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2024'11.24.Sun
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2007'05.14.Mon

理化学研究所と東京工業大、抗がん剤標的分子の正確な遺伝子発現制御を解明

抗がん剤標的分子の正確な遺伝子発現制御を解明
- 新たな薬剤評価・開発の促進に期待 -


◇ポイント◇
 ●細胞制御をする「ErbB受容体」が遺伝子の発現量を精密に制御
 ●遺伝子発現の制御異常、がん化の一大要因となる可能性大に

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と国立大学法人東京工業大学(相澤益男学長)は、肺がん薬剤や乳がん薬剤などの標的分子で、細胞制御に重要な働きを行っている「ErbB受容体※1」が、細胞内の遺伝子発現量を精密に制御していることを明らかにしました。ErbB受容体の細胞制御の重要性は以前から指摘されていましたが、本研究により、ErbB受容体が考えられていた以上に精密に細胞内遺伝子発現量を制御していることを突き止め、さらに、ErbB受容体の異常が、がんを引き起こす大きな要因となることを示唆しました。これらは、理研横浜研究所ゲノム科学総合研究センター(榊佳之センター長)情報伝達システムバイオロジー研究チームの畠山眞里子チームリーダーおよび東京工業大学情報理工学研究科の下平英寿助教授らの研究グループによる研究成果です。
 ErbB受容体は、動物の細胞膜上に存在する成長ホルモン受容体で、細胞の増殖や分化などを制御することが知られています。ErbB受容体の正常な機能は、細胞が生きるうえで必須ですが、逆に、この受容体に異常が生じると、人のさまざまな種類のがんを引き起こします。この受容体の異常としては、当該遺伝子の過剰発現や分子内のアミノ酸置換変異などがあります。このような経緯から、国内外の製薬企業が、ErbB受容体を標的とした抗がん剤を開発してきました。現在注目されている肺がん剤はErbB1受容体に分子内変異がある肺がん患者に有効であること、乳がん剤はErbB2受容体を過剰発現している乳がん患者に有効であることが、多くの研究によって支持されています。このように、ErbB受容体の異常とがんの発症、またそれに有効な薬剤については、幅広く研究されていましたが、ErbB受容体の遺伝子発現制御の機構については深く知られていませんでした。遺伝子発現データの統計解析を通じた本研究では、細胞膜表面に存在するErbB受容体が細胞核内で起こる遺伝子発現を定量的に精密に制御していること、また、ErbB受容体の活性化強度が遺伝子発現強度に深く反映されることが明らかとなりました。このように定量的な遺伝子発現解析を導入すると、細胞制御機構の解明や、ErbB受容体を標的とした新たな薬剤の評価や開発の促進が期待されます。
 本研究成果は、米国の科学雑誌『ジャーナルオブバイオロジカルケミストリー』の3月号に掲載されるに先立ち、インプレス版(12月1日付け)に掲載されました。


1.背 景
 ErbB受容体は、動物の細胞膜上に存在する成長ホルモン受容体で、細胞の増殖や分化などを制御することが知られています。ErbB受容体の正常な機能は、細胞が生きるうえで必須ですが、逆に、この受容体に異常が生じると、人にさまざまな種類のがんを引き起こすことが知られています。この受容体の異常としては、当該遺伝子の過剰発現や分子内のアミノ酸置換変異などがあります(図1)。このような経緯から、国内外の製薬企業が、ErbB受容体を標的とした抗がん剤を開発しようとしており、すでに肺がんを対象とした抗がん剤としてイレッサ※2、乳がんを対象としたハーセプチン※3が、実用化されています。


2.研究手法
 本研究では、異なるErbB受容体を活性化する2種類の成長ホルモンである上皮成長因子(EGF, ErbB1受容体への結合因子)とヘレギュリン(HRG, ErbB3/4受容体への結合因子)について濃度を変化させ、別々に投与した乳がん細胞を用いて、細胞内のキナーゼ(リン酸化酵素)分子のリン酸化解析およびヒト遺伝子約2万種類の発現を定量的に解析しました(図2)。キナーゼのリン酸化解析には、タンパク質中のリン酸化チロシンを特異的に認識する抗体染色法を用い、遺伝子発現解析には、一枚に約2万の遺伝子を搭載した市販の遺伝子チップ※4を用いました。このように、2種類の成長ホルモン投与によって引き起こされる濃度依存的なキナーゼリン酸化量および遺伝子発現量変化の時系列データを収集し、成長ホルモン濃度と時間に対する遺伝子発現量の変化を統計学的手法で解析しました。


3.研究成果
 解析の結果、成長ホルモンの種類によって、細胞内キナーゼリン酸化および遺伝子発現量の感受性が大きく異なることがわかりました(図3、図4)。特に、数理解析の結果、ErbB2受容体を活性化する成長ホルモンは、実験に用いた乳がん細胞で、低濃度で協調性を持って、ErbB2受容体をリン酸化し、このリン酸化量増大の傾向は、核内の遺伝子発現量にそのまま反映されることが明らかになりました。すなわち、本研究によって、膜表面に存在するErbB受容体が、細胞質内に存在する分子の活性化を経て起こる細胞核内の遺伝子発現を定量的に精密に制御していること、また、ErbB受容体の活性化強度が遺伝子発現強度に深く反映されることが示されました。ErbB受容体の緻密な制御は、細胞の正常な働きに必須であると考えられ、それゆえに、ErbB受容体分子の細胞内の過剰発現や活性量の持続的な増加(変異)ががんのような異常な細胞増殖を引き起こすことが示唆されました。


4.今後の期待
 このような定量的な遺伝子発現解析を導入することによって、ErbB受容体による細胞内の分子活性化の制御をより詳細に調べることができます。特に、遺伝子発現の定量的解析手法を用いることによって、細胞制御機構の解明や、ErbB受容体を標的とした抗がん剤をはじめとする新たな薬剤の評価や開発の促進が期待されます。


*添付資料あり。

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