高血圧症治療薬、メトフォルミン、SU薬、インスリンなどの糖尿病治療薬、抗血小板作用を持つアスピリン、HMG-CoA還元酵素阻害薬("スタチン")やフィブラート薬などの脂質代謝改善薬などによるもの。
・ 主要評価項目
無作為割り付け後、大血管障害の発症、介入治療の実施、あるいは全死亡(全ての原因による死亡)など7つのイベントのうち、いずれかが最初に起きるまでの期間
・ 最重要副次評価項目
無作為割り付け後、心筋梗塞、脳卒中の発症、あるいは全死亡のうち、いずれかが最初に起きるまでの期間
主要評価項目では、プラセボと比較して10%の危険率の減少がみられたものの、統計学的有意差を示すには至りませんでした(p=0.095)。一方、最重要副次評価項目では統計学的有意差が認められ、アクトスが心筋梗塞、脳卒中、全死亡のリスクを16%減少させることが示されました(p=0.027)。
(上記の結果については2005年9月、ギリシャのアテネで開催された第41回欧州糖尿病学会(Europ-ean Association for the Study of Diabetes:EASD)において発表されています。)
<ご参考>
糖尿病患者における脳卒中の発症率は非糖尿病患者の2~4倍とされており、日本人では、久山町研究で示されているように約3倍に上ります。また、糖尿病の有無にかかわらず、脳血管障害は、日本人では心筋梗塞とほぼ同じ頻度で発現し、米国人に比べ日本人では脳梗塞が2.7倍、脳出血が10倍多いことも報告されています。
(参考文献: Fujishima, M. et al.: Diabetes 4S(Suppl 3): S14, 1996.
藤島正敏:Clinical Calcium,9,41-46,1999.)
以上