理化学研究所と国立情報学研究所、次世代スーパーコンピューターの開発利用プロジェクトで連携
理化学研究所と国立情報学研究所が基本協定締結
- 次世代スーパーコンピュータの利用及び先端的な情報基盤の構築で連携 -
独立行政法人理化学研究所(理事長:野依良治、以下「理研」という)と大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所(所長:坂内正夫、以下「情報研」という)は、文部科学省の「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト(以下「本プロジェクト」という。)を推進するため、連携・協力に関する基本協定を平成18年10月19日に締結しました。
理研は、平成17年10月、文部科学省より「次世代スーパーコンピュータ」の開発主体として選定されたことから、平成18年1月1日に野依理事長を本部長とする「次世代スーパーコンピュータ開発実施本部」を設置し、このプロジェクトに取り組んでいます。
情報研は、全国の大学・研究機関等を結ぶ学術情報ネットワーク(SINET(サイネット)/スーパーSINET)※1の運用、広域分散型の大規模コンピュータ環境を実現するためのグリッドミドルウェア※2の研究開発(NAREGI(ナレギ)プログラム)※3をはじめとした、次世代の学術情報基盤としてのサイバー・サイエンス・インフラストラクチャ※4の構築に取り組んでいます。
次世代スーパーコンピュータは、完成後、グリッドミドルウェアを使用して、日本全国から高速ネットワークを介して利活用できるように計画しています。このため、開発段階からネットワーク上での利用を考慮することで、次世代スーパーコンピュータの効率的な利用環境の構築を目指します。
【 協力内容 】
次世代スーパーコンピュータを利活用するため、情報基盤に関する情報交換、共同研究の実施、人材交流、人材養成、産業界及び他機関との連携・協力を実施するために必要な事項等を実施。さらに具体的な内容についてはその都度個別契約等を締結する。
【 協定期間 】
平成18年10月19日から平成23年3月31日
理研が次世代スーパーコンピュータに関して協定を結ぶのは、平成18年6月14日に独立行政法人海洋研究開発機構(理事長:加藤康宏)、9月8日に国立大学法人筑波大学(学長:岩崎洋一)との締結に続いて、3件目となります。
1.基本協定締結へ至った経緯
理研は、本プロジェクトの開発主体として、平成18年1月1日から野依理事長を本部長とする「次世代スーパーコンピュータ開発実施本部」を設置し、次世代スーパーコンピュータの開発に取り組んでいます。すでに、国内外のスーパーコンピュータセンター調査を実施し、4月には産業界、大学、研究機関の8者と概念構築に関する共同研究を始めアーキテクチャの検討を行ってきました。9月からは2つのシステム構成案について概念設計を開始しました。
一方、情報研は、全国の大学・研究機関等を結ぶ学術情報ネットワーク(SINET/スーパーSINET)の運用、広域分散型の大規模コンピュータ環境を実現するためのグリッドミドルウェアの研究開発(NAREGIプログラム)をはじめとした、次世代の学術情報基盤としての「サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ」の構築に取り組んでいます。
サイバー・サイエンス・インフラストラクチャは、大学・研究機関等が有しているコンピュータ等の設備、基盤的ソフトウェア、学術コンテンツ及び学術データベース、人材、研究グループそのものを超高速ネットワーク上で共有する最先端学術情報基盤で、情報研や各大学の全国共同利用情報基盤センター等が連携し、中核となって整備を推進しています。
次世代スーパーコンピュータは、こうしたサイバー・サイエンス・インフラストラクチャの要望にもこたえ、スーパーコンピュータを保有する大学・研究機関等と連携しながら、NLS(ナショナルリーダーシップシステム)としての機能を発揮していくことを目標に掲げています。
NLSの利活用が全国からスムーズに行えるようにするために、開発段階からネットワーク上での利用を検討し、そのシステムを構築することが効果的かつ効率的な方法であり、両機関が連携・協力することが必要であるため、今回の基本協定締結をするに至ったものです。
2.基本協定の範囲
1)情報交換
2)共同研究などによる研究開発
3)人材交流や人材養成
4)産業界や他機関との連携・協力
5)その他本協定の目的を達成するために必要な事項
3.「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトについて
本プロジェクトは、世界最先端・最高性能の「次世代スーパーコンピュータ」の開発・整備及び利用技術の開発・普及を目的としています。理論、実験と並び、現代の科学技術の方法として確固たる地位を築きつつ計算科学技術をさらに発展させるため、長期的な国家戦略を持って取り組むべき重要技術(国家基幹技術)である「次世代スーパーコンピュータ」を平成24年の完成を目指して開発します。さらに、今後とも我が国が科学技術・学術研究、産業、医・薬など広汎な分野で世界をリードし続けるため、以下の3項目を文部科学省のイニシアティブにより、理研を中心に産学官の密接な連携の下、一体的に推進しています。
1)最先端・最高性能の「次世代スーパーコンピュータ」の開発
2)スーパーコンピュータを最大限活用するためのソフトウェアの開発と普及
3)開発するスーパーコンピュータを中核とする世界最高水準のスーパーコンピューティング研究教育の拠点の形成
< 補足説明 >
※1 学術情報ネットワーク(SINET/スーパーSINET)
(1)SINET〔サイネット:Science Information Network〕
日本全国の大学・研究機関等のライフラインとして構築・運用しているネットワーク。平成18年4月末現在708機関が接続し、最大1ギガビット/秒の速度で接続拠点を結んでいる。
また、国際間の研究情報を円滑に流通できるようにするため、米欧・アジア等の海外研究ネットワークと相互接続している。
(2)スーパーSINET〔スーパーサイネット〕
これまでのネットワーク環境では不可能な処理が求められる先端的研究プロジェクトをサポートする超高速ネットワーク。
現在、高エネルギー科学、核融合科学、宇宙科学、天文学、遺伝子情報解析、ナノテクノロジー研究、シミュレーション科学、グリッドコンピューティング研究等を行う35機関を接続拠点として、最大10ギガビット/秒の速度で結んでいる。
※2 グリッドミドルウェア〔Grid Middleware〕
広域に分散したスーパーコンピュータ等の計算資源、大規模データ、実験設備等を高速なネットワークで相互に連携する環境を形成するソフトウェアで、いくつかのコンポーネントから成っている。
コンポーネントとしては、スーパースケジューラ、グリッドVM、分散情報サービス、グリッドプログラミング、グリッドアプリケーション等があり、これらを総称してグリッドミドルウェアと呼ぶ。
※3 NAREGIプログラム〔ナレギ プログラム:National Research Grid Initiative〕
平成15年度に、文部科学省の「経済活性化のための研究開発プロジェクト」の一環として開始し、平成18年度からは、「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトの一環として推進。
広域分散型の最先端教育研究用大規模計算環境(サイエンスグリッド環境)を実現するため、世界標準に準拠し、実運用に耐える高品質のグリッドミドルウェアの研究開発を行っている。
※4 サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ〔CSI:最先端学術情報基盤〕
大学・研究機関等が有しているコンピュータ等の設備、基盤的ソフトウェア、学術コンテンツ及び学術データベース、人材、研究グループそのものを超高速ネットワーク上で共有する最先端学術情報基盤。
これにより、組織や分野を超えて自在に連携・活用させ、大学・研究機関、企業等の研究・技術開発を促進させるとともに、さらには先端科学技術の高等教育を実現できる環境及びそれを支えることが可能になる。