清水建設、尿素の働きでひび割れを防ぐコンクリート技術「クラレス」を開発・実用化
尿素の働きで、ひび割れを防ぐ画期的なコンクリート技術の開発・実用化に成功
―コンクリートの乾燥収縮量を大幅に抑え、しかもローコストで施工が可能-
清水建設(株)〈社長 野村哲也〉は、岡山大学大学院自然科学研究科、阪田憲次教授の技術協力を得てこのほど、尿素の働きで、ひび割れを防ぐ画期的なコンクリート技術「クラレス」の開発・実用化に成功しました。本技術を使えば、ひび割れの原因であるコンクリートの乾燥収縮を大幅に抑えることができ、しかもローコストで施工が可能です。本技術の実用性に関しては、生コンプラントでの製造実験を始めとする各種の実証実験にて、既に確認済です。
今後当社は、橋梁や道路トンネルをはじめとする様々な土木構造物ヘの適用に向けて、本技術の採用を事業者らへ働きかけていく考えです。
コンクリートにひび割れが生ずる主な原因のひとつは、コンクリート内部の微量な水分が自然に蒸発して起こる「乾燥収縮」です。この乾燥収縮を抑えるには、「乾燥収縮低減剤」を添加する方法があります。しかし従来の乾燥収縮低減剤は、乾燥収縮量を25%程度しか低減できないほか、凍害を受けやすいなどの課題がありました。
今回開発・実用化したコンクリート技術「クラレス」は、粒子状の尿素を一定の方法でコンクリートに混入することで、コンクリートの強度や耐久性を低下させることなく、乾燥収縮を大幅に低減。コンクリートのひび割れをほぼ防げる点が最大の特徴です。尿素をコンクリートに混入して乾燥収縮を大幅に抑えるこの効果は、当社が独自の開発で発見したもの。本技術を使えば、乾燥収縮量を最大50%、大幅に低減させることが可能です。
コンクリートの乾燥収縮量を大幅に低減できる仕組みは、以下のとおりです。
粒状の尿素をコンクリートに混ぜると、尿素が液化。液化した分だけ、コンクリート内部に含まれる水分を減らせます。液化した尿素は、水に比べて蒸発しにくい性質を持っているため、コンクリートからの蒸発量が減少。その結果、コンクリートの乾燥収縮量が大幅に低減できます。
今回の開発・実用化においては、尿素の効果的な配合方法を確立したほかに、生コンプラントでの製造実験を始めとする各種の実証実験を実施。本技術で施工したコンクリートが、必要とされる強度・耐久性を確認しています。
≪ 本工法のメリットは、以下のとおりです ≫
1.ひび割れの防止効果
本技術を使えば、コンクリートの乾燥収縮を最大で50%低減。乾燥収縮によるひび割れの発生をほぼ防げます。
2.ローコスト・施工が容易
尿素という安価で扱いやすい素材を使うため、乾燥収縮低減剤を添加する方法に比べて、材料コストを最大40%低減できます。またコンクリートの打設作業としては、尿素をコンクリートに混入する単純作業のほかは、通常作業とほとんど変わりません。
3.必要強度・耐久性を確保
コンクリートの強度・耐久性は、通常のコンクリートと同等。乾燥収縮低減剤の課題であった耐凍害性も供えています。
以上
※「クラレス」の命名由来
ひびわれを意味する「クラック」と、ひび割れを大幅に抑える意の「レス」を組み合わせ、短称化したものです。
※開発の経緯
岡山大学大学院自然科学研究科、阪田憲次教授は以前から、尿素のコンクリートへの混入効果に着目し、水和熱の低減を始めとする様々な効果の研究に取り組まれてきました。
当社は、阪田教授の研究による成果をもとに、尿素を使ったコンクリート技術の確立に向けて、2003年に研究に着手。この研究の中で、尿素の混入が、乾燥収縮の低減に顕著な効果に着目し、阪田教授の協力を得ながら、乾燥収縮の低減効果に焦点を当てて研究を進めました。尿素の効果的な配合方法を確立したほか、生コンプラントでの製造実験を始めとする各種の実証実験を実施。本技術で施工したコンクリートが、必要とされる強度・耐久性を確認しました。
※尿素の物質的特性
尿素は常温で固体。水に非常に溶けやすく、その水溶液は、蒸発しづらい性質を持っています。化粧品や肥料に使われ、有用な物質です。