NEC、次世代のスパコン内のチップ間光配線に不可欠な超高密度実装技術を開発
次世代のスパコン内のチップ間光配線に不可欠な超高密度実装技術を開発
~次世代のスパコン実現に向けた要素技術開発で更に新しい成果~
NECはこのたび、次世代のスーパーコンピュータを構成するLSIチップ間の信号のやりとりを光で高速に実現する光インターコネクションの実現に向けて、チップ間で約1,000信号の光伝送を可能にする、光モジュール(注1)の超高密度実装技術の開発に成功しました。
NECでは、平成17年度より、文部科学省の「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発」において「超高速コンピュータ用光インターコネクションの研究開発」という研究課題を実施しています。このたびの開発は、その一環として進めてきた高密度実装に関する研究成果で、今年3月に発表した「世界最速となる25Gbps動作の面発光レーザー(注2)の開発」(http://www.nec.co.jp/press/ja/0603/0702.html)に続く成果です。
このたび開発した技術は、世界で初めてガラスセラミックの光モジュール基板の側面に微小電極を125μm間隔で形成し、光素子をその電極に直接実装する技術です。2010年頃に期待される次世代のスーパーコンピュータ実現のためには、超高速化が可能なLSIチップ間光インターコネクションが必要と予測されていますが、そのためには、20Gbps超の速度で動作するチップの性能に加え、1つのチップに対して約1,000信号の光/電気変換を可能にする光モジュールが不可欠です。このたびの技術により、わずか4.5mm角の光モジュールの基板上で12信号分の光伝送に必要な素子を搭載することができます。この光モジュールを別紙2で示すようにプリント基板上のチップの周囲に搭載することで、わずか10cm角程度のプリント基板上で約1,000信号の光/電気変換が実現できるようになります。
このたび開発した技術の特長は次の通りです。
(1)ガラスセラミックで作製された光モジュールの基板の側面に、125μm間隔で微小電極を形成し、この電極に面型受発光素子(注3)を直接実装することで、面型受発光素子を基板の表面に実装する従来方式に比べて実装面積を1/3程度に削減することが可能。更に、約0.5mmの短い電気配線で受発光素子とそれを動かす光送受信用ICを結ぶこともできるため、光素子の高速動作やノイズ低減に有利な構造を実現。
(2)面型受発光素子を基板の側面に実装するため、基板に対して横方向に光を入出力させることが可能となり、ミラーを用いずに、光素子とポリマー光導波路(注4)を近接させて光を高効率で結合させる構造により、光モジュールの幅の狭化を実現。
近年、スーパーコンピュータを構成するLSIチップの処理速度が高速化される一方、チップ間のデータ伝送速度が追いつかず、性能向上のボトルネックになりつつあります。しかし、電気伝送の高速化には限界があるため、電気よりも高速化が可能な光信号をチップ間の信号伝送に適用することが必要になります。その際、チップで入出力される電気信号と光信号を変換する光モジュールが必要です。このたび開発した超高密度実装技術は、次世代のスーパーコンピュータに必要となる、チップ当り約1,000信号の光/電気変換を1枚のプリント基板上で行うことが可能な超小型の光モジュールを実現するために不可欠な技術です。
このたび開発した実装技術を用いて作製した、送信、および受信用の光モジュール4個(48信号)をテスト用のLSIチップと同一のプリント基板上に搭載し、テスト用チップ間の光伝送実験を行いました。光モジュールとテスト用チップは数センチの電気配線で接続し、送受の光モジュール間を数メーターの光配線で接続しました。そして、テスト用チップから出力する10Gbpsの電気信号で今回試作した超高密度の光モジュールを駆動し、チップ間を光で伝送させることに成功しました。
スーパーコンピュータに用いられるLSIチップの動作速度は、2010年頃に20Gbps/信号を超えることが予想されています。NECでは、20Gbps/信号以上で動作する光素子と、チップと光モジュール間の高速高密度電気配線技術の研究を文部科学省の研究課題として推進しています。今後、これらの研究成果を統合し、光モジュールのさらなる小型高速化を可能とする実装技術の開発を行います。そして、20Gbps超/信号で1,000信号、合計20Tbps程度のチップ間光インターコネクション技術を開発し、2010年頃のスーパーコンピュータへの適用を目指して、今後とも積極的な研究開発活動を進めていきます。
参考資料
http://www.nec.co.jp/press/ja/0609/1501-01.html
以上
(注1)
電気信号と光信号を相互に変換する機能を持つ部品のこと。
(注2)
基板から垂直に光を放出するレーザーのことで、VCSEL(Vertical Cavity surface Emitting Laser)、あるいは面型発光素子とも呼ばれる。光が基板の水平方向に出る通常の半導体レーザー(端面型)に比べて、小型化、低消費電力化、高速化、さらには量産と高集積が可能な光源として期待されている。
(注3)
基板から垂直に光を放出するレーザーが面型発光素子、基板に対し垂直方向に光を受光する光ダイオードが面型受光素子。今回開発した光モジュールには、12個の発光部、受光部が250μmの間隔で1列に並んだものを用いている。
(注4)
平板上の光配線であり、光素子と同等の250μmの間隔で光配線が並んでいるものを用いている。
本件に関するお客様からのお問い合わせ先NEC 研究企画部 企画戦略グループ
http://www.sw.nec.co.jp/contact/