住友電工、宅内・ビル向け高速PLCモデムの製造・販売を開始
国内高速PLC市場に本格参入
~国内の宅内・ビル向け高速PLCモデムを開発・販売~
住友電気工業株式会社は、本年9月13日の電波監理審議会の答申により、電波法施行規則の一部が改正され、屋内の高速PLC*1技術利用が認可されることがほぼ確実になったことから、型式認定の取得ができ次第、本格的に国内の宅内・ビル向け高速PLCモデムの製造・販売を開始します。
高速PLCは、既存の配電線、電力線を通信回線として利用する技術で、最大で200Mbpsという高速通信が可能なため、簡単かつ低コストで安定したネットワークの構築が可能になる技術として期待されています。しかし、これまで国内においては電波法の規制があり、2~30MHzの高周波帯域を使用する高速PLCの使用は認められていませんでした。今回の規制緩和により、日本国内における高速PLC技術の利用が可能となりますが、既に2~30MHz帯域を使用しているアマチュア無線、短波放送や電波天文台等の使用障害防止の観点から、屋内用途に限定されており、さらに、コモンモード電流*2の許容値は、既にPLCが実用化段階にある欧米諸国の許容値よりも厳しいものになっています。
当社は、2001年に世界に先駆けて45Mbpsの高速PLCモデムを開発して以来、高速PLCの実用化に向けた取り組みを続け、2004年からはスペイン、ポルトガルの電力系通信会社等向けにアクセス系ネットワーク用途として高速PLCモデム(200Mbps)の販売を開始しています。当社は、これらの経験を基に、独自のフィルター開発や出力レベルの工夫等で今回定められた厳しい許容値の環境下でも使用に十分耐えられる宅内・ビル向けの高速PLCモデムの開発に成功しました。
当社は、宅内向け高速PLCモデムには、米国・インテル社、モトローラ社、シスコ社等が推す業界団体「HomePlug Alliance(ホームプラグ アライアンス)」の通信方式を採用し、主に通信事業者向けに販売をしていく予定です。一方、ビル向け高速PLCモデムにはスペイン・DS2社の通信方式を採用し、主にシステムインテグレータや通信工事会社向けに販売していく予定で、工事会社向け販売窓口は住友商事マシネックス株式会社(本社:東京都中央区、社長:荒井健彦)が担当します。
また、PLC関連機器の設計製造は、国内ADSL*3やVDSL*4等の製造で実績を持つ当社子会社の住友電工ネットワークス株式会社(本社:東京都品川区、社長:川野強)が担当します。
なお、今回開発した高速PLCモデムは、本日より幕張メッセにて開催される「CEATEC JAPAN 2006」の高速電力線通信推進協議会(PLC-J)ブースにて、展示、実演を行います。
*1 PLC:Power Line Communication
*2 コモンモード電流:平行に並んだ2本の銅線に高周波信号を流したときに同じ方向に流れる電流。
*3 ADSL:Asymmetric Digital Subscriber Line
*4 VDSL:Very high-bit-rate Digital Subscriber Line
以 上
【補足資料】
■PLC規格の標準化について
現在、PLCには国際標準規格がなく、PLCチップごとに通信方式が異なるため、異なるチップのモデムがあると通信速度が低下する場合があります。このような問題を解決するために、チップメーカーやモデムメーカーがPLCの推進のために設立した業界団体が、共存のための仕様を検討しています。
現在、世界には米国のインテル社、モトローラ社、シスコ社等が推す「HomePlug Alliance(ホームプラグアライアンス)」、スペインのチップメーカー・DS2社の技術を推す「UPA」、そして、松下電器産業等が中心となって推進するCEPCA(CE PowerLine Communication Alliance)の3つの業界団体が存在します。当社は、その中でも高速伝送と優れた耐ノイズ特性およびQoS、マルチキャストの機能を有する「HomePlug」の技術が、宅内でのインターネット情報、映像音声情報の安定伝送に適していると判断し、主に一般家庭向け用途の高速PLC技術として採用しました。一方、ビル内に多くのモデムを接続してLANを構築する場合には、DS2の持つデータ中継機能の技術が最適と判断し、ビル内のインターネット環境整備以外に設備管理やセキュリティ用途等にも活用できる技術として採用しました。
当社は、今後、HomePlugとDS2の2つの技術を宅内とビル内の市場に分けて進めていきますが、現在、IEEE*のワーキンググループのP1901で進められている標準化作業により、将来、上記3つの技術が互換性を持たせられるようになれば、一層、国内の高速PLC利用環境が向上し、普及が加速するものとして期待しています。
* IEEE:Institute of Electrical and Electronic Engineers 電気電子学会