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2025'03.05.Wed
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2007'03.12.Mon

日立、バラスト水排出による周辺海域の生態系破壊を抑制する浄化システムを開発

バラスト水排出による周辺海域の生態系破壊を抑制する浄化システムを開発
東京湾でバラスト水浄化装置の実証実験を開始


 株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫)と株式会社日立プラントテクノロジー (執行役社長:住川 雅晴)は、このたび、荷物を搭載していない船舶のバランスを保つため、重しとして搭載する海水(バラスト水)を、周辺海域の生態系への影響や汚染等が無いように浄化して排出する「バラスト水浄化装置システム」を開発し、その実証実験を、2006年9月25日から12月末まで、東京湾で実施します。本技術は、バラスト水の排出による生態系への影響等、環境問題の解決に道を拓く技術です。

 バラスト水は、海運業において、港で荷物を降ろしたタンカーなどの貨物船舶が、次の荷物を積載する港に移動するまでの間、船舶のバランスを保つための重しとして用いる海水のことで、採水海域のプランクトンや細菌、泥、砂などが含まれています。バラスト水の多くは、採水した国の港とは異なる国の港で排出されるため、排出される海水と一緒に生態系の異なる外来生物などが持ち込まれることとなり、その他の生態系を破壊するものとして、環境問題となっています。
 バラスト水は、例えば、17万トンクラスの貨物船の場合、空船時には約5万トンの海水を搭載されます。IMO(国際海事機関)(*1)の調査によると、年間120億トンのバラスト水が世界中を移動していると推定されており、日本には約1,700万トンのバラスト水が海外から持ち込まれ、3億トンのバラスト水を海外に排出しているとされています。

 こうした問題に対処するため、2004年2月には、IMOにおいて「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約」(バラスト水管理条約)が採択されました。同条約では、国際航海に従事する船舶は、船舶の建造日およびバラストタンクの容量に応じ、段階的に「バラスト水排出基準」(*2)を遵守することが決められました。2017年までには、全ての船舶で「バラスト水排出基準」を遵守するため、バラスト水に含まれているプランクトンやバクテリアなどを除去して、周辺海域の生態系への影響が無いように浄化する「バラスト水処理システム」を搭載することが必要になります。

 今回開発したシステムは、多くの浄水場でプランクトンや細菌を除去するために用いられている凝集技術を核に、湖沼や河川の富栄養化によって発生したアオコなどの植物プランクトンの浄化装置として2001年に製品化した超電導磁石を用いた浄化装置の磁気分離技術を組み合わせることで実現したものです。具体的には、取水時に、海水に含まれるプランクトン、細菌、海底の泥、砂などを、凝集剤と磁性粉により1ミリ程度の磁性を有した小さな固まり(フロック)にし、そのフロックを、磁石を用いて高速で海水から分離、さらに自動逆洗(*3)装置付のフィルターを通してろ過を行い、排出しても二次汚染の心配のない水にします。凝集法を採用することで、塩素や紫外線を用いた殺菌方式とは異なり、残留塩素やオゾンによる2次汚染の心配がなく、微小の細菌をフロック化することで、網目の大きいフィルターの使用を可能にし、通水速度の高速化による装置の小型化も実現しました。
 なお、本実証実験における船舶への搭載等については、株式会社三菱重工業長崎造船所で建造される雄洋海運株式会社向けの新造LPG船に試験機を搭載することで進めています。

 開発したシステムは、凝集剤により海水に含まれる生物をフロックに取り込む前処理部と、生成した生物を含むフロックを海水から分離する分離部からなります。それぞれの技術の特長は次の通りです。

(1)凝集技術を用いた前処理部
 バラストポンプで海から取り込んだ海水に、凝集剤と磁性粉を添加し、攪拌することにより磁性を有するフロックを生成します。このとき、プランクトンや細菌などの生物のみならず、海水に含まれる海底の泥や砂なども同時にフロックに取り込まれます。このため、バラストタンクには泥や砂が堆積することがなく、タンクのメンテナンスも大幅に軽減されます。

(2)磁気分離技術を用いた分離部
 海水中のプランクトンや細菌、砂などを取り込んだフロックは、磁性を有することから磁石を用いて高速で水から分離します。この磁気分離で約90%以上のフロックが回収され、残ったフロックは自動逆洗装置付きのフィルターにより分離されます。通常、0.1~数マイクロメートル(*4)の細菌類を分離するためには細かいメッシュのフィルターが必要となりますが、本技術では細菌を1ミリ程度の大きさのフロックに取り込むことから、メッシュの大きいフィルターが使用可能となります。これにより通水速度が高速化することから、装置の小型化も実現しました。

 本技術は、9月25日からシンガポールで開催される「3rd International Conference & Exhibition on Ballast Water Management」で発表します。

(*1) International Maritime Organization

(*2) バラスト水排出基準:

【 対象生物 / 排出濃度 】
 最小サイズ50μm以上の生物(主として動物プランクトン) 10個/m3未満
 最小サイズ10μm以上50μm未満の生物          10個/ml未満
 病毒性これら(O1及びO139)                   1cfu/100ml
                                        又は動物プランクトン1g当たり1cfu未満
 大腸菌                                  250cfu/100ml未満
 腸球菌                                  100cfu/100ml未満

(*3) 逆洗:ろ過方法とは逆方向に膜ろ過水を流すこと。

(*4) 1マイクロメートル=10-6m


以上

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