ヤンセンファーマ、多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド注射用3mg」の承認取得
多発性骨髄腫治療薬
「ベルケイド(R)注射用3mg」の承認を取得
~再発又は難治性の多発性骨髄腫の治療に新たな可能性~
米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の医療用医薬品日本法人、ヤンセンファーマ株式会社(東京都千代田区、社長:関口 康)は、本日、多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド(R)注射用3mg」(一般名:ボルテゾミブ)の製造販売承認を取得しました。「ベルケイド(R)」は、米ミレニアム・ファーマシューティカル(MPI)社により創製されたプロテアソーム阻害作用(*脚注1)を有する世界初の抗悪性腫瘍剤であり、欧米ではその優れた臨床効果により、再発又は難治性の多発性骨髄腫(*脚注2)の標準的治療薬としての位置付けを確立している薬剤です。
治癒困難で、再発を繰り返すに従って難治性となる多発性骨髄腫(以下MM:Multiple Myeloma)の治療においては、新たな治療法や薬剤のニーズがとりわけ高かったにもかかわらず、過去10年以上にわたり新薬の登場がありませんでした。海外の臨床試験において、既存の治療薬に抵抗性を示した患者さんの35%に奏効が見られ、国内の臨床試験でも同様の有効性が示された本剤の承認は、患者さんやそのご家族はもとより、医療関係者にとっても大いなる福音であると考えます。
本剤はこれまでに海外で44,000名以上の患者さんに投与され、MMの治療に一大変革をもたらした功績によって、先月には製薬産業界のノーベル賞とも称される2006年度"国際プリ・ガリアン賞"を受賞しています。
一方、「ベルケイド(R)」はこれまでのところ、国内での使用経験が少なく、治験における1症例の他、個人輸入製剤の使用症例においても急性肺障害が報告されており、専門家も薬剤との関連性を否定できないとしていることから、当社では発売後に全例調査方式による特定使用成績調査を実施して使用実態下での安全性等を綿密に調査し、得られた安全性情報を定期的に提供するとともに、調査結果を反映させた適切な安全対策を取ることによって、本剤の適正使用の推進を図ってまいります。
「ベルケイド(R)」はMPIとJ&Jグループの研究開発会社、ジョンソン・エンド・ジョンソン・ファーマシューティカル・リサーチ・アンド・デベロプメント(J&JPRD)社によって共同開発されている薬剤で、米国における販売はMPI、欧州その他の地域ではJ&Jグループのオーソ・バイオテックならびにヤンセン・シラグ社が販売を担当し、今日、世界75カ国で承認、販売されています。日本においては当社が開発権を取得し、2003年12月には希少疾病用医薬品の指定を受けております。
ヤンセンファーマは、「中枢神経系」「真菌症」「鎮痛・麻酔」「がん」の4つを重点領域と位置付けています。今回の「ベルケイド(R)」承認は当社「がん」領域の製品ラインアップ拡充に弾みをつけるものと考えております。また、本剤と同時期に承認された深在性真菌症治療薬「イトリゾール(R)注」と合わせ、当社では新たに血液腫瘍課の専任MR(医薬情報担当者)を新設し、学術情報活動の高度化を通じて、日本の医療の更なる発展に貢献してまいります。
*脚注1 プロテアソーム阻害作用とは:
プロテアソームは、細胞内の不要タンパク分解装置というべきものであり、細胞周期を制御するタンパク質や、細胞増殖やアポトーシスにかかわるシグナル伝達関連タンパク質の調節・制御に関与しています。ベルケイド(R)はここを阻害することから、細胞周期や細胞内シグナル伝達系に関連する調節タンパク質に影響し、抗腫瘍効果を誘導します。腫瘍細胞では細胞周期や細胞内シグナル伝達に関連する調節タンパクの産生異常がよく見られることから、正常細胞よりもプロテアソーム阻害剤に対する感受性が高いと言われています。
*脚注2 多発性骨髄腫とは:
多発性骨髄腫(MM)は血液の悪性腫瘍の一つで、腫瘍化した単一の形質細胞(骨髄腫細胞)を産生するため、結果として正常な免疫システムが機能しなくなったり、周りの骨や軟部組織を侵蝕したりする疾患です。この疾患は10万人中2.75人の割合で発症するといわれており、現在日本のMM患者数は約13,000人、毎年新たに4,000人が罹患し、3,000人が亡くなっているといわれています。この疾患は高齢者に多く発症し、治癒は見込めず、初診時からの生存期間が約3.3年と予後が非常に悪いことが特徴です。MMを発症すると、免疫力が低下して感染症を誘発したり、腎障害をきたしたり、腫瘍細胞が産生する破骨細胞活性化因子のために骨の破壊を伴い、骨折や高カルシウム血症をきたすといった症状が現れます。