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2018'10.21.Sun
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2007'05.16.Wed

理化学研究所、古細菌型プロトンポンプのモーター支持部分の立体構造を解明

プロトンポンプのモーター支持機構を世界で初めて解明

- 生物モーターの支持部分は共通して2量体の基本構造を持つ -  
 
 
◇ポイント◇ 
・古細菌型プロトンポンプのモーター支持部分の立体構造を初めて決定 
・様々なプロトンポンプの比較で、モーター支持部分の基本構造を提唱 
・骨粗しょう症や癌転移などの治療薬開発につながる可能性 

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、細胞の生命維持活動を支える巨大タンパク質「プロトンポンプ」のモーター支持部分の構造を決定することに成功しました。播磨研究所放射光科学総合研究センター先端タンパク質結晶学研究グループ多量体タンパク質構造解析研究チームのネラトゥール・ロカナス研究員および国島直樹チームリーダーらによる研究成果で、文部科学省で推進している「タンパク3000プロジェクト」の一環として実施したものです。
 生物は様々な生体膜※1を介して、プロトン(水素イオン)を能動的に輸送し、生命活動の維持に必要なエネルギー生産などに利用しています。そのプロトン輸送を行う「プロトンポンプ」は巨大な膜タンパク質※1複合体で、主にモーター部分、膜に埋め込まれたプロトン透過部分、それらをつなぐモーター支持部分から構成されています。最近、ヒトの骨粗しょう症や癌転移に関与する液胞型プロトンポンプと類似していることから、古細菌に存在する古細菌型プロトンポンプが注目されています。しかし、古細菌型プロトンポンプは他と比べて大型で複雑な構造を持ち、詳細な働きを明らかにする上で不可欠な構造決定は、困難を極めていました。
 研究チームでは、古細菌型プロトンポンプの全立体構造を解明する手始めとして、そのモーター支持部分を切り出して結晶化し、大型放射光施設SPring-8※2の放射光を用いて構造決定することに成功しました。その構造情報をもとに、他の様々なプロトンポンプと比較することにで、プロトンポンプのモーター支持部分が共通して2量体の基本構造を持つことを世界で初めて提唱しました。
 古細菌型プロトンポンプ全体の詳細な立体構造が得られれば、骨粗しょう症や癌転移の治療薬開発に道が拓けるほか、バイオナノマシン※3の実現などへの応用が期待されます。
 本研究成果は、本研究成果は、分子生物学関係の専門誌『Journal of Molecular Biology』に近くオンライン掲載予定です 


1.背景 
 生物は様々な生体膜を介して、プロトン(水素イオン)を能動的に輸送してプロトン濃度勾配を形成することにより、生命活動の維持に必要なエネルギー生産や水素イオン濃度(pH)調節に利用しています。そのプロトン輸送を行う「プロトンポンプ」は、その名の通り、ポンプのようにプロトンを膜内外にくみ上げるはたらきを持った巨大な膜タンパク質複合体で、主にモーター部分、膜に埋め込まれたプロトン透過部分、およびそれらをつなぐモーター支持部分から構成されています。近年、ヒトの骨粗しょう症や癌転移に関与する液胞型プロトンポンプ※4と類似していることから、古細菌に存在する古細菌型プロトンポンプが注目され始めています。液胞型プロトンポンプは細胞外に局所的な酸性環境を形成し、その酸性により骨のカルシウムが溶解されることで骨粗しょう症が、癌細胞の運動を調節するプロテアーゼが活性化されることで癌転移がそれぞれ引き起こされると考えられています。従って、モデル生物として古細菌を用いて、古細菌型プロトンポンプがはたらく仕組みを解明することは、液胞型プロトンポンプの詳細を明らかにすることと直結していると言えます。しかし、古細菌型プロトンポンプは他のプロトンポンプに比べて大型で複雑な構造を持ち、詳細な働きを明らかにする上で不可欠な構造決定は、困難を極めていました。 

2.研究手法と成果 
 そこで研究チームでは、古細菌型プロトンポンプの全立体構造を解明する手始めとして、そのモーター支持部分を切り出して結晶化しました。モーター支持部分は9種類のサブユニットから構成されており、今回は、モーター支持部分の中核である分子量2万3千のEサブユニットに注目しました。結晶化はEサブユニットの、さらに中心部分であるC末端ドメイン※5と呼ばれる部分を核にして成長させるという手法を用いて、世界で初めて成功しました。そしてその結晶を、大型放射光施設SPring-8の理研構造ゲノムビームラインBL26B1を用いてX線回折データから結晶構造を決定したところ、Eサブユニットは2量体を形成するということが明らかになりました(図1)。さらに、別のサブユニットであるHサブユニットとの相互作用を、様々な物理化学的方法で解析したところ、HサブユニットがEサブユニット同様に2量体で存在すること、EサブユニットとHサブユニットが1:1の割合で多量体を形成することを突き止めました。これらの知見をもとに、古細菌型プロトンポンプのモーター支持部分についてのモデルを考え(図2)、他の様々なプロトンポンプに当てはめて検討したところ、プロトンポンプのモーター支持部分は共通して2量体の基本構造を持つとことが分かりました。さらに、アミノ酸配列の類似性を詳細に検討した結果、プロトンポンプのモーター支持構造は一般的にEサブユニットのN末端ドメイン※5と同じ構造を機能単位として組み合わせたものである、という構築原理が提唱されました。 

3.今後の期待 
 生体内でさまざまな働きをするタンパク質の中には、単一のポリペプチド鎖※5がいくつか規則正しく会合した多量体をつくって初めて機能を発揮するものが数多くあります。こうした多量体の形成が生物学的に極めて重要であるために、形成メカニズム解明の研究が盛んに行われています。研究チームでは、タンパク3000プロジェクトの一環として、好熱細菌※6の一種で原子生物学のモデル生物として注目されているThermus thermophilus HB8(サーマス サーモフィルス)や超好熱古細菌※6の一種Pyrococcus horikoshii OT3(パイロコッカス ホリコシイ)といった、好熱生物由来タンパク質の結晶構造を多数決定し、これらの立体構造のデータを活用して、タンパク質の多量体化とタンパク質機能との相関関係を体系的に解明することを目指した研究を展開しています。今回構造解析した古細菌型プロトンポンプも多量体タンパク質の一種であり、今後は膜に組み込まれた部分も含めた複合体全体の構造決定を目指す予定です。
 今回の研究成果から、骨粗しょう症や癌転移の治療薬開発への応用が期待されるだけでなく、プロトンポンプがはたらく仕組みを人工的に組み合わせたバイオナノマシン開発などへの応用が期待されます。  


< 補足説明 >
※1 生体膜・膜タンパク質 
 生体膜とは、細胞や器官の内外を隔てる膜であり、細胞膜や核膜など、種類に応じた特有の構造を持っている。多くの場合、膜の特有な構造は、その働きと関係している。膜タンパク質は、生体膜に埋め込まれたタンパク質のことで、生命現象を司る重要な働きを持つものが多い一方で、その構造を明らかにすることは非常に困難である。 
 
※2 大型放射光施設SPring-8 
 兵庫県にある大型共同利用施設。ほぼ光速で進む電子が、その進行方向を磁石などによって変えられると接線方向に電磁波が発生する。これが「放射光(シンクロトロン放射)」と呼ばれるものであり、電子のエネルギーが高く、進行方向の変化が大きいほど、X線などの短い波長の光を含むようになる。特に第三世代の大 型放射光施設と呼ばれるものには、世界にSPring-8、APS(アメリカ)、ESRF(フランス)の3つがある。SPring-8(電子の加速エネル ギー:80億電子ボルト)の場合、遠赤外から可視光線、真空紫外、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができ、国内外の研究者の共同 利用施設として、物質科学・地球科学・生命科学・環境科学・産業利用などの幅広い分野で利用されている。 
 
※3 バイオナノマシン 
 ナノマシンとは、ナノメートル(10-9m)単位の機械装置を言い、生体物質がナノマシンのように振る舞うものをバイオナノマシンと呼ぶ。例えば、べん毛を形作るタンパク質は、タンパク質の集合がモーターのように働くことから、バイオナノマシンと言える。 
 
※4 液胞型プロトンポンプ 
 液胞とは、植物や菌類の細胞中で、細胞液と呼ばれる液体を液胞膜で包んだ構造のこと。液胞型プロトンポンプは、液胞膜で見られるようなプロトンポンプのことであり、本文中の働き以外にも、果物の品質を左右するものとして知られている。 
 
※5 C末端ドメイン・N末端ドメイン・ポリペプチド鎖 
 アミノ酸は、必ずカルボキシル基とアミノ基の2本の手を持っており、アミノ酸同士のカルボキシル基とアミノ基がペプチド結合によって鎖状に繋がったものがポリペプチド鎖である。ポリペプチド鎖の端のカルボキシル基はC末端、逆のアミノ基はN末端と呼ばれる。ポリペプチド鎖が内外の要因で折り畳まれ、特有の構造を示したものがタンパク質である。
 ドメインとは、タンパク質が特有の構造を取った際、立体的に見てまとまった部分を言う。 
 
※6 好熱細菌・超好熱古細菌 
 温泉の源泉等、通常の生物では生体物質が熱で変性してしまうために生きられないような環境を好んで生息する細菌のこと。これらから抽出したタンパク質は熱に強く、実験を行う上で都合が良いため、タンパク質研究に良く用いられる。 

 
図1 古細菌タイププロトンポンプEサブユニットの結晶構造 
 古細菌タイププロトンポンプを構成する9種類のサブユニットのうち、モーター支持部分の中核であるEサブユニットの結晶構造を今回決定した。このリボン図はEサブユニットのC末端ドメインの立体構造である。結晶中では、単一ポリペプチド鎖の構成単位(左)が2個会合した2量体構造(右)が見られた。 
 (※ 関連資料を参照してください。)
 
図2 古細菌タイププロトンポンプにおけるEサブユニットの位置付け 
 今回構造決定に成功したEサブユニットのC末端ドメイン2量体を赤色で示した。配列相同性を検討した結果、プロトンポンプの支持構造部分を構成する他の部分(緑色)は基本的にEサブユニットのN末端ドメインと同じ構造をとることが示唆された。プロトンポンプのモーター支持構造が、EサブユニットのN末端ドメインと同じ構造を機能単位として組み合わせたものである、という構築原理を提唱した。なお、A・B・Iは各々他のサブユニットを示す。  
 (※ 関連資料を参照してください。)


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