帝国データバンク、11月の全国企業倒産集計を発表
2006年11月報
倒産件数は754件、前年同月比6.5%の増加
負債総額は3823億4800万円、前年同月比49.7%の大幅減少
・倒産件数 754件
前月比 15.2%減
前月 889件
前年同月比 6.5%増
前年同月 708件
・負債総額 3823億4800万円
前月比 32.5%減
前月 5660億2900万円
前年同月比 49.7%減
前年同月 7603億5900万円
ポイント
■倒産件数は754件、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最高を記録した前月比で15.2%の減少となったものの、前年同月比では6.5%の増加となった。
■負債総額は3823億4800万円で、前月比(△32.5%)、前年同月比(△49.7%)ともに大幅に減少した。
■負債1億円未満の中小・零細企業の倒産が460件(構成比61.0%)で、前年同月比15.9%の増加。このように、小口倒産の増加により、倒産全体の緩やかな増加基調が持続。
■件数
倒産件数は754件。法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最高となった前月(889件)を135件下回ったものの、前年同月(708件)を46件上回った。
前月比では15.2%減少したが、前年同月比で6.5%の増加。これは、負債1億円未満の中小・零細企業の倒産(460件)が前年同月比15.9%増となるなど、小口倒産の増加が主な要因。
倒産件数の推移は一進一退を繰り返しながらも、中長期的にみれば緩やかな増加基調が持続している。
■負債総額
負債総額は3823億4800万円で、前月比(△32.5%)、前年同月比(△49.7%)ともに大幅減少となった。前年同月比で減少したのは3ヵ月連続。
負債額トップは、パチンコ店経営の高山物産(株)(京都府、会社更生法)で、約718億4800万円。次いで、不動産売買の日新開発(株)(兵庫県、特別清算)の約471億円。
負債10億円以上の倒産は56件(前月66件、前年同月50件)にとどまった。また、負債1000億円以上の倒産は6ヵ月連続で発生していない。
■業種別
・サービス業の件数増加
7業種中、建設業(206件、前年同月比+1.5%)、卸売業(108件、同+13.7%)、小売業(127件、同+9.5%)、サービス業(145件、同+31.8%)の4業種で、前年同月比増加となった。
このうち、サービス業は、1月(140件)を上回り、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最高。主な内訳は、土木建築サービス(15件)、ソフトウエア開発(13件)、ホテル・旅館経営(9件)、パチンコ店経営(7件)などで、いずれも前年同月比増加。
構成比で見ると、上位は建設業(27.3%)、サービス業(19.2%)、小売業(16.8%)の順。
■主因別
・「不況型倒産」構成比高い
「不況型倒産」の合計は582件(前月662件、前年同月524件)。前月を12.1%(80件)下回ったものの、前年同月を11.1%(58件)上回った。構成比は77.2%(前月74.5%、前年同月74.0%)で、7月(75.9%)を上回り、今年最高を記録。
また、設備投資の失敗は21件(構成比2.8%)で、前月(16件、前月比+31.3%)、前年同月(12件、前年同月比+75.0%)をそれぞれ上回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
・中小・零細企業倒産が増加傾向
負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は341件(前月415件、前年同月257件)発生し、前月を74件(前月比△17.8%)下回ったものの、前年同月を84件(前年同月+32.7%)上回った。
負債5000万円以上1億円未満(119件、前年同月比△15.0%)と合わせた同1億円未満の中小・零細企業の倒産は460件(構成比61.0%、前年同月比+15.9%)で、全体の60%超を占めた。一方、負債50億円以上100億円未満の倒産は8件(前月8件、前年同月11件)、同100億円以上の倒産は4件(同10件、同8件)にとどまっている。
資本金別に見ると、個人経営(133件、前年同月比+125.4%)、資本金100万円未満(11件、同+450.0%)で、ともに前年同月を上回った。
■態様別
・破産の構成比は90.1%
態様別に見ると、破産は679件(前月811件、前年同月633件)で、前月比は16.3%(132件)の減少となったものの、前年同月比は7.3%(46件)の増加となった。構成比は90.1%で、2006年6月(91.9%)から6ヵ月連続の90%台となった。
特別清算は28件(前月25件、前年同月24件)で、前月比は12.0%(3件)の増加、前年同月比も16.7%(4件)の増加となった。構成比は3.7%で、前月(2.8%)、前年同月(3.4%)をそれぞれ上回った。
民事再生法は45件(前月52件、前年同月50件)で、前月比は13.5%(7件)の減少、前年同月比も10.0%(5件)の減少となった。構成比は6.0%で、前月(5.8%)を上回ったものの、前年同月(7.1%)を下回った。
■地域別
・近畿は前年同月比で大幅増加
地域別に見ると、9地域中、近畿(222件、前年同月比+55.2%)、中国(30件、同+7.1%)、九州(56件、同+14.3%)の3地域で前年同月を上回った。
とくに、近畿は2005年4月以降で最高となった前月を44件(前月比△16.5%)下回ったものの、前年同月比で55.2%の大幅増加(79件増)。これは、サービス業、小売業、卸売業といった業種において、前年同月と比べ、中小・零細業者の倒産が増加したため。
一方、北海道(16件、前月比△50.0%、前年同月比△36.0%)、関東(279件、同△4.5%、同△6.7%)などの4地域は、前月、前年同月をそれぞれ下回った。
今後の問題点
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2006年11月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は45.6となり、前月比0.7ポイント減と3ヵ月連続して悪化。悪化幅も拡大して今年最低水準となり、ここへきて国内経済が弱含んでいることが裏付けられた。景気回復やデフレ克服が個人消費の回復へとつながっていないことが2006年7~9月期のGDP(速報値)で明らかになったことや、上場企業の決算見通しで2006年度下半期の伸び悩みが鮮明となったことで、内需を中心に幅広い業界で景況感が悪化した。先行き見通しDIも、脆弱な個人消費や企業業績の伸び悩みが国内経済の先行き期待を萎縮させる形で大幅に悪化。2007年景気について尋ねたところ約4割の企業が「踊り場」局面と予想しているのも、個人消費や企業収益に対する不安がくすぶっているためだ。
■今回の景気回復は11月に「いざなぎ景気」の57ヵ月間を超えて戦後最長となったといわれている。たしかに各種経済統計・指標では戦後最長の景気回復局面を示しているものの、景気DIは大企業と中小企業、大都市圏と地方圏、また業界・業種間でも大きな格差が生じており、大都市圏、大企業の堅調な業績とは対照的に、中小・零細や地方圏、建設会社などでは未だ業績回復のメドすら立たない企業が少なくないのが実態である。
■こうしたなか、2006年11月の法的整理による倒産は754件となり、法的整理のみが集計対象となった2005年4月以降で最高を記録した前月を15.2%下回ったものの、前年同月比では6.5%増加しており、倒産は一進一退を繰り返しながらも中長期的にみると緩やかな増加基調をたどっている。一方、負債総額は3823億4800万円にとどまり、前月比32.5%減、前年同月比でも49.7%減と、ともに2ケタの減少となった。
■規模別にみると、負債1億円未満の倒産が前年同月比15.9%増、資本金1000万円未満の倒産が同23.2%増となっており、中小・零細企業が倒産件数を押し上げていることがうかがえる。前年同月との比較で「件数増、負債総額減」という現象が続いているのは、中小・零細規模の小口倒産が増加していることに起因している。
■半面、負債100億円以上の大型倒産は前月の10件から4件へ大幅に減少。内訳は旧・住専の大口融資先だった大手パチンコチェーンの高山物産(株)(負債718億4800万円、京都府)と不動産業者3社で、引き続きバブル処理案件が中心であった。しかし、公共工事の減少に苦しむ地方企業の典型的な倒産となった生コン卸の山形建材(株)(負債53億4800万円、奈良県)や、資源価格の高騰により力尽きた鉄骨工事の岩永工業(株)(負債34億8000万円、長崎県)など、中堅以下では実体のある企業の倒産が目立ち始めており、倒産の中身には変化も表れてきている。
■改正独占禁止法の施行に伴う談合事件の相次ぐ発覚により、「脱・談合」が加速。これによって公共工事の落札価格が急落するケースが目立ち始めており、今なお景気回復感の乏しい地場建設会社や中小下請け業者をはじめ、関連業界では既に倒産が増え始めている。こうした流れが今後さらに強まることは避けられず、依然として公共工事が基盤となっている地方経済は一層厳しさを増す可能性が高い。
■また、地域金融機関の再編や追加利上げ、貸金業法の改正による融資引き揚げ圧力など、資金繰り面でも中小・零細企業の倒産リスクが高まるものと思われる。今回の景気回復期間が「いざなぎ景気」を超すなかでも、地方圏企業や中小企業、建設会社を中心に厳しい環境に追い込まれる企業は今後も後を絶たず、倒産は緩やかな増加基調が続く見通しである。