カイノス、ノロウイルスの簡易迅速な遺伝子検出試薬を発売
ノロウイルスの簡易迅速な遺伝子検出試薬(G I・G II 同時検出)を発売
株式会社カイノス(東京都文京区,代表取締役社長中村利通)は,NASBA法(注1)と核酸クロマトグラフィー(注2)を組み合わせたノロウイルス検出試薬を開発し,研究用試薬として発売することになりましたのでお知らせ致します。
ノロウイルス(Norovirus)は乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層に感染性胃腸炎を起こすウイルスで、100個以下という少量で感染が起こり、人の腸管内でのみ増殖をします。ノロウイルスは、一年を通じて発生が見られ、冬季に集団発生する傾向があります。昨今では、医療機関、社会福祉施設、学校、保育所等での集団感染事例が社会問題として大きく取り上げられています。ノロウイルスは感染力が強いため,その拡散を抑えるためにも速やかなウイルス検出が重要です。
ノロウイルスは病原体の検出に必要な培養法は確立されていないため,ウイルスRNAを直接検出する方法が採用され,RT-PCR法(注3)が公定法として最も普及しています。しかし,操作性や迅速性の点で,より簡便で正確な検査技術の開発が望まれています。
当社は,国内での非独占的実施権を有する核酸増幅技術NASBA法と簡易・迅速な核酸検出法である核酸クロマトグラフィーを組み合わせた、新規なノロウイルス検出試薬の開発を進めてまいりました。その結果,専用機器を用いることなく1チューブで,2つの遺伝子タイプG I,G IIを増幅(約90分)し,次いで同一メンブレン上でG I,G IIを約20 分で識別するというシステムを確立し,既存のNested PCRと同等の高感度かつ広範囲のGenotypeを簡便,迅速に検出する研究用試薬として発売するに至りました。
当社では既に,水系感染症をもたらす原虫Cryptosporidium parvumのNASBA法を利用した検出試薬を開発・販売しています。今回販売するノロウイルス検出試薬についても,発売後も継続して利用者の方々からの評価やご指摘を反映させ,益々食品や環境因子による感染症検出試薬を充実してまいります。
[市場予測]
1.発売時期
発売:平成19年1月末予定
2.市場性
ノロウイルスによる急性胃腸炎は年々報告件数が増加しており,食中毒だけでも平成17年の食中毒総件数1,545件のうち274件(17.7%),患者数は総数27,019名のうち8.727名(32.3%)を占めています。公衆衛生上も注目されており,今後医療施設を始め検査実施機会が増加するものとして,最大20万検体/年を見込んでいます。
3.売上計画
研究用試薬として,3年後販売目標は100,000千円としています。
4.用語解説
注1:NASBA法
Nucleic Acid Sequence Based Amplification(NASBA)法は転写反応を利用した定温核酸増幅法。3種類の酵素と2種類のプライマーを用いて,41℃の一定温度下で,鋳型となるRNAから増幅産物として多量の相補的な1本鎖RNAが産生されます。
注2:核酸クロマトグラフィー
原理はサンドイッチハイブリダイゼーションに基づきます。固相メンブレン上にライン状に結合させたオリゴプローブで1本鎖の核酸(増幅産物)を捕捉し,着色ラテックス等の担体に標識したオリゴプローブが結合すると,特異的な増幅産物が存在する場合には着色ラインとして目視判定されます。
注3:RT-PCR法
Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction(逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応)法は,逆転写酵素による鋳型RNAのDNA合成と,温度サイクルを利用したDNA増幅技術であるPCR法とを組み合わせた遺伝子増幅法です。RT-PCR法含めPCR法は分子生物学研究や医療応用分野で重要な役割を担っています。