三菱東京UFJ銀行、金融庁から海外業務と投資信託販売業務などで行政処分受ける
金融庁による行政処分について
本日、弊行は、海外業務および投資信託販売業務等に関して、金融庁より銀行法第26条第1項に基づく行政処分(業務改善命令)を受けました。
これらの対象となった問題事案および重ねての行政処分を厳粛に受け止め、深く反省いたしますとともに、お客さまをはじめ関係者の皆さまに多大なご迷惑・ご心配をおかけしましたことにつき、心よりお詫び申し上げます。
今回の行政処分は、海外業務および国内業務のうち投資信託販売業務等における、法令等遵守態勢、内部管理態勢等の問題点に対し、改善を求められたものです。
弊行は、昨年来、海外業務および投資信託業務等に係る問題事案を踏まえた法令等遵守態勢等の強化策に取り組んでおり、また本年3月、法人拠点におけるコンプライアンス管理上問題ある先との不適切な取引を行った事案に関し、法令等遵守態勢、内部管理態勢等の抜本的な見直しと充実・強化を図るための業務改善計画を策定し、具体的な方策、態勢整備を実施しているところであります。
今回の行政処分では、そうした法令等遵守態勢等の整備・強化策を着実に遂行するとともに、さらに海外業務および投資信託販売業務等の健全かつ適切な業務運営の確保およびお客さま本位の営業態勢等の確立を目指し、内外に幅広く業務を展開する銀行にふさわしい法令等遵守態勢、内部管理態勢等の総合的な強化を求められております。これを受け、さらなる態勢面の見直しを行い、より実効性を高めた具体的方策を盛り込んだ業務改善計画を策定してまいります。
またその後においても、弊行の海外業務全般、国内業務全般に係る経営管理態勢、法令等遵守態勢および内部管理態勢等について、持株会社とも連携し点検を行い、一層の充実・強化を図るべく、不断の改善に努めてまいります。
1.海外業務に関する行政処分について
(1)命令の内容
海外業務における健全かつ適切な業務運営を確保するため、以下の観点から経営管理態勢および法令等遵守態勢等を整備・強化する旨の命令を受けております。
1)海外業務における法令等遵守に取り組むための経営姿勢の明確化
2)役職員(現地採用職員を含む。以下同じ。)の法令等遵守意識の醸成
3)銀行本部による海外各拠点の業務運営における法令等遵守の統括的かつ能動的な管理・監督機能の整備・強化(重大な問題等が発生した場合の銀行本部による発生事象等の分析・評価および関係部署との適時・的確な情報の伝達・共有の徹底を含む。)
4)海外各拠点における現地規制等を的確に反映した拠点内規則・マニュアルの整備、ならびに、役職員による遵守の徹底(現地規制の改廃や現地規制当局が求める業務運営水準等に係る情報を適時・的確に把握する態勢の強化を含む。)
5)各業務に対し適格な人員の配置および役職員に対する実効性のある教育・指導の徹底
6)海外業務に係る実効性のある内部監査機能の構築・強化
7)三菱UFJフィナンシャル・グループによる海外業務に係る統括的な管理機能の強化
8)問題等の原因となった役職員の責任の所在の明確化
(2)問題事案の概要等
1)海外の複数の拠点において、現地監督当局により現地法令違反や内部管理態勢上の不備に係る指摘を受けたこと。
2)特に、米国においては、ニューヨーク支店および米国信託子会社は、マネーロンダリング防止態勢上の重大な欠陥を米国監督当局により指摘され、平成18年12月、業務改善命令を受けたこと。持株会社および弊行においては、米国銀行子会社が平成16年にマネーロンダリング防止態勢の不備を理由に業務改善命令を受けており、また、米国監督当局によるマネーロンダリングに関する規制厳格化の動きがあったにもかかわらず、合併準備作業を優先し、十分な対応を行わなかったこと。さらに監査部門よりマネーロンダリング防止手続きの改善を優先的に行うべきとの指摘が内部的にも行われたにもかかわらず、十分な対応を行わなかったこと。
3)複数の海外支店において、派遣行員や現地採用管理職職員により、行内規程で禁止されている取引や拠点内手続違反等の与信取引が実行されたこと。当該取引の承認申請にあたっては、承認申請書類に事実と異なる取引内容が記載されたり、偽造した書類が用いられていたこと。また、取引承認部署においても、取引の内容を十分に確認しないまま取引を承認していたこと。
4)上海支店において、現地採用管理職職員が、職務上の権限を濫用の上、平成17年10月に賄賂を収受し、平成18年6月に現地公安当局に逮捕されたこと。贈収賄等の不正行為を未然に防止するための施策が十分に行われていなかったこと。
5)その他、複数の海外拠点において、内部規程の未整備または職員による規程の遵守が徹底されないなど内部管理態勢が脆弱であったことから、現地採用職員による横領や銀行資金の不正引出等の不祥事件が多数発生していること。
(3)弊行の認識等
海外拠点における現地法制の理解、現地監督当局への事前確認、現地法令を遵守するための拠点内手続き等の整備が不十分であるとともに、本店においても各拠点内の関連規程等の整備状況の把握や必要な指導が行われなかったなど、法令等遵守態勢等に問題がありました。
また、海外への派遣行員や現地採用職員等の不祥事件が多数発生するなど、各拠点内手続きが遵守されず内部管理態勢も問題がありました。
そうした問題は、海外各国の法令等を遵守した業務運営を行うためのリスク分析・評価、その評価に基づく必要な態勢の見直し・強化を統括的かつ適時・的確に行っていなかったこと、その結果、必要な態勢の見直し・強化に向けた経営資源が十分に割かれなかったことにより、経営管理態勢、法令等遵守態勢および内部管理態勢の脆弱化を招いたことが要因と認識しております。
(4)業務改善計画の策定
再発防止のために、本店、海外各拠点および持株会社を含め、海外業務における法令等遵守態勢等のさらなる整備を行い、業務改善のためのより実効性を高めた具体的方策を策定してまいります。特に、海外各拠点において現地規制等を的確に反映した拠点内規則、マニュアルを整備し、役職員において遵守の徹底を行うとともに、本部による統括的かつ能動的な管理・監督機能を整備・強化してまいります。
(5)責任の所在の明確化
責任の所在につきましては、行内の所定の手続きを経て、その明確化を図ってまいります。
2.投資信託販売業務等に関する行政処分について
(1)命令の内容
投資信託等の有価証券取引等における、お客さま保護の観点を踏まえた健全かつ適切な業務運営を確保するため、以下の観点から法令等遵守態勢および内部管理態勢等を整備・強化する旨の命令を受けております。
1)お客さま本位の営業態勢の確立および法令等遵守態勢確立に向けた経営姿勢の明確化
2)お客さま本位の営業態勢、法令諸規則に則った適正な業務運営の確保を踏まえた業務推進態勢の構築
3)営業店におけるお客さまに対する説明態勢の整備および遵守の徹底
4)営業店および本部関係部署における相互牽制機能強化による法令等遵守態勢の確立
5)お客さま本位の営業態勢等確保の観点を踏まえた各種規程、マニュアルの適切性の検証
6)問題等の原因となった役職員の責任の所在の明確化
(2)問題事案の概要等
1)投資信託販売業務に関し、発注失念や誤発注等、弊行の過失に基づく事務処理ミスで、お客さまに損失が生じる状態となった事例において
・お客さまに対し、「訂正処理を行い原状回復し損失補填することが可能である」旨の説明を行わないまま謝罪を繰り返し、取引の追認を求め、追認をもって解決済みとしている事例
・原状回復、損失補填に係る説明不十分のまま追認を得ることでもって解決とした後、お客さまからの苦情申出により結果的に原状回復、損失補填を行っている事例等の不適切かつ公平性に欠ける対応が、特に旧東京三菱銀行の営業店において、新銀行の発足前後を通じ多数認められたこと。
2)このような事案の発生の背景として、以下の点が挙げられること。
・統合の際に、過去の検査指摘を踏まえた特段の検討を行うことなく実務レベルの判断で旧東京三菱銀行の規程を採用したこと。
・旧東京三菱銀行および新銀行を通じ、営業店・本部関連部署において、お客さまに謝罪し追認すれば事案は解決するという認識があり、また行内事務表彰において、証券業務の事務処理ミスは、損失額および件数に応じた減点対象であったことから、一部の営業店は、損失による減点とならないよう行内表彰への影響を回避すべく、謝罪と追認により対応していたこと。
・新銀行において、本部の事務関係部署は営業店によってお客さま対応に差異が生じている実態を看過し、法令等遵守関係部署はモニタリング態勢が不十分、監査部門では事務処理ミスに係る営業店のお客さま対応の適切性は監査対象としていなかったこと。
・経営陣においては、不適切な事例が散見される現場実態に加え、本部態勢も不十分であることを認識していなかったこと。また、統合時の規程検討も、実務レベルでの議論不足を看過していたこと。
(3)弊行の認識等
弊行の投資信託販売業務においては、お客さまに対する誠実公正義務の趣旨に反する取扱いを行うなど、内部管理態勢等における重大な問題がありました。また、旧UFJ銀行において過去に発生した同様な事案に対する再発防止策を反映した具体的な手続が、新銀行に引き継がれなかったこと、上記のように一部の営業店では適切なお客さま対応より業績が優先されるなど、お客さま保護の精神の徹底が不十分であったこと、本部関連部署の態勢、対応が不十分であり、経営陣の関与、認識も不足していたことなど、総じて、経営管理態勢、内部管理態勢および法令等遵守態勢に重大な問題があったと認識しております。
なお、コンプライアンス態勢強化の一環として、過去3年間の投資信託販売業務に係る事務処理ミス事例について点検を行った結果、99件のお取引について、原状回復をしていないなどの問題があったことが判明しました(お客さまの損失額約242万円)。問題があった個々のお取引につきましては、本年3月末までに、個別に対象のお客さまにご連絡し、原状回復をするなど、適切に対応済みです。
(4)業務改善計画の策定
再発防止のためには、経営陣、本部関係部署および営業現場がお客さま保護の重要性を改めて十分認識することが重要であり、その上で、投資信託販売業務のみならず、お客さま本位の営業態勢等を確保していくためのより実効性を高めた具体的方策を策定してまいります。
特に、お客さま本位の営業態勢の確立等の観点から、業務推進態勢の構築、お客さま説明態勢整備および遵守の徹底、各種マニュアル等の適切性の検証を行うともに、営業店および本部関係部署における相互牽制機能を強化し法令等遵守態勢等を整備いたします。
(5)責任の所在の明確化
責任の所在につきましては、行内の所定の手続きを経て、その明確化を図ってまいります。
以 上