タカラバイオ、2010年3月末までのグループ中期経営計画を策定
タカラバイオグループ中期経営計画を策定
タカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)では、例年のとおり、2007年4月から2010年3月末までのタカラバイオグループの中期経営計画を策定しました。
当社は、当社の基幹技術であるバイオテクノロジーを活用し、安定収益基盤である「遺伝子工学研究分野」、第2の収益基盤を目指す「医食品バイオ分野」、成長基盤である「遺伝子医療分野」の3つの事業分野において、事業を推進してまいりました。
本中期経営計画では、米国クロンテック社(2005年9月に買収)との研究開発・製造・販売等のあらゆる領域におけるシナジー効果の創出を中心として「遺伝子工学研究分野」の事業拡大を図り、販売提携などによる「医食品バイオ分野」の収益改善を進め、「遺伝子医療分野」における研究開発をさらに積極的に推進する計画です。
1.業績目標
(※ 関連資料を参照してください。)
2.事業分野別施策
「遺伝子工学研究」、「遺伝子医療」、「医食品バイオ」の3つの事業分野に照準を合わせ、安定的な収益基盤を確立していく一方で、事業構造の改革を進め、成長基盤の構築を目指すため、以下に掲げる事業を展開していきます。定量目標としては、2010年3月期のタカラバイオグループ連結売上高232億円の達成および研究開発費の増加を吸収して経常利益10億円への利益拡大を目指します。
(1)遺伝子工学研究分野
大学や企業などのバイオ研究者向けに研究用試薬・理化学機器の販売や研究受託サービスを行う当分野は、現在、当社の収益基盤であるコアビジネスとして位置づけていますが、さらなる強化を図るため、次のような事業展開を積極的に進めます。
・当社およびクロンテック社の研究開発力の相乗効果と効率化
・クロンテック社製品の宝生物工程(大連)有限公司への製造移管による製品原価のコストダウン
・当社およびクロンテック社の保有技術を活用した新技術・製品・サービスの開発
・リアルタイムPCRに関する新製品開発・売上拡大
(2)遺伝子医療分野
遺伝子医療・細胞医療の商業化を目指し、臨床開発を推し進めるため、次のような事業展開を積極的に進めます。
【遺伝子治療】
・国立がんセンターとの白血病を対象とした体外遺伝子治療の臨床開発の推進
・三重大学大学院医学系研究科との食道がんを対象としたT細胞受容体(TCR)遺伝子治療の臨床開発の推進
・RNA分解酵素MazFを利用したがんとエイズ遺伝子治療法の開発
・レトロネクチン法の全世界的ライセンスアウト展開
【細胞医療】
・中国医学科学院がん病院との腎がんを対象としたがん細胞免疫療法の臨床開発の推進
・三重大学大学院医学系研究科との難治性がんを対象とするレトロネクチン拡大培養法を用いたがん免疫再建療法の臨床開発の推進
・日本におけるがん細胞免疫療法の事業拡大
(3)医食品バイオ分野
機能性食品素材の開発を中心とした健康志向食品事業やキノコ事業に関する次のような事業展開を積極的に進めます。
・昆布フコイダン、寒天オリゴ糖、明日葉カルコン、きのこテルペンなどの機能性成分を応用した健康志向食品の、宝ヘルスケア株式会社(宝ホールディングス株式会社の100%子会社)との連携による売上拡大
・ブタ煮骨由来活性型オステオカルシンやヤムイモ由来抗疲労作用成分などを応用した新規健康志向食品の開発
・マツタケゲノムなどを活用した高付加価値キノコの新規栽培法の確立
・ブナシメジ、ハタケシメジ、ホンシメジ事業の拡大
当資料取り扱い上の注意点
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
【語句説明】
●リアルタイムPCR法
従来のPCR法は、サーマルサイクラーという機器で目的DNAを増幅した後、増幅産物を電気泳動で解析するという手順で行われています。リアルタイムPCR法では、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した機器を用いて、PCRでのDNA増幅産物の生成過程をリアルタイム(実時間)で検出し、解析できます。DNA増幅産物の生成の過程を連続して観察できるため、より正確な定量が可能となります。また電気泳動を行う必要がないため、解析時間の大幅な短縮が可能となります。
●T細胞
抗体産生の調節と標的細胞の障害の役割を担う重要な細胞で、Tリンパ球とも呼ばれます。免疫系の司令塔的な役割を担っており、抹消リンパ組織の胸腺依存領域に主に分布します。
●T細胞受容体(TCR)
T細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する受容体です。
●RNA分解酵素
ニュージャージー医科歯科大学 井上正順教授は、大腸菌由来のタンパク質であるMazFやPemKが、mRNAの特定の配列を特異的に認識して切断することを発見しました。当社はこれらの酵素をRNA分解酵素と呼んでいます。
RNA分解酵素を用いれば、生産したい目的のタンパク質のみを大量に生産することが可能です。また、RNA分解酵素MazF遺伝子を用いたエイズ遺伝子治療の開発を進めています。
●レトロネクチン(R)
レトロネクチン(R)は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。当社はレトロネクチン(R)に関する日本を含む世界各国における特許を保有しています。標的細胞とレトロウイルスの両者に対して特異的相互作用を持つことにより、シャーレに固定化されたレトロネクチン(R)上で、レトロウイルスと標的細胞が密接に接触し、遺伝子導入効率が上がると考えられています。このようなレトロネクチン法によって、従来技術では困難であった、造血幹細胞等の血球系細胞へのレトロウイルスベクターによる高効率遺伝子導入が可能となりました。レトロネクチン法は、いまやレトロウイルスによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。また、当社ではレトロネクチン(R)の新たな機能として、リンパ球の拡大培養効果も発見しています。
●活性型オステオカルシン
オステオカルシンの分子内に3ヶ所存在するグルタミン酸残基が、ビタミンK依存性カルボシキラーゼという酵素の働きによりγ-カルボキシグルタミン酸残基に変換されたものを活性型オステオカルシンといいます。活性型オステオカルシンのみがカルシウムと結合して骨形成に働くことができます。
(※ 1.業績目標は関連資料を参照してください。)