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2024'10.07.Mon
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2007'04.11.Wed

理化学研究所、がん予防成分をアブラナ科野菜に作らせる新規遺伝子を発見

がん予防成分をアブラナ科野菜に作らせる新規遺伝子を発見
-健康機能性の高い野菜の開発に新たな道-


◇ポイント◇ 
・植物のがん予防成分「スルフォラファン」を作るために必須の“PMG1”遺伝子 
・がん予防成分のもととなる「グルコシノレート」を選択的に生合成 
・PMG1の発現制御や遺伝子組換えでグルコシノレート生産のコントロールが可能に 


 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、ブロッコリーなどの野菜に含まれるがん予防成分グルコシノレート※1(カラシ油配糖体)の生合成を調節するキー遺伝子を世界で初めて発見しました。これは理研植物科学研究センター(篠崎一雄センター長)代謝システム解析ユニットの平井優美ユニットリーダー、メタボローム基盤研究グループの斉藤和季グループディレクターらと、かずさDNA研究所(大石道夫理事長)産業基盤開発研究部の柴田大輔部長らが行う新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託プロジェクトとの共同研究の成果です。
 グルコシノレートは主にブロッコリー、キャベツ、ダイコン、ワサビ、カラシナなどのアブラナ科植物に含まれる成分で、すりおろしたり噛んだりすることでこれら野菜の細胞内に含まれる分解酵素と混じりあい、イソチオシアネートと呼ぶ辛味成分に変化します。イソチオシアネートの1種であるスルフォラファンには、発がん物質を解毒する酵素の活性を高める作用がありますが、スルフォラファンのもととなるグルコシノレートの合成が、植物細胞内でどのように制御されているかということはほとんど知られていませんでした。
 今回の研究では、これらアブラナ科野菜の仲間であるシロイヌナズナという植物をモデル材料に用いて、DNAマイクロアレイ※2技術による全遺伝子の発現※3解析を行い、目標の遺伝子の探索を行いました。その結果、シロイヌナズナの持つ約27,000遺伝子の中から、グルコシノレート合成酵素を作る遺伝子と同じ発現パターンを持つPMG1という転写因子を作り出す遺伝子を見つけ出しました。PMG1遺伝子の働きを抑えたシロイヌナズナでは、グルコシノレート合成酵素遺伝子の発現を抑制して、グルコシノレートの量が種類により最大400分の1程度に減少しました。逆に、通常はグルコシノレートを蓄積しないシロイヌナズナ培養細胞で、PMG1遺伝子の働きを過剰にすると、グルコシノレート合成酵素遺伝子の発現が上昇し、グルコシノレートを植物体並みに蓄積するようになりました。このことから、PMG1はグルコシノレート合成を制御するキー遺伝子であることが明らかになりました。この知見をブロッコリーなどの野菜や培養細胞に応用することで、必要とされるグルコシノレート量を多くしたがん予防効果の高い「機能性野菜」を作ったり、植物細胞の培養タンクでグルコシノレートを作ることができると期待されます。
 本研究成果は、『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:PNAS)』のオンライン版(4月9日の週付け、日本時間4月10日以降)に掲載されます。 


1.背 景 

 ヒトの体内に摂取された発がん物質は、肝臓などの細胞に含まれる第二相※4酵素と呼ばれる解毒酵素により無毒化されます。アブラナ科野菜にはがん予防効果が報告されていますが、その大きな理由はアブラナ科野菜に含まれる辛味成分であるイソチオシアネートに第二相酵素の量を増やす作用があるためです。イソチオシアネートはアブラナ科の野菜に含まれているグルコシノレートが分解酵素「ミロシナーゼ」の働きで分解されて生じる成分です。しかし、このグルコシノレートは化合物の系統によってヒトに対する活性が全く違い、例えばメチオニンからできるグルコシノレートの1種グルコラファニンがスルフォラファンという抗がん性分解物を生じるのに対し、トリプトファンからできるグルコシノレートの1つグルコブラシシンは、がんを引き起こす作用をもつ分解産物を生じることがあると知られています(図1)。そのため、グルコシノレート量を化合物の系統ごとに制御する仕組みを解明することができると、健康機能成分だけを高めた野菜を作ることが可能になります。 


2.研究手法と成果 

 研究によく用いられるモデル生物では、ゲノム塩基配列※5の解読が完了して大多数の遺伝子の構造が明らかになってきています。シロイヌナズナでは約27,000個の遺伝子が見つかっていますが、働きや役割が実験的に証明されている遺伝子は、その1割程度にとどまっています。しかしアレイ技術の発展と普及により、全遺伝子がどの成長段階で、どこの器官(葉・根・花など)に、どのような環境条件で発現するのか調べることが可能となっています。研究グループが2004年に『米国科学アカデミー紀要』で発表したシロイヌナズナの網羅的な遺伝子解析と細胞内化合物解析の論文(Hirai et al.PNAS 101:10205-10210)では、このようなアレイ技術による網羅的遺伝子発現解析(トランスクリプトミクス)に加えて、質量分析装置などによる細胞内の数千種類に及ぶ化合物の網羅的解析(メタボロミクス)を先駆的に行い、それらの統合解析により得られた成果を報告しました。この論文は2005年度植物バイオテクノロジー分野で論文引用トップとなりました(『Nature Biotechnology』5月1日号)。そして続報で、トランスクリプトミクスとメタボロミクスの統合解析により、多数の遺伝子の役割を一度に高い精度で予測できることを示しました。
 これらの論文で、グルコシノレート生合成に働く酵素を作る遺伝子群は同じ発現パターンを持つ、つまり同じ時に同じ場所で働くということを突き止めていたため、本研究ではこれらの遺伝子と同じ発現パターンをもつ転写因子を探しました。研究グループが取得したマイクロアレイデータの他に、公共のデータベースに登録された多数のマイクロアレイデータを用いることで、メチオニン系グルコシノレートの酵素遺伝子と同じ発現パターンをもつ転写因子遺伝子PMG1を見つけることができました(図2)。
 これらの働きを抑制したり逆に強めたりしたシロイヌナズナを詳細に解析した結果、PMG1がメチオニン系グルコシノレートの酵素遺伝子だけを特異的に発現させる鍵制御因子であることを明らかにしました。PMG1の働きを抑制したシロイヌナズナでは、メチオニン系グルコシノレートのみが減少し、化合物の系統ごとに蓄積量を制御することが可能となりました。また、通常ではまったくグルコシノレートを生産しない培養細胞でPMG1を過剰発現することにより、植物体での生産量に匹敵するグルコシノレートの生産が可能になりました。  

3.今後の期待 

 PMG1の発現は、シロイヌナズナを栽培する時に与える栄養分の量により変化するという結果が得られています。栽培条件とPMG1発現量との関係を明らかにすることで、グルコシノレートの生産をコントロールできるようになります。またPMG1遺伝子を導入した培養細胞を用いてグルコシノレートのタンク生産も可能です。さらに、今回シロイヌナズナで解明した仕組みは、同じアブラナ科植物に広くあてはまる可能性が高く、グルコシノレートの種類を遺伝子でコントロール生産することは、スルフォラファン量の多い機能性野菜の開発につながります。 


<補足説明>

 ※添付資料を参照

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