王子製紙、北越製紙に対し株式公開買い付け実施を発表
北越製紙株式会社に対する経営統合提案に関するお知らせ
当社は、本日開催の取締役会におきまして、去る7月3日付けで当社代表取締役から北越製紙株式会社(以下、「北越製紙」といいます)に対して提案した、北越製紙と当社との経営統合案を付議しました。当社取締役会は、下記のとおり、同提案を承認すると共に、北越製紙が平成18年7月21日に公表した三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」といいます)に対する第三者割当増資(以下、「本件増資」といいます)および業務提携が撤回されることを条件に、上記経営統合の実現をめざすことを決定いたしましたのでお知らせいたします。
記
1.経営統合申し入れの経緯
国内の印刷・情報用紙市場と東アジアの印刷・情報用紙市場は、一体化の方向へ急速に進みつつあります。紙・パルプメーカーとして広域化した市場での厳しい競争に打ち勝ち、企業価値の持続的な向上を実現するためには、当社は、企業再編の方法によって企業規模の拡大と効率性の向上を迅速に実現することが望ましいと考えていました。
かかる現状認識に基づき、本年3月、当社は、北越製紙に対し、両社の経営統合に向けての協議を打診し、両社の経営幹部間で経営統合の可能性につき意見交換を行いました。その時点では、具体的な経営統合の議論には至りませんでしたが、その後、当社は、北越製紙との経営統合の具体的方法や条件について検討し、去る7月3日には、当社会長および社長が北越製紙を訪問して経営統合の申し入れを行うと同時に、具体的条件(北越製紙の全株式を対象とし公開買付価格を1株あたり860円とする公開買付けの実施を含む)を盛り込んだ添付の経営統合提案書(以下、「本提案書」といいます)を提出しました。当社は、北越製紙が検討のために必要とする時間を考慮し、7月24日午前9時までに本提案書にご賛同いただけるか否かをお知らせいただくようお願いしておりました。またこの間、当社は、北越製紙から受けた口頭および書面での質問に対し誠実かつ迅速に回答して参りました。
これに対し、北越製紙は、7月19日付けで取締役会限りで所謂「買収防衛策」の導入を決定し、7月21日には、株主の一人である三菱商事に対し1株あたり607円(同日の東京証券取引所における終値は635円)で5,000万株(7月21日時点の発行済株式総数の30.5%に相当)を割り当てる本件増資を発表しました。本件増資が実現した場合には、三菱商事の北越製紙における議決権割合は24.44%に達し、三菱商事は北越製紙において支配的地位を有する株主になります。
このように、本提案書の北越製紙への提出後、当社としては北越製紙経営陣に本提案書を十分にご検討いただくべく、検討期間を設定し、その間、質問には速やかにお答えし、さらに詳細な回答も提示していたところ、北越製紙取締役会は、本提案書で示された経営統合提案の実現を困難にする一連の行為を矢継ぎ早に決定しました。その結果、経営統合提案の実現を目指す当社を取り巻く状況は著しく困難を増したところではありますが、当社と北越製紙の経営統合は北越製紙の株主の皆様をはじめ全ての関係者の皆様の利益となるものと確信しております。当社取締役会は、北越製紙の株主をはじめとする関係者のご理解とご支持を得て、北越製紙との経営統合を進めていくべく、北越製紙との経営統合の提案を承認したものです。
2.本提案書の骨子
当社の経営統合提案は、当社による北越製紙の全株式を対象とする公開買付け(以下、「本公開買付け」といいます)を以下のとおり実施したうえ、株式交換等の方法による100%子会社化プロセスを経て、経営統合(以下、「本経営統合」といいます)を実現することを主たる内容とするものです。北越製紙に提案申し上げた経営統合提案の詳細は本提案書記載の通りですが、その骨子は次のようなものでした。
(1)本公開買付けの概要
1)現金を対価とし、1株当たり860円の価格で本公開買付けを実施する。(この価格は、本経営統合提案を行った平成18年7月3日時点での北越製紙の東京証券取引所における直近1ヶ月終値平均株価(平成18年6月1日から平成18年6月30日)に対して約34%のプレミアムを加えた価格となります。また、同日時点での直近3ヶ月終値平均株価、6ヶ月終値平均株価のいずれに対しても30%以上のプレミアムであり、直近5年間の株価最高値の830円(終値ベース)を上回る価格です。なお、7月21日の終値635円に対しては約35%のプレミアムを加えた価格となります。)
2)北越製紙の議決権の50.1%に相当する株式数を買付予定株式数(但し、引き下げる可能性がある)とし、応募があった株式数がこれに達しない場合には、全ての株式の買付けを行わず、これを超える応募があった場合には、その全部の買付けを行う。
3)公開買付けの開始は8月中旬とし、公開買付期間は約1ヶ月の予定とする。
(2)本経営統合後の事業運営方針
当社と北越製紙が一体として実施する生産設備のスクラップ・アンド・ビルド、将来の資源確保のための海外植林等に関する共同での取組み、共同購入による原燃料コストの削減、物流の効率化、当社の研究開発能力の活用により、統合シナジーの実現を図る。北越製紙の新潟工場については、本経営統合後の新グループの印刷・情報用紙生産の中核拠点として位置づける。
(3)本経営統合後の従業員政策
本経営統合に伴う従業員の解雇や労働条件の引き下げは一切行わない。
(4)設備増設計画支援を通じた地域社会への貢献
当社は、資金提供を含め、北越製紙の新潟工場における設備増設計画を積極的に支援する。
3.経営統合提案の背景と意義
本経営統合は、効率性の高い事業運営に実績のある北越製紙と豊富な経営資源を有する当社という最適の組み合わせを実現するものであり、これにより、企業規模の拡大と効率性の向上を同時に実現することが可能です。その結果、豊富なキャッシュ・フローを前提とした、国際的な競争に不可欠な大規模投資を行い得る体制を築くことができます。また、北越製紙が現在計画中の塗工紙生産設備増設と、当社の小型老朽設備のスクラップを組み合わせることで、効率的な生産設備体制を確立できます。生産販売体制の最適化、交錯輸送削減等の物流改善や技術交流等、多岐にわたるシナジーが生じることも見込まれます。
本経営統合が実現した暁には、売上高において世界第5位の紙・パルプメーカーが誕生することになります。さらに、本経営統合後、両社の長所を伸ばし短所を補完することによって、より一層の成長が可能になると考えています。当社としては、本経営統合の迅速な実現が、北越製紙の株主の皆様をはじめ、従業員、取引先、消費者、地域社会を含むすべての北越製紙関係者の皆様にメリットをもたらすものと確信しております。
4.本件増資等の撤回を条件とする経営統合提案の維持
当社は北越製紙の株主でもありますが、上場会社である北越製紙の取締役会が、株価に十分なプレミアムを付した全株を対象とする公開買付けという北越製紙の一般株主にとって明らかに魅力的な提案を受けながら、それを十分に検討することをせず、「買収防衛策」を導入し、さらには特定の株主に時価以下の価格で大規模な第三者割当増資を実施して本経営統合の実現を困難なものにし、北越製紙株主から選択の機会を奪おうとしていることには驚きを禁じ得ません。当社としては、かかる事態を大変遺憾なことであると考え、本提案書を公表し、北越製紙と当社との経営統合の実現に向け引き続き努力を重ねたいと考えております。
ただ、本件増資が実行された場合には、本経営統合の実現を難しくするに止まらず、本公開買付けの条件の魅力を減じることとならざるを得ません。すなわち、本件増資と当社の予定投下資金額を前提に、本件増資後の全株式を対象とした公開買付価格を再計算すると、公開買付価格は1株あたり約800円になります。これは、三菱商事への割当価格である607円に対しては31.7%ものプレミアムがついた金額ではありますが、三菱商事以外の株主にとっては、本件増資がなければ得られたはずのプレミアム金額の減少を意味します。当社は、7月3日の本提案書記載の通り、北越製紙塗工紙生産設備増設資金の提供を申し出ており、本件増資による資金調達の必要性はありません。また、三菱商事との業務提携の内容についても、「原材料の調達、国内外の紙販売に関する協業等についての提携を行って参ります」(北越製紙の平成18年7月21日付プレスリリース「第三者割当による新株式発行及び主要株主の異動並びに業務提携に関するお知らせ」)との抽象的な開示にとどまっており、当該提携が北越製紙にもたらす具体的なメリットの説明は一切されておりません。当社としては、北越製紙の取締役会が自らの職責に照らして本件増資および業務提携を再考すること、あるいは三菱商事が株主全体の利益に配慮されて再考することを期待し、本件増資および業務提携が撤回されることを条件に、引き続き本経営統合提案(一株あたりの公開買付価格を860円とする公開買付けを含む)を本提案書記載の条件のまま維持します。但し、本公開買付けは本件増資等の撤回が公表されてから可及的速やかに行うものとし、本提案書III.2(新グループの経営体制および社名)のうち経営体制に関する部分については、当面凍結するものとします。
なお、北越製紙の運営、業務または財産に重大な変化が生じるおそれがある場合、または本公開買付けの実施が困難となるか、本公開買付けや本経営統合の円滑な実行に支障となる特段の事情が生じた場合には、本公開買付けの実施を中止することや、本提案書と異なる条件で実施することがあります。最終的に本公開買付けを実施するか否か、実施する場合の条件の詳細は、別途開催する当社取締役会で決定します。
5.その他
北越製紙は7月19日付けで買収防衛策を導入しておりますが、当社は、それに先立つ7月3日に経営統合提案を行っております。また、北越製紙からは本提案書に関し書面および口頭で質問が寄せられており、当社はこれに迅速に回答するなど、すでに適切な情報提供と妥当な検討期間の確保を実行してきており、本提案書検討のプロセスは、当該買収防衛策において示されたところとは全く異なる形で進められてまいりました。従いまして、本提案書における経営統合提案は、当該買収防衛策の対象となるものではなく、北越製紙取締役会が買収防衛策として一方的に定めたプロセスに、当社が従わなければならない法的根拠はいささかもないものと考えております。
以 上
