TDK、電子機器向けに高特性のNdFeB焼結磁石を開発し量産開始
量産品最高特性* NdFeB焼結磁石を商品化
TDK株式会社(社長:上釜 健宏)は、業界最高*となるエネルギー積を従来工法で達成したNdFeB焼結磁石※1、NEOREC55シリーズを開発。2007年4月より量産を開始いたします。
NdFeB焼結磁石は、多くの磁石材料の中でもっとも高い特性を有し、電子機器の小型化・高性能化に貢献してきており、その特性向上の市場要求は旺盛です。
TDKでは、これまでNdFeB焼結磁石をNEORECシリーズとして開発・製品化。HDD(ハードディスクドライブ)のヘッド駆動用VCM※2、ハイブリッドカーの駆動用や発電用モータ、エアコンなど家電機器用モータ、DVD、CDなどの光ヘッド用、各種磁気センサにおける磁界発生用等に採用されてきました。
そしてこのたび、従来製品NEOREC53シリーズの最大エネルギー積※3 を5%上回り、量産最高特性となるNEOREC55シリーズを開発、量産を開始します。
本製品は、TDK独自開発の低酸素プロセス※4 の採用により、磁石中の酸化物量を極限まで低減し、飽和磁化の向上に成功。成形粉末の制御技術の適用により、従来成形工法である乾式法※5 を変えることなく、磁界中成形後の圧粉体の配向性※6 を高め、大幅な磁石性能向上を達成。また低着磁磁界での着磁性も大幅に向上。十分な着磁※7 が容易に行えます。
本製品のこれらの特性は、従来品と同形状でも、VCMの磁気回路において磁束向上とそれにともなうトルク※8 向上をもたらし、結果としてヘッド移動速度のアップ、すなわちHDDのシーク速度※9 の向上を実現させます。また、小型形状でかつ複雑な着磁パターンとなる光ヘッド用磁石においても高い着磁率であるために、磁石の小型化が図れます。
TDKのすぐれた開発技術から生まれた高特性磁石NEOREC55シリーズが、HDDをはじめとした、電子機器の新たな進化を支援します。
また、本製品は4月18日から幕張メッセ国際展示場で開催される「テクノフロンティア2007」のTDKブースに出品いたします。
*2007年4月現在、TDK調べ
【 用語説明 】
※1 NdFeB焼結磁石
ネオジム・鉄・ボロンを原料に、合金化、粉砕、成形、焼結の工程を経て得られる磁石。
※2 ヘッド駆動用VCM (ボイスコイルモータ)
HDDのディスクに、磁気ヘッドを位置決めするために使われるモータ。
※3 最大エネルギー積:(BH)max(単位:kJ/m3 キロジュール毎立方メートル)
磁石が蓄えることのできる最大の磁気エネルギー。
※4 低酸素プロセス
材料の粉砕から成型までの工程雰囲気を低酸素にすることによって、合金粉末の酸化を抑制する技術。
※5 成形法:乾式法
粉体を型に入れ加圧して圧粉体に成形する際に、粉体のみで行う成形法。粉体に液体成分を加え、スラリー状にして成形する方法の湿式法と対比される。
※6 圧粉体の配向性
成形時に磁界を印加し個々の粉体の結晶方向を揃えるが、それによって得られる圧粉体の結晶方向が揃っている程度。
※7 着磁
焼結後に磁化がない(消磁)状態から、磁界を加えて磁化させること。磁界を取り除いても残留磁化が残り、磁石外部に磁束の供給という永久磁石の働きを示す。
※8 トルク
物体を固定された回転軸を中心に回転運動をさせる際の、回転軸のまわり力のモーメント。力と距離の積で表わされる。
※9 HDDのシーク速度
HDDのデータを磁気ヘッドが読み書きする際、次のトラックに移動するときの平均速度。
*主な特性、特徴などは添付資料をご参照ください。