花王、肌の見え方を光学的に解析し美肌を再現する化粧品用粉体を開発
肌の見え方を光学的に解析し、美肌を再現する化粧品用粉体を開発
美しい肌は、鮮やかな肌色の光を反射することを発見
ナノレベル薄層をもつ多層構造粉体の反射光で、美肌を再現
花王株式会社（社長・尾崎元規）・スキンケア研究所、加工・プロセス開発研究所は、女性の美しい肌は鮮やかな肌色の光を反射することを見出しました。そして、この結果を基に新しい化粧用粉体をコンピューターシミュレーションにより構造設計し、美肌を再現する反射光を放つナノレベル薄層をもつ多層構造の化粧品用粉体の開発に成功しました。
■研究の背景
美しい素肌とくすみや毛穴の目立つ素肌の外観を比較すると、肌の明るさや色、ツヤなどさまざまな点で異なります。これらの違いが、肌のハリ感や弾力感などの肌の見え方にも影響します。そこで肌の見え方の違いが、どのような光学特性の違いによるかを解析し、さらに美しい肌を再現するための化粧品用粉体を検討しました。
●結果（１） くすみの目立つ肌は白い光を反射し、美しい肌は鮮やかな肌色の光を反射
くすみや毛穴が目立つ肌は、本来、皮膚表面にある細かなキメが減って平滑部分が多くなり鏡面のようになるため、光を強く反射する正反射領域では、顔を照らす太陽光や一般照明のような白い光をそのまま反射しやすいことが分かりました。そのため頬などの反射光が強い部分は、肌色の鮮やかさ（彩度）が低下して、白っぽくなり肌が美しく見えないことが分かりました。
これに対し、キメが細かくそろった美しい肌は、正反射領域でも光が肌の色を含み、鮮やさが維持されたまま反射していました。そのため様々な角度から見ても、明るく鮮やかなツヤの美しい肌に見えることが明らかになりました。
＊ 関連資料１参照
〈実験方法〉
肌の見え方は、花王が開発した光学計測技術の「多視点画像解析システム」（＊）を使って解析しました。色々な方向から照明をあてたときの女性の顔を、多方向から撮影しました。そして得られた映像について、頬や額など各部位の肌の見え方を評価すると共に、肌の色や彩度、明るさを測定しました。
（＊）多視点画像解析システム：多方向から顔や肌の見え方を解析する装置。２０台のカメラと５０台のライトが、被験者を取り囲む構造。顔を多角度から同時に撮影し、得られた画像の光学的解析が可能。（第９６回日本画像学会研究討論会にて、２００５年１１月２５日発表）
参照： http://www.kao.co.jp/corp/news/2006/1/n20060220-01re.html
●結果（２）美肌を再現する反射光を放つ、多層構造粉体を開発
肌の解析結果から、正反射領域も明るく鮮やかな肌色系の光を反射する粉体を検討しました。
これまでも、色のある反射光を発する化粧用粉体には、干渉パール顔料がありました。これはＣＤ記録面やシャボン玉などで見られる光の干渉作用を利用したものですが、従来の肌色系の干渉パール顔料は鮮やかさ（彩度）が低く、白っぽい反射光になってしまうという問題がありました。
そこで光の干渉作用などに基づいてコンピューターシミュレーションを行い、肌色系の光が鮮やかに反射するような構造を設計しました。その結果、厚みが数ナノメートルの中間層をもつ多層構造粉体が最適と分かりました。
この設計を元に、数ナノメートルの薄層をもつ多層構造粉体「ライブインプレッションパウダー」を開発しました。この粉体をファンデーションに配合して塗布すると、正反射領域の肌色の鮮やかさを美しい肌と同レベルに高めることができ、美しい肌を化粧品で再現させることが可能になりました。
＊ 関連資料２参照
この成果は、ファンデーションやメイクアップ化粧品の開発に応用していきます。
本研究はＦＡＴＩＰＥＣ２００６（欧州顔料国際会議 ２００６年６月１２－１４日、ハンガリー）、第２４回ＩＦＳＣＣ学術大会（国際化粧品技術者会 ２００６年１０月１６－１９日、大阪）にて、発表いたします。