タカラバイオ、ガゴメコンブのフコイダンがより強い抗腫瘍活性を有するなどと発表
主要な褐藻類に含まれるフコイダンの抗腫瘍活性の比較について
タカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)のバイオ研究所は、マウスに経口投与することによって、ガゴメコンブのフコイダンが、オキナワモズクやワカメメカブなどのフコイダンと比較して、より強い抗腫瘍活性を有することを見出しました。この成果は9月28日より横浜で開催される第65回日本癌学会学術総会で発表します。
2005年の日本人の死因の第一位は、悪性新生物すなわち癌であり、社会の高齢化及び食生活の変化に伴い、益々増加しています。特に日本人における癌の特徴として、胃癌や大腸癌などの消化器系の癌が多く、食生活の改善が重要視されています。
フコイダンは褐藻類由来の食物繊維の一つですが、当社は、1984年頃よりフコイダンに関する研究を、化学構造と生理活性の両面からを行い、ガゴメコンブに最低3種類の異なったフコイダンが存在することを世界で初めて明らかにしました(1998年9月30日、2000年3月14日発表)。その結果、ガゴメコンブに含まれるフコイダンの化学構造は他の海藻由来のフコイダンとは異なり、生理活性においても大きな違いがあることが明らかになってきました。ちなみに、ガゴメコンブは、昔から関西地域などで愛用されているトロロコンブの原料でもあります。
当社が開発しているガゴメコンブ・フコイダン(平均分子量:約20万)を、あらかじめ、がん細胞(Sarcoma-180)を皮下移植しておいたマウスに、約4週間、経口投与すると(投与量:約1.5g/体重1kg/日)、非投与群のコントロールと比べ腫瘍の増殖が抑制され、同様の条件で経口投与されたオキナワモズク・フコイダン、ワカメメカブフコイダンと比べ、その活性は、それぞれ約2.7倍、1.4倍強いものであることが明らかになりました。これらの抗腫瘍活性に寄与しているのはガゴメコンブ・フコイダンの硫酸基含量の多さに基づくと考えられます。
また癌を移植されたマウスの脾臓細胞のナチュラルキラー(NK)活性は、ガゴメコンブ・フコイダンを与えた場合、与えなかったマウスに比べてNK活性が増強されていました。これらの結果はガゴメコンブ・フコイダンの経口投与により、マウスの免疫系が活性化された結果、腫瘍の増殖が抑制されたものと考えられます。
当社では、引き続きガゴメコンブ由来フコイダンの生理活性に関する研究を進めていくとともに、機能性食品素材としての開発を続けていきます。
当資料取り扱い上の注意点
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
【語句説明】
●フコイダン
コンブ、ワカメ、モズクなど、褐藻類に属する海藻のヌメリ成分の一つで、例えば、ガゴメコンブでは乾燥重量の約5%含まれています。分子量20万をこえる巨大な多糖で、硫酸化L-フコースを構成成分とする硫酸化多糖の総称です。
●フコイダンの構造
ガゴメコンブ・フコイダンとワカメやオキナワモズク・フコイダンのそれぞれの主要成分の構造で最も大きな違いは、硫酸化度にあります。
ガゴメコンブ・フコイダンは天然の多糖のなかで最も硫酸化度の高い多糖と考えられています。例えばガゴメコンブ・フコイダンでは10糖あたり硫酸が16残基含まれていますが、オキナワモズク由来のフコイダンは、4分の1の4残基しか硫酸化されていません。
●ナチュラルキラー(NK)活性
生体の免疫系は、種々の抗原に感作されて惹起される獲得免疫と、元から備わっている自然免疫があり、獲得免疫は、予め感作されてメモリーされていないと働かないのに対し、自然免疫は、ウイルスや病原菌が生体内に入った際に、即座に応答できる機構です。NK活性は、自然免疫で働くNK細胞が、癌細胞を傷害する活性を表す指標に用いられます。