富士経済、高齢者向け食品の小売・卸・施設などの動向調査結果を発表
シルバー&シニアフード調査を実施
病院・高齢者福祉施設給食市場は2011年に約2兆円(2006年比113%)
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、超高齢社会が迫りつつある日本の高齢者向け食品の小売、卸、施設(病院、高齢者福祉施設等)、給食、宅配における動向について調査し、その結果を「シルバー&シニアフードチャネルの徹底解明」にまとめた。
<調査の背景>
国立社会保障・人口問題研究所の予測では、今後日本の総人口が減少していく中で、65歳以上の人口は逆に増加していくとされている。2005年の65歳以上の人口は2,500万人を超える(自主生活者83%:2,075万人、要支援者3%:71万人、要介護者14%:357万人)。2030年には3,500万人近くに達し、総人口の約30%が65歳以上となる。3人に1人が65歳以上、50歳以上にハードルを下げれば2人に1人がシルバー世代またはシニア世代に該当するという社会が待ち受けている。人間が生きていく上で食べることはなくならないが、このような大きな構造変化イコール日本人の加齢による身体の変化は食事の質を大きく変え、食の市場も大きく変化していくと予測される。
<調査結果の概要>
施設給食市場
2006年見込 1兆7,075億円 2011年予測 1兆9,299億円(伸長率113%)
2006年の病院等及び高齢者福祉施設の施設給食市場は、1兆7,000億円超に達するとみられ、これはファミリーレストラン市場を上回る大規模な市場である。病院・診療所及び入居型介護サービス施設である介護保険施設の給食で、施設給食市場全体の80%以上を占めている。しかし、病院は施設数の減少に伴って食事売上が減少しているほか、高齢者福祉施設においても2006年の法改正による在宅介護重視への方針転換から、居宅サービスの施設数増加や業容拡大が見込まれる。そのため、病院・診療所及び高齢者福祉施設の施設給食全体に占める病院等給食の比率低下とともに、施設給食のあり方も大きく変わると予測される。5年後の2011年には2兆円近い市場になり、特に、新業態である高齢者専用賃貸住宅が16倍、有料老人ホームとグループホームが2倍近い伸びが予測される。
給食受託市場(病院給食受託業、高齢者福祉施設給食受託業)
2006年見込 8,931億円 2011年予測 1兆2,331億円(伸長率138%)
病院・診療所は、2006年4月の医療法の改正によって、適時適温での食事提供に対する加算の廃止など診療報酬が削減され、病院及び診療所の食事収入も減少しているため、自前調理から外部委託への流れが強まっている。すでに調理が外部委託されている場合でも、さらなるコスト削減圧力が高まっており、より受託費が低い給食業者への切り替えや食材コストの低減が進められている。医師や管理栄養士がチームを組み、個々の患者に対して栄養改善の指導や早期退院をサポートするNST(ニュートリションサポートチーム)を導入する病院もあり、NST業務に関わる管理栄養士の負担を軽減する目的で外部委託するケースもある。
高齢者福祉施設給食は、厚生労働省が定める介護高齢者福祉施設と、老人福祉施設などが含まれる。従来、入居者は食材料費負担分を標準負担額として780円を負担していたが、2005年10月の介護保険法の改正後は、入居者の標準負担額(食費)が1,380円と大幅に増額された。介護保険施設では入居者の負担増を抑えるために、自前調理からコスト削減が見込める給食業者への委託の流れが目立ってきている。有料老人ホームの場合は、食費は全額自己負担であるが、食事は有料老人ホームを選ぶ重要なポイントでもあり、イベント食などの提供も重視されるため、建設時点でノウハウを持つ給食業者へ委託を決め、厨房や食堂の設計を給食業者と行うことも多い。
高齢者向け宅配サービス市場(各市場の食品販売金額のうち高齢者向けを集計)
2006年見込 3,526億円 2011年予測 3,998億円(伸長率113%)
無店舗食材料セット宅配市場は、献立とともに1回ごとの食事に用いる食材料をセットの状態にし、自らの物流網を中心に配達する無店舗展開の企業を対象としている。あらかじめ切り分けた食材料に調味料が付属したキットメニューに注目が集まっている。食材料セットと完成食との中間的な位置づけにあたるキット食は、簡便性ニーズの高まりから拡大している。
無店舗完成食宅配市場は、弁当及びご飯や汁ものを除いた調理済メニュー食(完成食)を継続的に提供する無店舗宅配サービスを対象とする。単発的な注文に応じて食事を提供している"宅配ピザ"、"宅配すし"、"仕出し弁当"等は含まない。ただし、行政からの委託を受けて配食サービスを実施している場合は含める。(例:仕出し弁当業者等が配食サービスを行っている場合など)
生協・共同購入では、高齢者世帯向けの個配利用手数料の割引(もしくは無料)サービスにより新規契約を進めているが、期間限定の特典ということもあり、期限が切れると同時に退会する傾向が強く、特典だけに頼らない生協の利点訴求の強化が課題となっている。
CVS宅配サービス市場は、シニア層の掘り起こしなどを目的として始められたが、現状は試行錯誤の段階で、市場規模は2006年で40億円弱とみられる。
牛乳販売店は、牛乳のみならず機能性乳飲料、ヨーグルト、健康食品など品揃えを拡大し、地域に根付いた販売網を活用し宅配機能の充実化を図っている。店舗数の減少及び消費者の牛乳離れから、販売額は微減推移している。多くの販売店では、経営者の高齢化及び後継者不足の深刻化や昔ながらの経営手法のため、宅配サービスにとっては追い風となっている経営環境の変化に対応できていない状況である。
<注目市場>
介護食市場
2006年見込 107億円 2011年予測 133億円(伸長率124%)
厚生労働省許可の高齢者用食品、日本介護食品協議会認定のユニバーサルデザインフード、嚥下困難者用食品が対象。介護食は、嚥下障害などで食事量が減少することで起こる栄養失調や脱水症状、食事の誤嚥による肺炎を防ぐために、高齢者に食べやすいように柔らかさやとろみがつけられた食品である。病院や介護施設などの医療施設で嚥下困難者向けとして利用されてきた。高齢化の急速な進展が予想されるようになった90年代後半から、在宅介護の増加を見越してキッセイ薬品、キユーピー、明治乳業などが参入した。2000年に介護保険法が施行されてからは、参入メーカーも増加し、量販店等でも扱われるようになった。2002年には介護食メーカーにより日本介護食品協議会が設立され、2003年には、メーカーごとに異なっていた柔らかさを、ユニバーサルデザインフード区分1~4として統一し、高齢者の嚥下障害の状態に合わせて商品を選びやすくしている。しかし、利用者が限られることに加え、認知度の向上が進まず、売場の確保に苦戦するメーカーも多く、高齢者の急増にも関わらず、市場は微増推移となっている。2006年の介護保険法の改正で、施設介護から在宅介護重視の方向が明示されたことから、今後は市販用介護食のニーズが高まるとみられ、市場も増加推移が見込まれる。
無店舗完成食宅配(高齢者向け)
2006年見込 500億円 2011年予測 660億円(伸長率132%)
高齢者向け配食サービスは、介護保険法の対象外であるが、毎年老人福祉関係予算の中の「介護予防・地域支えあい事業」として予算が捻出されてきた。高齢者向け配食サービスは、高齢者の安否確認サービス(配達時の手渡し)が義務付けられ、利用者の不在時には本部経由で電話連絡等をし、一定時間までに連絡がつけば再訪問し商品を手渡しすることになっている。そのため、顧客の不在に伴う時間ロスが生じやすく、配達コストが嵩み収益性は低くなりがちである。従来は、地域ごとに地元の中小規模の事業所が指定業者として登録されるケースが多かったが、自治体の予算削減により地元業者の撤退が相次いでいる。その一方で、コスト意識が高く多店舗展開している業者が、新たな指定業者として登録されることが多くなっている。補助金カットにより厳しい経営環境となっているが、高齢者人口の増加に伴う利用者数の増加から市場トータルでは拡大している。自治体の予算削減は今後も継続するとみられ厳しい環境は続くが、高齢者を配送員とすることで大きく売上を伸ばしている事例もでてきている。利用者と同じ環境に属する人が担当となり顧客に安心感を与えることができるとともに、担当者が利用者との"共感"を得やすく、営業面のメリットも得られる。今後は、デイ施設等の高齢者施設向け、食事サービスのない高齢者専用賃貸住宅の入居者向けでの需要拡大も見込まれる。
<調査期間>
2006年5月~8月
<調査方法>
弊社専門調査員による面接および電話取材と関係公表資料を参考に集計・分析。
<調査対象>
シルバー=高齢者(65歳以上)、シニア(50歳以上65歳位未満)の消費する食品
(1)チャネル
小売業
量販店、ドラッグストア、病院売店
卸売業
食品総合卸/業務用卸、菓子卸、全病食卸
病院等、高齢者関連施設
病院・診療所、介護老人福祉施設 、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(A型)、ケアハウス、デイサービス、デイケア、短期入所生活介護事業所、短期入所療養介護事業所、有料老人ホーム、グループホーム、老人福祉センター、高齢者専用賃貸住宅
給食受託業
病院給食受託業、高齢者福祉給食受託業
食品宅配業
無店舗食材料セット宅配、無店舗完成食宅配、生協宅配、CVS宅配、牛乳販売店
(2)事例分析
製造業
キユーピー
小売業
伸公、ワタキューセイモア
卸売業
国分、関東食品、ふくしま
病院等、高齢者福祉施設
生長会、永寿総合病院、社会福祉法人生活クラブ、響会、社会福祉法人鹿沼市社会法人協議会、ワタミの介護、メッセージ 、コムスン、タクミ工業、ケアハウス、やまねメディカル
給食産業
日清医療食品、シダックスフードサービス、レオックグループ、グリーンハウス、魚国総本社、メフォス、シーケーフーヅ
食品宅配業
ヨシケイ開発、JAグループ、タイヘイ、ディナーサービスコーポレーション、エックスヴィン、武蔵野フーズ、セブン-イレブン・ジャパン、はーと&はあとライフサポート、エイエイエスケータリング、学習研究社/学研ココファン、パルシステム生活協同組合連合会
以上
資料タイトル:「シルバー&シニアフードチャネルの徹底解明」
体 裁 :A4判 429頁
価 格 :130,000円(税込み136,500円)
調査・編集 :富士経済 東京マーケティング本部 第一事業部
TEL:03-3664-5831 (代) FAX:03-3661-9778
発 行 所 :株式会社 富士経済
〒103-0001東京都中央区日本橋小伝馬町2-5 F・Kビル
TEL03-3664-5811 (代) FAX 03-3661-0165 e-mail:koho@fuji-keizai.co.jp
この情報はホームページでもご覧いただけます。
URL:http://www.group.fuji-keizai.co.jp/
URL:https://www.fuji-keizai.co.jp/