ライオン、小学生の「肥満」と「早食い」などの生活習慣との関連性を発表
サラリーマンだけじゃない!
小学生も「早食いは肥満のもと」
~「おにぎり」の食べ方調査とアンケート結果から見る、小学生の"肥満"対策~
『第55回日本口腔衛生学会』で10月7日に発表
(財)ライオン歯科衛生研究所(理事長・高橋達直)は、東京歯科大学社会歯科学研究室石井(いしい)拓男(たくお)教授と共同で「咀嚼(そしゃく)と肥満」について研究を進めてまいりました。
2001年には、サラリーマンにおいて「早食いは肥満のもと」であることを明らかにし『日本口腔衛生学会』で報告いたしましたが、この度、小学5年生においても「早食い」と「肥満」に相関性があることを明らかにしました。(財)ライオン歯科衛生研究所は、この研究結果を10月7日に『第55回日本口腔衛生学会』で発表いたします。
<研究の背景>
近年、成人における「メタボリックシンドローム」や「肥満」への関心が高まっています。
(財)ライオン歯科衛生研究所では、2000年から東京歯科大学社会歯科学研究室の石井拓男教授と共同で、歯科保健の視点から「咀嚼」の重要性に関する教育の推進を目的に、「肥満と食習慣」との関連性を研究してまいりました。
その結果、
(1)サラリーマンにおいて「早食い」と「肥満」は高い相関がある(2001年日本口腔衛生学会発表)
(2)「よく噛む」ことは、「インスリン」の分泌量を抑え、少量の食事で満足感を得ることできる。(2004年日本口腔衛生学会発表)
(3)「早食い」の人は、「子どもの頃からの習慣なので改善しにくい」と考えている。
などを明らかにしました。(2005年日本口腔衛生学会発表)
そこで今回は、小学生の「肥満」と「早食い」などの生活習慣との関連性を明らかにするとともに、「咀嚼」の重要性を学ぶ健康教育によって生活習慣が改善されるかどうかについて調査を行いました。
<研究結果(1)小学生でも「早食い」と「肥満」は相関している(図1)>
調査は、沖縄県八重山地区在住の小学5年生256名(男子137名、女子119名)について、身長・体重の測定と同時に食生活に関するアンケートを実施しました。肥満に関する指標は、学童の肥満度の指標としてよく使われるローレル指数(身長と体重から算出=Kg/cm3×107)を用いました。調査を実施した小学生のうち、ローレル指数で「太り過ぎ」と判定されたのは男子12.4%、女子9.2%で、全国平均の男子8.6%、女性6.8%に対して高い傾向が認められました。
まず、食生活に関するアンケート結果と「肥満」との関係を調べました。その結果「食べる早さ」と「肥満」とは、強い関連性が認められ、2001年に実施したサラリーマンにおける研究結果(図3)と同じ結果が示されました。一方で、今回の調査では一般的に肥満との関係が指摘されている「おやつの回数」や「夜食」の有無との関連性は認められませんでした。調査結果の概要は下記の通りです。
(1)「早食い」の子どもほど、肥満度(ローレル指数)が高い
他人と比較して食べるのが「早い」と答えた子どものローレル指数は、平均141Kg/cm3×107だったのに対し、「遅い」と答えた子どもは平均125Kg/cm3×107で、「早食い」の子どもほどローレル指数が高いことがわかりました。
(2)「一口の量が多い」子どもほど、肥満度(ローレル指数)が高い
食事の量について「一口の量が多い」と答えた子どものローレル指数は、平均139Kg/cm3×107だったのに対し、「少ない」と答えた子どもは平均129Kg/cm3×107で、「一口の量が多い」子どもほど、ローレル指数が高いことがわかりました。
(3)「おやつの回数」や「夜食」と、肥満度(ローレル指数)には有意な関連性は認められない
一般に肥満との関連性が指摘されている「おやつの回数」や「夜食」「運動時間」と、「肥満度(ローレル指数)」とは、今回の調査では有意な関連性は認められませんでした。
<研究結果(2)「咀嚼」の授業後に、「おにぎり」の食べ方が変化(図2)>
次に、「咀嚼」の重要性を学ぶ健康教育が与える影響について調査しました。
身体測定やアンケートと同時に、小学生に市販の100グラムの「おにぎり」を1個食べてもらい、その様子を撮影したビデオから「食べる早さ」「噛む回数」や「口に入れる一口の量」を測定しました。その後「咀嚼の大切さ」についての健康教育プログラム(45分)を実施し、3ヶ月後に再度、身体測定・アンケート調査、おにぎりの食べ方について調査を行い、変化する様子を確認しました。
その結果、プログラムの実施前にはおにぎりを噛む回数が平均198回であったのに対し、3ヶ月後では368回と、平均170回「噛む回数」が増えました。しかし「肥満度(ローレル指数)」については、プログラム前と比較して有意な変化は認められませんでした。
<考察>
昔から一般的に「早食いは太る」と言われます。今回の小学5年生においても「食習慣」の一つである「食べる早さ」と「肥満」は関係が深いことが実証されたことから、「小学生の肥満対策」には子どもの頃から「食べ方」に関する健康教育を実施する必要があることが示唆されました。
さらに「咀嚼」の健康教育によって、「食べ方」は変化する一方で、短期間では「肥満度」は有意に変化しなかったことから、「小学生の肥満対策」には家族・学校との連携や、継続的なフォローアップが課題であることが今回の研究で示唆されました。
以上の研究成果は、大阪府豊中市で開催される『第55回日本口腔衛生学会』で、(財)ライオン歯科衛生研究所が10月7日(土)に発表いたします。
★『第55回日本口腔衛生学会』発表概要
発表日:2006年10月7日(土)
会 場:千里ライフサイエンスセンター(大阪府豊中市新千里東町1-4-2)
演 題:咀嚼と肥満の関連性に関する研究
小学生の肥満と生活習慣との関連性と健康教育の効果について
発表者:(財)ライオン歯科衛生研究所 武井典子、渋谷耕司
東京歯科大学社会歯科学研究室 石井拓男教授
お問い合わせ窓口
消費者の方 お客様相談室 03-3621-6611
以 上