大和証券グループなど、「IR活動の効果と企業価値」の共同研究概要を発表
慶應義塾大学大学院経営管理研究科と当社グループの共同研究について
~「IR活動の効果と企業価値」~
この度、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應義塾大学ビジネス・スクール)と大和証券グループは、「IR活動の効果と企業価値」に関する共同研究を完了いたしました。経験的にはその関係が予想されるものの、これ以外の要因が複雑に関与するため、IR活動と企業価値との因果関係についての実証研究はほとんど発表されておりませんでした。今回の共同研究の目的は、この相関関係を明らかにすることであり、本研究結果により、上場会社のIR活動が積極化され、証券市場の透明性がより高まることを期待しております。共同研究の概要は以下の通りです。
■共同研究の概要
IR:インベスター・リレーションズ(Investor Relations)とは、理論的には、企業価値を公正、適切に評価してもらうための活動です。IRにより株価が変動する論理については、現代ファイナンスと行動ファイナンスの2つの立場からの考え方があります。現代ファイナンスが情報の非対称性を解消するために主にアナリストに対する説明を行うのに対し、行動ファイナンスでは、投資家への情報伝達を担うアナリストだけでなく、様々な層の投資家に直接働きかけることになります。
当研究においては、行動ファイナンスの立場をとり、企業が個人投資家層に対して働きかけるIR活動により株価が変化するかどうかを検証しました。
(1)具体的方法
個人投資家が企業への投資を考えたときに直接企業にアクセスするルートとして最も幅広く使われている企業のIRサイトと株価の関係について分析を行いました。すなわち、個人投資家にとって、企業のIRサイトの有用性や利便性が株価にプラスの効果をもたらしているか否かを検証しました。データは、各企業のIRサイトに関して、大和インベスター・リレーションズが網羅的に分析し、採点したものを用いました。そして、2003年から2005年にかけて各企業の得点の変化が、株価の変化に結びついているか否かを分析しました。
(2)研究結果
伝統的な大企業においては、IRサイトがより良いものになると、2年から3年間という期間で見た場合には、株価に対してはプラスの影響があり、これは統計的にも有意であることが見出されました。一方、新興企業においてはIRサイトと株価の間には正の相関関係が見られませんでした。すなわち、インターネットサイトが個人投資家にとって望ましいものに改善された伝統的な大企業に関しては、長期的に株価が上昇する可能性があることが示されました。
これまで、IR活動の重要性、とりわけ個人投資家に対する重要性が叫ばれてきたものの、その株価への効果がはっきりとは見えなかったために、IR活動の成果について懐疑的な意見も見られましたが、本研究により、長期的には効果が有る可能性があることが示されました。
今後、大和証券グループでは、上場会社の積極的なIR活動を通じた証券市場の透明性向上にこれまで以上に貢献してまいります。
以 上