花王、愛犬2247頭の体脂肪率を測定し肥満実態の解析結果を発表
愛犬2,247頭の体脂肪率を測定
■平均体脂肪率は29%で、メスの方がオスより体脂肪率が多い。
■加齢とともに体脂肪率は増加し、4頭に1頭が肥満傾向。
花王株式会社(社長・尾崎元規)のペットケア研究グループは、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP 代表・石田卓夫)の幹事をしている動物病院37院と共同で、愛犬2,247頭の体脂肪率を測定し、さらに体脂肪率を指標に肥満実態について解析をおこないました。
近年、愛犬の肥満が増加していると言われていますが、その実態を臨床的に調査した例は多くありません。また肥満は、過剰な脂肪が体内に蓄積された状態であるため、肥満の評価は体脂肪率により評価することが望ましいと考えられます。しかし、これまでは簡便な犬の体脂肪率の測定方法がなかったため、多数の愛犬の体脂肪率を測定した例はなく、また体脂肪率を指標に肥満実態を検討した例もありませんでした。
そこで今回、花王(株)と大和製衡(株)が共同開発した簡便に体脂肪率の測定ができる「ヘルスラボ犬用体脂肪計」を使用し、動物病院の獣医師の先生方のご協力をいただいて、動物病院に来院した愛犬の体脂肪率を測定しました。
その結果、以下のことが分かりました。
【研究結果】
・愛犬の平均体脂肪率は29.2%。
・メスの体脂肪率は30.8%で、オス27.6%に比べて高く、性差がある。
・加齢によって、オスもメスも体脂肪率が増加。
・体脂肪率35%以上を肥満*とした場合、全体の25.6%が肥満に該当。
今回の成果は、ペット用商品の開発に応用するとともに、今後も愛犬の健康管理に役立てるため、肥満の病気との関係や生活習慣との関係などの検討を行う予定です。
なお本成果は、第8回日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)年次大会(2006年9月15~17日、東京)で発表しました。
*体脂肪率35%以上を肥満と設定した経緯
過去の研究(Vet. Clin. North Am. Small Animal Practice 1989; 19(3):447-474)では、成犬になったばかりの健康な1歳犬の体重を標準体重とし、体重が標準体重の1.15倍以上になった場合を肥満状態としています。
今回の調査から1歳犬の平均体脂肪率は約25%でした。この値を基準に、体重が標準体重の1.15倍になったときの体脂肪率を算出すると35%でした。これより体脂肪率35%以上を肥満と設定しました。
■研究の背景
愛犬の肥満が増加していると言われていますが、犬の肥満は骨関節症などの運動器疾患や心疾患などの原因となり、さらに寿命短縮の要因ともなります。
犬の肥満の主な原因は、運動不足や食べすぎなどによるエネルギー収支のアンバランスです。そのため動物病院での対応は肥満改善指導が中心となりますが、体重と体脂肪率を使って食事指導を行えば、健康管理の精度を高めることができると考えられます。
また愛犬の肥満実態を臨床的に調査した研究は少なく、国内の例では、約1歳時の体重の1.15倍以上を肥満とした場合は調査対象犬の約24%が肥満に該当するという調査(1992年、草地ら)や、ボディ・コンディション・スコア(BCS;犬の体型や触診で肥満度を段階評価)で4以上を肥満とした場合は約17%が肥満に該当するとの調査(2002年、船津ら)の2例だけです。これらの研究では、肥満度の評価は体重やBCSといった定性的な判定が用いられています。
しかし肥満とは、脂肪が過剰に蓄積した状態であるため、こうした体重による評価や定性的な判定に加え、体脂肪率による客観的な評価をすることが望ましいと考えられます。この体脂肪率の測定方法には、これまでも重水希釈法**や二重エネルギーX線吸収法(DEXA)などがありますが、これらは犬への負担が大きいことや特殊な設備が必要であることなどから、基礎研究レベルでしか実施されていませんでした。
そこで今回、簡便な測定ができる犬用体脂肪計を使用して、多数の愛犬の体脂肪率を測定し、また体脂肪率を指標として肥満実態を解析しました。
**重水希釈法
動物に水を投与すると、その水は体内の脂肪以外の組織に希釈分散します。重水希釈法とはこの原理に基づいたもので、比重が重く、無害な重水をトレーサーとして投与し、血中の重水濃度の分布を追跡することで体脂肪率を測定する方法です。
■調査方法(*添付資料参照)
【体脂肪率の測定法】
花王ホームページ ニュースリリース 2006年3月23日
「犬用体脂肪計を、開発!小型軽量で簡単に体脂肪率が測定でき、全犬種に対応」を参照。
測定器具:ヘルスラボ犬用体脂肪計。
測定原理:生体インピーダンス法によるもので、微弱な電流を流して電気抵抗を測定し、全身の体脂肪率を算出。
測定部位:測定部位は、あらかじめ消毒用エタノールで皮脂や汚れを取り除き、クシで被毛をかき分けて、皮膚を露出させておく。犬の背中の左側で背骨から2センチ離して、最後肋骨から4つの電極を背骨に平行に当てて測定。