米ファイザー、禁煙治療薬「バレニクリン」が日本人喫煙者に有効・安全など試験結果を発表
ファイザー社の禁煙治療薬「バレニクリン」
日本人喫煙者における有効性・安全性データを米国心臓病協会年次総会で発表
2006年11月13日、米国イリノイ州シカゴで開催された米国心臓病協会(American Heart Association)の年次総会において、大阪府立健康科学センターの中村正和医師によって、ファイザー社の禁煙治療薬バレニクリンが日本人喫煙者において有効かつ安全であることを示す試験結果が発表されました。
喫煙は肺癌をはじめとする多くの癌、心筋梗塞、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの原因であり、本邦の喫煙による超過死亡数は2000年で11.4万人と推計されており、総死亡数の12%を占めます。喫煙の本質はニコチン依存症という病気であるため、禁煙は容易に達成できるものではなく、科学的根拠に基づいた禁煙治療が必要です。
本試験について大阪府立成人病センターの大島明医師は次のように述べました。「本試験は、日本人を対象に持続禁煙率を用いて禁煙に対するカウンセリングと薬物療法の効果を評価した初めての無作為化比較対照試験です。日本国内で使用できる禁煙治療薬は現在ニコチンパッチとニコチンガムに限られていることから、バレニクリンによって薬物療法の選択肢が拡がり、禁煙治療がさらに普及して世界の中で高いわが国の喫煙率の低下に貢献し、国民の健康に大きな効果をもたらすことが期待されます」。
バレニクリンは、ファイザー社が禁煙治療を目的に発見および開発したニコチン性アセチルコリン受容体に対する選択的な部分作動薬です。本剤は禁煙に伴う離脱症状(禁断症状)およびたばこに対する欲求を緩和し、同時に本剤を服用中に喫煙した際のたばこから得られる満足感を抑制すると考えられています。バレニクリンはこれら2つの作用によって、禁煙の成功率を向上させることが期待されます。
国内で実施された二重盲検プラセボ対照試験において、3つの用量のバレニクリン(0.25 mg、0.5 mg、または1 mg 1日2回)とプラセボの12週間投与を比較しました。また、投与終了後40週間にわたって経過観察を行いました。
618名の日本人喫煙者が治験薬を服用し、このうち515名がニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)によってニコチン依存症であると診断されました。ニコチン依存症の喫煙者における投与終了時の4週間持続禁煙率は、バレニクリン1 mg 1日2回投与で65.4%であり、プラセボの39.5%よりも有意に高い結果となり、バレニクリンのプラセボに対するオッズ比は2.98でした。また、服用開始から1年後における持続禁煙率も、バレニクリンはプラセボよりも有意に高い結果でした。
バレニクリンの忍容性は良好であり、脱落率も低く、プラセボと同程度でした。主な副作用は、吐き気、頭痛、便秘と上腹部痛でした。