理化学研究所と英エジンバラ大学、システムバイオロジー分野などで基本協定を締結
理研ゲノム科学総合研究センターとエジンバラ大学が基本協定締結
-システムバイオロジー分野においてメディカル志向の新しい研究展開を促す-
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)ゲノム科学総合研究センター (榊佳之センター長)と英国エジンバラ大学(ティモシー・オシェ学長)は、平成18年11月21日、エジンバラ大学におけるメディカル志向のシステムバイオロジーと、理研ゲノム科学総合研究センターの基礎研究を有機的に結びつけ広く連携していくため、基本協定を締結しました。エジンバラ大学におけるシステムバイオロジー研究の拠点であるバイオインフォマティクスセンター(イゴー・ゴリアニンセンター長)は、ライフサイエンス、コンピュータサイエンス、その他の物理学を融合することにより学際的な共同研究を推進しており、近年、各自然科学分野におけるインタラクティブなシステムバイオロジーの研究拠点となりつつあります。
一方、理研ゲノム科学総合研究センターは、これまでに構築してきたゲノム、RNA、タンパク質等の生体構成要素の基盤データをもとに、生命システムの統合的な理解を目指してシステムバイオロジー研究に取り組んでいます。
今回のエジンバラ大学と理研ゲノム科学総合研究センターとの連携により、より補完的な研究が期待できます。
協定の名称
「独立行政法人理化学研究所ゲノム科学総合研究センターと英国エジンバラ大学との連携・協力に関する基本協定」
協力内容
双方の研究・人材養成の機能を有効に活用し、共同研究、シンポジウムの開催等を通した連携・協力を行う。人材の相互交流により、システム生物学分野の若手研究者を育成する。共同研究の第1弾として、がんに関するシステムバイオロジーに関する共同研究を検討している。
協定期間
平成18年11月21日~平成23年11月20日
1.背 景
理研ゲノム科学総合研究センターでは、生命を統合的に理解するため、これまでに構築してきたゲノム、RNA、タンパク質等の生体構成要素の基盤データをもとに、RTKを中心的なターゲットとしてシステムバイオロジー研究を開始しました。さらに、平成17年に同センターが中心となってRTKの国際コンソーシアム※1を設立しました。エジンバラ大学は同コンソーシアム参加機関のひとつであり、両機関それぞれが同分野で国内外との連携を展開しています。
2.基本協定の範囲
(1)連携協力の内容
1)人材交流
2)シンポジウム、ワークショップ等の開催
3)共同研究
4)その他本協定の目的を達成するために必要な協力
(2)連携・協力課題
連携・協力する課題を次のとおりとし、別途、個別共同研究契約等を締結するものとします。
1)ゲノム科学
2)システム生物学
3)バイオインフォマティクス
3.今後の期待
ゲノム科学総合研究センターのゲノム科学分野における包括的基礎研究成果を、エジンバラ大学におけるメディカル志向のシステムバイオロジー研究に有機的に結びつけることにより、基礎研究から応用研究への展開が期待できます。
4.各機関概要
エジンバラ大学バイオインフォマティクスセンター
(The Edinburgh Centre for Bio Informatics)
スコットランド・エジンバラ大学はコンピュータサイエンスとインフォマティクス分野ならびにバイオテクノロジー分野での優れた研究成果を背景に、バイオインフォマティックスやヘルスインフォマティックス研究を急速に発展させています。2007年には、総工費4千万ポンドを投じて、最大700人の研究者を収容できる新たな研究施設が完成する予定です。
独立行政法人理化学研究所ゲノム科学総合研究センター
ゲノム科学総合研究センター(センター長:榊 佳之)は、ゲノム科学推進の中核拠点として1998年に設立されました。ゲノムからフェノーム(個体の表現形質)に至る生命活動の各階層を包含する空間をオミックスペースと名づけ、この総合的な視点を主軸に、「生命戦略」の解明を目指しています。遺伝子構造・機能、タンパク質構造・機能、ゲノム機能情報、システム情報研究学、ゲノム情報先端技術、ゲノム基盤施設の6つの研究グループが連携し、個別の階層に重点をおいた研究を展開しながら、インフォマティクスでこれらを統合し、複雑な生命現象を統括する「生命戦略」の全容を捉えようとしています。
所在地: 神奈川県横浜市鶴見区
<補足説明>
※1 RTK国際コンソーシアム
(The international Consortium Systems Biology of Receptor Tyrosine Kinase Regulatory Networks")
疾病やがんの発症に深い関係をもっているチロシンキナーゼ(RTK)を対象として、細胞の生育・分化・増殖に関わる制御系を理解するための国際コンソーシアム。
近年のハイスループットの実験手法の開発やバイオインフォマティックス技術の進展により、個々の遺伝子やその機能解明に対する研究時間は短縮されつつある。しかしながら、細胞の機能は、個々の遺伝子やタンパク質の1対1の関係によってではなく、多分子間の制御バランスによって決定されるため、遺伝子産物や細胞そのもの機能やその制御メカニズムの解明のために、定量的なデータに基づく分子間ネットワークの数理解析が必要である。また、このような細胞システムの定量的理解とモデル化により、ネットワーク制御因子の同定、医薬品候補の同定、病理モデルの構築が加速化できる。