ポーラ化粧品、フラクタル解析による肌構造の分析結果を発表
フラクタル解析により「なめらかな」肌構造のヒミツを発見
ポーラ化粧品研究所では、長岡技術科学大学カオス・フラクタル情報数理工学研究室 中川匡弘教授グループとの共同研究で、女性頬部の肌起伏構造についてフラクタル(※)解析を行い、「なめらかな」印象を与える肌構造の分析を行いました。その結果、世界で初めて、肌の起伏構造中には多様なフラクタル性が存在し、さらには「肌がなめらかで美しい」と感じる肌には、肌の起伏構造中に高いフラクタル性が存在することが明らかとなりました。この研究結果については2006年10月に大阪で開催される国際化粧品技術者会(IFSCC)で発表します。
※フラクタルに関してはP.3参照
ポーラ研究所の調査により「肌のなめらかさ」は見た目の肌の印象に大きく寄与することが判っています。しかしこれまで、私たちが「肌がなめらかでキレイな肌である」と感じる肌はどのような構造であるかは分かっていませんでした。一体、私たちが肌の印象を決めるのにどのような肌の構造が関係しているのでしょうか?
これまで肌表面の起伏を計測するには、主に金属表面のような単純な粗さ構造を持った工業品の計測を目的としたJIS規格(工業規格)が用いられてきました。しかし、肌は非常に多くの角層細胞から形作られた複雑な高次元構造を持ち、この複雑さが見た目の肌の印象に大変重要であると推察されます。従って、この複雑さを的確に計測することにより、「見た目の肌」の印象が肌のどのような構造から決定しているのか判明すると考えました。
この構造を計測する方法として今回「フラクタル」と呼ばれる自己相似性の指標を用いました。「フラクタル」構造は私たちが雲などの複雑な形を見た際に、「自然で美しい」と感じるものの構造に見られることが近年明らかになっています。
1)調査方法
(1)対象者:女性248名(10代:42名、20代:46名、30代:52名、40代:50名、50代:58名)
(2)対象部位:頬部
(3)肌のフラクタル解析方法:頬部のレプリカを採取し、レーザースキャンにより3Dデータ化。
このデータに対しフラクタル次元解析を行った。
見た目の「肌のなめらかさ」印象:頬部の写真を用いて化粧品技術者によってなめらかさの印象をスコア化
2)調査結果
(1)肌の起伏構造のフラクタル値には個人差がある。(図1)
人の肌のフラクタル次元は単一なものではなく、個々人によって様々な値をとることが明らかになりました。
(2)見た目の「肌のなめらかさ」印象は、肌の起伏構造のフラクタル性で決まる。(図2)
肌の起伏構造のフラクタル性と見た目の「肌のなめらかさ」印象の間に非常に高い関連性が見つかりました。このことは肌の起伏構造のフラクタル性が高いほど(=肌の起伏構造の自己相似性次元が高いほど)、私たちは肌を「なめらか」であるという印象を持つということを示しています。
今後、ポーラ研究所と長岡技術科学大学 中川匡弘教授グループでは、肌の起伏構造以外にも肌の色味など様々な肌の要素に対してフラクタル技術を活用した解析を行い、肌の印象とフラクタル性についての関連性の検討を行っていく予定です。肌の見た目の印象がどのような肌の構造から決まるかが明らかとなることにより、カウンセリングツールや肌の改善のターゲットとなることが期待できます。
(※ 詳細は添付資料を参照してください。)