バイエル薬品、血液凝固第Xa因子阻害薬「リバロキサバン」の第II相臨床試験結果を発表
2006年国際心臓学会議
経口直接作用型血液凝固第Xa因子阻害薬リバロキサバン
長期服用に適した抗凝固薬として有望
新たな第II相臨床試験結果を発表
●用量設定を目的としたこの種の試験では過去最大規模の第II相臨床試験結果を発表
●服用モニタリングが不要な経口薬の登場で血栓治療の新たな可能性
2006年9月5日、独レバクーゼン/スペイン・バルセロナ―新規経口直接作用型血液凝固第Xa因子阻害薬リバロキサバン(BAY59-7939)の大規模な第II相臨床試験結果が、本日、バルセロナ(スペイン)で開催中の2006年国際心臓学会議において発表されました*。この試験は深部静脈血栓症(DVT)とその再発予防を対象としています。これらの試験結果は、リバロキサバンが、入院時の急性期治療、在宅での長期治療の双方において、臨床的に有望であることを示しています。このデータに基づいて、第III相臨床試験が開始されました。
アムステルダム(オランダ)にあるアカデミック・メディカルセンターのハリー・ビューラー博士は次のように述べています。「ワルファリンに代わる経口抗凝固薬がない現在、これらの試験データは、リバロキサバンの1日1回経口投与が、心房細動患者の脳梗塞予防および静脈血栓塞栓症(VTE)の治療とその再発予防における治療概念を変えるだろうという私たちの確信の根拠となっています」。同博士は、EINSTEIN-DVT試験および静脈血栓塞栓症の治療とその再発予防を対象とするリバロキサバンの第III相臨床試験の治験責任医師を務めています。
用量設定を目的としたこの第II相臨床試験プログラムは、ODIXa-DVTとEINSTEIN-DVTの2つの試験で構成されています。これらの試験では計1,156名の急性症候性深部静脈血栓症の患者さんが参加し、1日当りの用量について検討しました。EINSTEIN-DVT試験では1日1回、ODIXa-DVT試験では1日1回または2回、リバロキサバンを20~60mgの用量幅で経口投与しました。
この治療計画では、ヘパリン(エノキサパリンなど)の注射投与で治療した後、経口ビタミンK拮抗薬(ワルファリンなど)に切り換えて最長3ヵ月間投与する標準的治療法との比較を行います。
ODIXa-DVT試験では、リバロキサバンは21日後には血栓(凝血塊)の大きさを縮小させ、3ヵ月後には静脈血栓塞栓症(VTE)再発率を減少させました(血栓退縮は、有効性の主要評価項目です)。また、EINSTEIN-DVT試験でも同様の結果でした。
全般的に、深部静脈血栓症の再発率はすべてのグループで低く、また、リバロキサバンのいずれの投与量においても低いという結果が得られました。また、リバロキサバンのいずれの投与量においても標準的な治療法と同様の効果が得られました。ODIXa-DVTとEINSTEIN-DVTの2つの試験の主な結果は次の通りです。
ODIXa-DVT試験:
●深部静脈血栓症の再発率は、リバロキサバンが0.9~1.0%であったのに対し、比較対照グループで0.9%でした。
●重要な出血性事象の発現率は、リバロキサバンが1.7~3.3%(最大用量である60mg投与時)であったのに対し、比較対照グループで0.0%でした。
EINSTEIN-DVT試験:
●深部静脈血栓症の再発率は、リバロキサバンが0.8~1.7%であったのに対し、比較対照グループで6.9%でした。
●重要な出血性事象の発現率は、リバロキサバンが0.0~1.5%であったのに対し、比較対照グループで1.5%でした。
●観察された症候性深部静脈血栓症のイベント(VTE関連の死亡、肺塞栓、およびDVTの再発)発生率は、リバロキサバンのいずれの投与量においても、比較対照グループに比較して低く保たれました(1.7~3.6%対6.9%)。
●重要な出血性事象の発現率は、リバロキサバンが2.2~6.0%であったのに対し、比較対照グループで8.8%と、臨床的な有意差は見られませんでした。
この試験プログラム全般において出血頻度は低く、リバロキサバンと標準的な治療法との間に臨床的な差は見られませんでした。また、リバロキサバンのいずれの投与量においても、効果不十分、もしくは安全性の問題から試験が中止されるようなことはありませんでした。これら深部静脈血栓症を対象とした3ヶ月の試験期間中、リバロキサバンの肝機能への悪影響は観察されませんでした。
米国ノースカロライナ州ダーハムにあるデューク大学メディカルセンターのデューク・クリニカルリサーチ研究所所長で、心房細動患者の脳梗塞予防を対象とする第III相臨床試験の治験責任医師を務めるロバート・カリフ博士は次のように述べています。「このプログラムの規模とデザインを見て、非常に心強く思っています。エジンバラ大学心血管科学センターのキース・フォックス博士やエジンバラ大学、バイエル社、オーソ・マクニール社**とともにこの期待の新薬の臨床的有効性を評価する試験に取り組むのを楽しみにしています。この薬の新しい作用メカニズムが、ワルファリンに比べて安全性が高く、抗凝固作用の発現の程度の予測しやすい薬剤につながることを私たちは期待しています。試験プログラムも、この新しい治療アプローチと旧来の標準的治療とを明確に比較できるようにデザインされています」。
リバロキサバンは既に、待機的な整形外科大手術後の静脈血栓塞栓症(VTE)の一次予防を対象とした第III相臨床試験の段階にあります。RECORD試験(REgulation of Coagulation in major Orthopaedic surgery reducing the Risk of DVT and PE)は2005年12月に開始され、被験者登録は順調に進んでいます。この適応症での最初の販売承認申請は2007年後半に予定されています。
◆リバロキサバン(BAY 59-7939)について
リバロキサバンは、血栓塞栓による致死的な血管イベントの発症リスクを抑制する効果が期待できる新規経口直接作用型第Xa因子阻害薬です。第Xa因子はタンパク分解酵素であり、凝固系(血栓形成に至る過程)において中心的な役割を担っています。現在公表されている結果は、リバロキサバンの予測可能な抗凝固作用を幅広いパラメーターに渡って示しており、このことはリバロキサバンが凝固作用のモニタリングを必要としないことを強く示唆しています。さらに、リバロキサバンは、通常、抗凝固薬とよく併用される多様な薬剤と、相互作用を示さないことも報告されています。
◆バイエルヘルスケア社について
ドイツ・バイエル社の事業グループであるバイエルヘルスケア社は、ドイツ・レバクーゼンを本拠地とし、ヘルスケア、医療製品業界における世界有数の革新的企業の一つです。2005年の売上は約94億ユーロ(約1兆3,300億円)に達しました。バイエルヘルスケア社は、世界中で3万3,800人(2005年時点)の従業員を擁し、動物用薬品、コンシューマーケア、ダイアベティスケア、診断薬、医療用医薬品の各分野で活動を行っています。2006年1月1日、これまでのバイオロジカルプロダクト事業を統合した医療用医薬品事業は、血栓止血製剤領域、オンコロジー、プライマリーケアの3事業ユニットから構成されています。バイエルヘルスケア社は世界中の人々と動物の健康を向上させる製品の開発と製造を目指しています。私達の製品は、疾病の診断、予防そして治療を通じて、人々の健康とQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に貢献します。
*Agnelli et al.Eur Heart J 2006;27(suppl):abstract 87447,Buller.Eur Heart J 2006;27(suppl):abstract 89702
**オーソ・マクニール社は、米国におけるリバロキサバンの循環器専門医・プライマリーケア領域・病院のスペシャリティ市場での独占販売権を有します。バイエルヘルスケア社は、米国におけるリバロキサバンの病院及びスペシャリティ市場へ共同プロモーションを行う権利を有します。また、米国を除く地域での独占販売権は、引き続きバイエルヘルスケア社が所有します。
◆将来に関するステートメント
本ニュースリリースは、バイエル・グループの経営幹部による現時点での想定と将来予測に基づき将来に関するステートメントを包含していますが、未知・既知の種々のリスク、不確実要因、ならびにその他の要因により、当社の実際の将来業績、財務状況、推移や業績と、本ニュースリリースの予測との間に乖離が生じる可能性があります。
フランクフルト証券取引所、および米国証券取引委員会(Form20-Fを含む)に提出した当社の公開報告書に説明されているものもこれらの要因に含まれます。当社は将来の出来事あるいは推移に順じてこの将来に関するステートメントを更新したり、あるいは適合させたりする責任を一切負いません。
本資料は、9月5日にバイエルヘルスケア社が発表したリリースの抄訳です。