帝国データバンク、10月の全国企業倒産集計を発表
2006年10月報
倒産件数は889件、2005年4月以降で最高
負債総額は5660億2900万円、今年2番目の高水準
・倒産件数 889件
前月比 33.3%増
前月 667件
前年同月比 7.8%増
前年同月 825件
・負債総額 5660億2900万円
前月比 66.5%増
前月 3399億2000万円
前年同月比 14.3%減
前年同月 6605億7600万円
<ポイント>
■倒産件数は889件、前月比33.3%の増加、前年同月比も7.8%の増加となり、2006年3月(848件)を上回り、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最高を記録。
■負債総額は5660億2900万円で、前月比で66.5%の増加、前年同月比では14.3%の減少となったものの、5月(6838億9800万円)に次いで今年2番目の高水準となった。
■ジャスダック上場の(株)ユニコ・コーポレーション(負債891億7000万円、北海道)が会社更生法の適用を申請。上場企業の倒産は、今年2社目。
■件数
2006年10月の倒産件数は889件で、前月(667件)を222件上回るとともに、前年同月(825件)も64件上回り、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最高を記録した。
前月比は+33.3%、前年同月比も+7.8%を記録。ともに大幅増加となったのは、中小・零細企業、地方圏企業の倒産が増加しているため。
倒産件数の推移は一進一退を繰り返しながらも、中長期的にみると緩やかな増加基調が持続している。
■負債総額
2006年10月の負債総額は5660億2900万円で、5月(6838億9800万円)に次いで今年2番目の高水準となった。
負債が高水準となったのは、ジャスダック上場の(株)ユニコ・コーポレーション(負債891億7000万円、北海道)など、負債100億円以上1000億円未満の倒産が10件(前月5件)発生したため。
前月比(+66.5%)は大幅増加となったものの、前年同月比(△14.3%)では減少した。
■業種別
・4業種で今年最高の件数
業種別に見ると、7業種中、建設業(242件、前年同月比+21.6%)、製造業(128件、同+3.2%)、卸売業(150件、同+8.7%)、小売業(161件、同+8.8%)の4業種で、今年最高となった。
このうち、製造業、卸売業、小売業は、それぞれ2005年4月以降でも最高を記録。とくに小売業は飲酒運転への批判の高まりを受け、厳しい環境下にある外食業者(51件、今年最高)を中心に、高水準で推移している。
構成比で見ると、上位は建設業(27.2%)、小売業(18.1%)、卸売業(16.9%)の順。
■主因別
・販売不振による倒産が今年最高
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は662件(前月499件、前年同月595件)となり、前月を32.7%(163件)、前年同月を11.3%(67件)それぞれ上回った。
とくに、販売不振による倒産は613件(構成比69.0%)で、前月比38.1%の増加、前年同月比も13.5%の増加となり、件数、構成比ともに今年最高を記録した。
「不況型倒産」の構成比は74.5%(前月74.8%、前年同月72.1%)となり、前月を0.3ポイント下回ったものの、前年同月を2.4ポイント上回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
・負債1億円未満が増加傾向
負債5000万円未満の倒産(415件、前年同月比+36.1%)が、集計対象を変更した2005年4月以降で最高を記録した。
負債5000万円以上1億円未満(134件、前年同月比△13.0%)と合わせた同1億円未満の中小・零細企業の倒産は549件(構成比61.8%、前年同月比+19.6%)で、全体の60%超を占めた。
負債10億円以上の倒産は66件(前月40件、前年同月80件)発生。このうち、負債50億円以上100億円未満の倒産は8件(前月12件、前年同月10件)、同100億円以上の倒産は10件(同5件、同10件)となっている。
個人経営(170件、前月比+57.4%、前年同月比+142.9%)の倒産が増加傾向にある。
■態様別
・破産は800件超えの高水準
態様別に見ると、破産は811件(前月601件、前年同月742件)で、前月比は34.9%(210件)の増加、前年同月比も9.3%(69件)の増加となり、集計対象を変更した2005年4月以降で、初の800件超えとなる高水準となった。
特別清算は25件(前月22件、前年同月24件)で、前月比は13.6%(3件)の増加、前年同月比も4.2%(1件)の増加となった。一方、構成比は2.8%で、前月(3.3%)、前年同月(2.9%)をそれぞれ下回った。
民事再生法は52件(前月44件、前年同月57件)で、前月比は18.2%(8件)の増加となった。一方で前年同月比では8.8%(5件)の減少となったものの、2006年3月(62件)に次いで今年2番目の水準となった。
■地域別
・近畿、中国で今年最高を記録
地域別に見ると、9地域中、北海道(32件、前年同月比+52.4%)、近畿(266件、同+35.7%)、中国(46件、同+155.6%)、四国(24件、同+4.3%)、九州(67件、同+31.4%)の5地域で前年同月を上回った。
このうち、近畿、中国は、集計対象を変更した2005年4月以降で最高を記録した。とくに近畿は、個人経営を中心とする中小・零細業者の倒産が増加傾向にあり、地域全体の件数を押し上げている。
一方、北陸(23件)は、前月比(△4.2%)、前年同月比(△11.5%)ともに減少となった。
<今後の問題点>
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2006年10月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.2ポイント減の46.3となった。2ヵ月連続の小幅悪化で、2006年3月(47.9)をピークにやや弱含みながら一進一退が続いている。上場企業の堅調な2006年度中間期業績や米経済のソフトランディング期待の高まりが景況感を下支えした半面、原油価格の再騰懸念や金利上昇リスクなどによって国内経済の先行き不透明感が増幅し、デフレ克服が鮮明になるなかでも個人消費の回復に結びつかないことが背景にある。10月の先行き見通しDIの水準が「3ヵ月後」、「6ヵ月後」、「1年後」と先に行くにつれて低くなる傾向が続いているのも、国内経済の先行きに対して懐疑的になっていることを裏付けている。
■それでも政府は、今回の景気回復局面が11月に「いざなぎ景気」の57ヵ月間を超えて戦後最長となることを見込んでいる。各種経済統計・指標では戦後最長の景気回復局面を示しているとはいえ、景気DIでは大企業と中小企業、大都市圏と地方圏、また業種間でも大きな格差が生じており、景気回復は一部の大都市圏、大企業にしか享受されていないのが実状だ。実際、企業にいざなぎ景気超えの実感について尋ねたところ、約8割の企業で「実感がない」ことが判明、地方圏、中小・零細企業を中心に依然として景気回復感に乏しい実態が浮き彫りとなっている。
■こうしたなかで、2006年10月の法的整理による倒産は889件発生し、前月比33.3%の増加、前年同月比も7.8%の増加となり、法的整理のみが集計対象となった2005年4月以降で最高となった。今年に入り、倒産は一進一退を繰り返しながらも中長期的にみると緩やかな増加基調をたどってきたが、その傾向がより鮮明となった。また、負債総額は5660億2900万円で、前年同月比では14.3%減少したものの、前月比では66.5%増と約1.7倍に膨らみ、今年2番目の高水準となった。
■負債5000万円未満の倒産が前年同月比36.1%増、資本金1000万円未満の倒産が同33.6%増、また北海道が同52.4%増、中国が同155.6%増となるなど、規模別・地域別にみると景気回復感の乏しい中小・零細企業、地方圏企業が倒産件数を押し上げている構図が浮かび上がる。前年同月比で倒産件数が増加し、負債総額が減少しているという現象は、小口倒産が増加していることにほかならない。
■一方、このところ1ケタ台にとどまっていた負債100億円以上の大型倒産は10件と9ヵ月ぶりに2ケタ台に増加した。不動産賃貸の(株)東栄(負債630億円、埼玉県)やゴルフ場経営の(株)エス・シー・シー(同486億円、茨城県)などバブル処理案件が引き続き中心だが、ジャスダック上場の総合リース会社、(株)ユニコ・コーポレーション(同891億7000万円、北海道)や非接触型ICタグ製造のベンチャー、(株)先端情報工学研究所(同191億7400万円、東京都)、バイオベンチャーの(株)応微研(同43億円、山梨県)など、実体を伴った企業の倒産が散見され、なかにはコンプライアンス欠如による倒産も発生、大型倒産の中身が変化してきている。
■小泉路線を継承する安倍新政権のもとでは、国内経済を牽引する一部の勝ち組企業が今後も優先される面は否めない。一方で、地方経済の基盤となっている公共工事も財政再建の旗振りのもとでは削減が確実で、規模間・地域間格差は一層拡大する可能性が高い。さらに、地域金融機関の再編や、貸金業法の改正によるノンバンクの融資引き揚げ圧力など、資金繰り面でも中小・零細企業の倒産リスクが高まってくると思われる。資源価格高騰倒産も大型化の様相を呈しながら増加傾向をたどっており、今回の景気回復期間が「いざなぎ景気」を超えると喧伝されるなかでも厳しい環境に追い込まれる企業は後を絶たず、倒産は緩やかな増加基調が続く見通しである。