帝国データバンク、8月の全国企業倒産集計を発表
2006年8月報
全国企業倒産
倒産件数は774件、前年同月比2.7%の増加
負債総額は3609億3000万円、今年3番目の低水準
倒産件数 774件
負債総額 3609億3000万円
前月比
件数 3.8%増 前月 746件
負債 1.7%増 前月 3548億4000万円
前年同月比
件数 2.7%増 前年同月 754件
負債 10.0%増 前年同月 3280億5300万円
ポイント
■倒産件数は774件、前月比3.8%の増加、前年同月比も2.7%の増加。
■負債総額は3609億3000万円で、前月(3548億4000万円)比1.7%、前年同月(3280億5300万円)比10.0%それぞれ増加したものの、今年3番目の低水準。
■規模別では、負債100億円以上の倒産が5件にとどまるなど、大型倒産は引き続き低水準。
■地域別では、関東(340件、前年同月比14.9%)が今年最高を記録。
件 数
2006年8月の倒産件数は774件で、前月(746件)を28件上回るとともに、前年同月(754件)も20件上回った。
前月比は+3.8%、前年同月比でも+2.7%を記録。
ここ数ヵ月、倒産は増加と減少を繰り返しているが、原油・素材価格高騰などの懸念材料が倒産推移をさらに上ぶれさせる不安もあり、当面は一進一退を繰り返しながらも現在の緩やかな増加基調が続くものと推測される。
負債総額
2006年8月の負債総額は3609億3000万円で、前月(3548億4000万円)を60億9000万円、前年同月(3280億5300万円)を328億7700万円上回ったものの、今年3番目の低水準。
前月比(+1.7%)、前年同月比(+10.0%)では、ともに増加を記録。
負債10億円以上の倒産は65件(前年同月57件)、同50億円以上の倒産が14件(同10件)発生。同100億円以上の倒産は5件にとどまるなど、大型倒産は引き続き低水準。
業種別
4業種で前年、前年同月上回る
業種別に見ると、7業種中、サービス業(134件、前月比+8.9%、前年同月比+14.5%)、卸売業(131件、同+2.3%、同+8.3%)、小売業(132件、同+8.2%、同+3.1%)、製造業(113件、同+25.6%、同+1.8%)の4業種で、前月、前年同月をそれぞれ上回った。
一方、運輸・通信業(21件、前月比▲27.6%、前年同月比▲8.7%)、建設業(203件、同▲8.6%、同▲3.3%)の2業種は前月、前年同月をそれぞれ下回った。
構成比で見ると、上位は建設業(26.2%)、サービス業(17.3%)、小売業(17.1%)の順となっている。
主因別
「不況型倒産」構成比は75.5%
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は584件(前月566件、前年同月557件)となり、前月を3.2%(18件)、前年同月を4.8%(27件)ともに上回った。
「不況型倒産」構成比は75.5%(前月75.9%、前年同月73.9%)となり、前月を0.4ポイント下回ったものの、前年同月を1.6ポイント上回り、2ヵ月連続の75%超えとなった。
一方、放漫経営は28件(前月52件、前年同月51件)で、前月を46.2%、前年同月を45.1%それぞれ大幅に下回っている。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
規模別
負債100億円以上の倒産は5件
負債額別に見ると、負債10億円以上の倒産は65件(前月56件、前年同月57件)、同50億円以上の倒産が14件(同9件、同10件)発生。同100億円以上の倒産は5件(同7件、同5件)にとどまるなど、大型倒産は引き続き低水準で推移している。
負債5000万円未満(316件、前年同月比+10.9%)と、同5000万円以上1億円未満(134件、同▲6.3%)を合わせた負債1億円未満の中小・零細企業の倒産は450件(構成比58.1%)となり、全体の過半数を占めた。
資本金別に見ると、個人経営(50件、前月比▲21.9%、前年同月比▲20.6%)の倒産が低水準となっている。
態様別
破産の構成比は91.5%
態様別に見ると、破産は708件(前月674件、前年同月680件)で、前月比は5.0%(34件)、前年同月比も4.1%(28件)ともに増加となった。構成比は91.5%で前月(90.3%)、前年同月(90.2%)ともに上回り、3ヵ月連続の90%台となった。
特別清算は21件(前月21件、前年同月33件)で、前月比と同水準だったものの、前年同月比では36.4%(12件)の減少となった。構成比は2.7%で前月(2.8%)、前年同月(4.4%)ともに下回った。
民事再生法は45件(前月51件、前年同月39件)で、前月比は11.8%(6件)の減少だったものの、前年同月比は15.4%(6件)の増加となった。構成比は5.8%で前月(6.8%)を1.0ポイント下回ったものの、前年同月(5.2%)を0.6ポイント上回った。
地域別
東京都の倒産件数は今年最高
地域別に見ると、9地域中、北海道(25件、前年同月比+19.0%)、関東(340件、同+14.9%)、北陸(20件、同+53.8%)、中国(25件、同+8.7%)、四国(24件、同+84.6%)の5地域で前年同月を上回った。
とくに、関東(340件、前月比+27.8%)は、前月、前年同月をともに上回り、3月(331件)を抜いて今年最高を記録した。
なかでも、東京都(208件)は、前月(153件)、前年同月(178件)をそれぞれ大幅に上回り、今年最高となった。業種別では卸売業、負債規模別では負債1億円以下の規模での倒産増加が目立っている。
今後の問題点
■8月は、原油高や金利上昇などの懸念がやや後退し、天候不順や自然災害による消費や企業活動へのダメージも弱まるなど、景気回復を妨げるリスクが前月に比べて低減した。帝国データバンクが9月7日に発表したTDB景気動向調査(全国)によると、2006年8月の景気動向指数(景気DI)は46.7となり、前月比0.7ポイント増と5ヵ月ぶりに改善。なかでも原油・素材価格高騰の影響から景況感が悪化していた鉄鋼・化学関連業界をはじめ、金利動向に敏感な不動産・金融業界、夏シーズン本格化による恩恵を被った小売・サービス業界などで景況感が改善した。
■一方で、原油高は依然として楽観できる状況ではなく、素材価格高騰に伴う価格転嫁が進まない中小・零細企業は厳しい経営を強いられており、耐え切れずに倒産する企業が増えている。
■こうしたなか、2006年8月の法的整理による倒産は774件となり、前月比では3ヵ月連続(+3.8%)、前年同月比では2ヵ月連続(+2.7%)の増加となった。月次ベースの倒産件数の推移は一進一退を繰り返しているものの、長期的なスパンでとらえると緩やかな増加基調が持続している。負債総額は3609億3000万円となり、前月比(+1.7%)と前年同月比(+10.0%)でそれぞれ増加となったものの、3ヵ月連続して4000億円を下回り、前月に次いで今年3番目の低水準を記録するなど、大型倒産は引き続き低水準で推移している。
■最近の傾向として、原油・素材価格高騰の影響による倒産が増えており、8月は16件(前月11件、前月比+45.5%)に達し、このうち原油関連が14件(同6件、同+133.3%)を占めた。燃料費の上昇に苦しむ運送業者をはじめ、非鉄金属などの素材購入に苦慮してコスト削減も限界に達した製造業者、それらの仕入れ価格を販売価格に転嫁できない卸売業者などが倒産に至っている。ガソリンスタンド(GS)への影響も避けられず、たとえば、GS経営の南場石油(株)(負債1億5000万円、新潟県)は、セルフスタンドなど同業者との競合に加え、近年は仕入れ価格の高騰分を販売価格に転嫁することができず、破産を余儀なくされた。
■貸金業者の上限金利を巡る規制強化の動きが、中小企業への資金供給を阻害するおそれがあるうえ、政府系金融機関が一般貸付を縮小させる方向にあるなど、将来的に中小企業の経営環境を厳しくさせるであろうリスクは少なからず存在している。今後の倒産動向については、当面は一進一退を繰り返しながらも現在の緩やかな増加基調が持続すると予想されるが、原油・素材価格高騰などの懸念材料が、倒産推移をさらに上ぶれさせる不安もあり、特にこれらの影響を受ける運輸業者、製造業者、卸売業者の動向について注意が必要である。