ソフトイーサ、TCP/IP上レイヤ2VPN用VoIP/QoS処理技術を開発
IP電話などの通信パケットの低遅延伝送のための高度な優先制御をTCP/IP上のレイヤ2型VPNソフトウェアとして初めて実現
世界初のTCP/IP上レイヤ2VPN用VoIP/QoS処理技術を開発
筑波大学発ベンチャー企業であるソフトイーサ株式会社(代表取締役会長 登 大遊/本店所在地 茨城県つくば市)は、VPNトンネル内においてIP電話などの通信パケット(例:VoIPパケット)を、ネットワークが混在している場合でも低遅延・低ジッタで伝送することができる、高度な優先制御技術(VoIP/QoS処理技術)を開発いたしました。
この技術によって、VPN経由でIP電話を用いる場合、ファイルダウンロードなどのトラフィックでネットワークが混在している場合でも、劇的なIP電話の音声品質の向上が実現できます。
今回ソフトイーサ株式会社が開発した技術につきましては、レイヤ2(Ethernet層)を仮想化しTCP/IPによってカプセル化して伝送するVPNソフトウェアにおいて、物理ネットワークが混雑している場合でもVoIPパケットなどの優先度が高くマークされたパケットを優先して伝送することができる技術としては、世界で初めて実用化を達成したと認識しております(*1)。
この技術を有効にしたVPNソフトウェアを用いると、通常の通信パケット(ファイルのダウンロードなど)が多量にVPN内を流れている場合でも、IP電話のためのVoIPパケットなどを高い優先度でVPN内を伝送させることができるようになり、VPNを経由してIP電話を利用する際の音声品質が極めて向上します。
この技術は、VPN通信のためのパケットが実際に流れる物理的なネットワーク上のルータなどのハードウェアがQoSに対応しているかどうかにかかわらず使用可能です。
ソフトイーサ株式会社は、本技術をVPNソフトウェア「PacketiXVPN2.0」に統合し、同ソフトウェアのマイナーアップデート版の提供を2006年8月に開始する予定です。なお、マイナーアップデート版は「PacketiX VPN 2.0 Option Pack」という名称となる予定です。
実際のIP電話による通信の結果の音声ファイル
本リリースの添付資料として、実際にブロードバンド回線を用いたインターネット接続上に構築した2拠点間でハードウェアIP電話を用いてVoIP通信を行い、NTTの177(天気予報)に電話をかけた際の音声データをMP3形式で録音したものを掲載します。本MP3ファイルをダウンロードいただくことにより、本技術を有効にした場合と無効にした場合における音質の違いを確認いただけます。
1.平常時(他にトラフィックがほとんど流れていない状態)のVoIP通信結果
VoIP_Normal.mp3 http://www.softether.com/jp/company/press/release/voip/VoIP_Normal.mp3
2.おおよそ50Mbpsのファイルダウンロードトラフィックを流した状態に同時にVoIP通信を行った結果(本技術によるVoIP/QoS対応機能を使用していない場合)
VoIP_No_QoS_With_Traffic.mp3 http://www.softether.com/jp/company/press/release/voip/VoIP_No_QoS_With_Traffic.mp3
3.おおよそ50Mbpsのファイルダウンロードトラフィックを流した状態に同時にVoIP通信を行った結果 (本技術による VoIP/QoS対応機能を使用した場合)
VoIP_QoS_With_Traffic.mp3 http://www.softether.com/jp/company/press/release/voip/VoIP_QoS_With_Traffic.mp3
実用的に会話ができない程度にIP電話の音声劣化が発生している「2番」の結果と比較して、VoIP/QoS対応機能を使用した場合の「3番」の結果は、平常時の「1番」と比較してほとんど音質が劣化していないことが確認できます。
実験方法:遠隔地の2拠点間をNTT東日本のサービス「Bフレッツ」およびそれに対応したISPを経由してPacketiX VPN2.0によりVPN接続し、片側にIP電話ゲートウェイ装置、もう片側にIP電話機を設置しました。この状態で、「2番」および「3番」の実験の際は、PCによりVPNを経由する形で32本のファイルダウンロードトラフィックを流し、VPNおよび物理回線に大きな負荷をかけました。
【技術情報】
VPN内における高い優先度を持つ通信パケットに対する高度な優先制御
VoIPパケットなどの低遅延・低ジッタが要求される通信パケットは、他の一般的な通信パケット(たとえばサイズの大きなファイルのダウンロードなど)と比較して、優先的に処理される必要があります。そのための優先制御および帯域確保の技術の総称としてQoS(Quality of Service)と呼ばれる技術があります。従来のIPルータやレイヤ3スイッチなどのネットワーク機器にはQoSに対応したものが多く含まれています。
従来、PacketiX VPN 2.0によって構成されるTCP/IP上のVPNトンネルの内部は、従来の場合はすべてのEthernetフレームが同等に処理(キューイング・伝送)されていました。
今回開発した技術は、PacketiX VPN 2.0によって構成されるレイヤ2VPNを用いた通信について、QoS処理を実現することができるものです。VPNトンネル内を流れる各パケットについて、その優先度情報に応じて優先制御や帯域確保などを自動的に行い、よってVoIPパケットなどの低遅延・低ジッタが要求される通信パケットを他のパケットと比較して優先的にVPN伝送することができます。
レイヤ2VPNで拠点間を接続しIP電話装置を用いた内線システムへの応用
PacketiX VPN 2.0などのレイヤ2VPNを用いると、複数の離れたLAN同士を接続し、1つのネットワークにすることができます(図1)。さらに、本VoIP/QoS対応機能を用いることにより、IP電話以外のトラフィックでネットワークが混雑している状態でも、常にIP電話のための通信(VoIPパケット)のための帯域は他のトラフィックよりも高い優先度で確保されるため、低コストで拠点間をまたがる形のIP電話内線システムを構築することができるようになります。この場合、IP電話機やVoIPゲートウェイがVPN上で使用することを想定した装置でなくても、送出するIPパケットの優先制御ヘッダが適切に設定されていれば、自動的にVPN上で優先制御が行われ、エンドユーザーによる特別な操作は一切不要です。
これにより高品質なIP電話システムを、安価なブロードバンドインターネット接続を用いて構築することができるようになり、通信コストやハードウェア費用および管理コストの削減につながります。
その他、既存のテレビ会議システムなどが送受信するIPパケットについても、優先制御ヘッダが適切に設定されていれば、本VoIP/QoS対応機能により自動的に優先的にVPN内を伝送されます。
図1 インターネット上でVPNを構築し拠点間でIP電話を使用する際のネットワーク構成例
※添付資料参照
なお、ソフトイーサ株式会社では、社内において日常業務のためのIP電話内線システムを、既製品のIP電話装置およびPacketiX VPN Server 2.0を用いて、つくば本社と東京事務所との間で構築し、数ヶ月間にわたって安定して運用しております(詳細はhttp://www.softether.com/jp/products/vpn/catalog/01.pdfに掲載されております)。
*1 2006年7月時点、弊社調べ。レイヤ2(Ethernet)を仮想化することによりTCP/IPパケットにカプセル化されたVPN通信を実現することができるVPNソフトウェア技術について。
