サントリー、植物性乳酸菌「S-PT84」のウイルス感染に対する抵抗性向上作用を確認
京漬物由来の植物性乳酸菌が免疫機能を活性化
ウイルス感染に対する抵抗性を向上
― 植物性乳酸菌"S-PT84"に関する最新の研究成果を日本免疫学会で発表 ―
サントリー(株)健康科学研究所(所長:木曽良信、大阪府三島郡島本町)は、植物性乳酸菌S-PT84株に、免疫機能を活性化し、ウイルス感染に対して早く、強く抵抗性を向上させる作用を見出しましたので、第36回日本免疫学会総会・学術集会(2006年12月11-13日)にて発表しました。
今回の発表骨子は以下のとおりです。
▼発表演題
「植物性乳酸菌S-PT84株摂取によるHVJ感染誘発IFN-α産生増強作用」
発表者:サントリー(株)健康科学研究所 出雲貴幸
●植物性乳酸菌S-PT84株とは
サントリー(株)健康科学研究所が(財)ルイ・パストゥール医学研究センター(理事長:藤田晢也、京都市左京区田中門前町)との共同研究で発見した、京漬物由来の植物性乳酸菌です。約1,000株の乳酸菌の中から有力なもの16株を選定し、そのうちもっとも優れた免疫機能改善作用を有するのが、この"S-PT84"株です。
●HVJとは
HVJ(Hemaglutinating virus of Japan)はパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、パラミクソウイルス亜科(Paramyxovirinae)、レスピロウイルス属(Respirovirus)に属するウイルスであり、わが国で発見されたマウス由来のウイルスです。
【 研究の背景 】
近年、SARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザなど、ウイルス感染に関するニュースが話題となり、ウイルス感染による死亡数も増加しています。また、高齢者が増加する中で、高齢者(60歳以上)の主な直接死因は感染疾患であることが報告されています。
こうしたことから、ウイルス感染に対する予防、治療が注目を集めており、今回このようなリスクを日常の食生活で回避できるか否かを検討することにしました。
サントリー(株)健康科学研究所では、これまでに植物性乳酸菌S-PT84株(以下、S-PT84株)の数々の効能(Th1/Th2バランス改善作用、NK活性増強作用、免疫低下抑制作用、抗アレルギー作用、細菌感染抑制作用)を明らかにしてきました(第34、35回日本免疫学会、第1、2回日本食品免疫学会など)が、今回さらに、ウイルス感染に対する抵抗性について検討しました。
【 試験 】
インターフェロンα(IFN-α)産生増強作用
免疫は病原菌やウイルスをはじめとする外敵から身を守る防御機構として機能しています。その防御機構の一つがインターフェロンα(IFN-α)※であり、その量はウイルス感染抵抗性の指標のひとつとされています。そこで脾細胞から産生されるIFN-αの量を測定することによって、植物性乳酸菌S-PT84株のウイルス感染に対する抵抗性について検討しました。
<実験方法・結果>
マウスを、通常飼料を摂取するコントロール群、S-PT84株を低用量(0.2mg/day相当)配合した飼料を摂取する群、高用量(2mg/day相当)配合した飼料を摂取する群の3群に分け、2週間飼育しました。その後、脾細胞を採取、HVJ(0、0.02又は0.2HA/mL)を感染させ、24時間後に産生されたIFN-αの量を測定しました。
その結果、HVJ刺激がない場合、S-PT84株摂取の有無に関係なく、IFN-α産生は認められませんでした。HVJ 0.02HA/mL感染では、コントロール群、S-PT84株低用量群では反応が認められなかったものの、S-PT84株高用量群ではIFN-α産生が認められました。HVJ 0.2HA/mL感染では、いずれの群でもIFN-α産生が認められましたが、S-PT84株高用量摂取群において、IFN-α産生量が有意に増加し、ウイルス抵抗性が向上していることが明らかとなりました。(図1)
図1 S-PT84株摂取によるHVJ感染誘発IFN-α産生増強作用
(※ 関連資料を参照してください。)
【 結論 】
インターフェロンα(IFN-α)は病原菌やウイルスなどの外敵から身を守る防御機構として機能していますが、S-PT84株を摂取することによってその免疫機能が活性化され、HVJなどのウイルス感染から身体を守ることができる可能性が示唆されました。特に非摂取(コントロール)群が反応できないウイルス量に対しても、S-PT84株摂取群では反応できるようになることから、日常的に摂取することでウイルスに対して早く、そして強く抵抗することができると考えられました。S-PT84株の免疫機能における効果として、その他のウイルスによる感染に対する抵抗性が向上することも期待されます。
※インターフェロンα(IFN-α)とは
体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質であり、ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系の調節などの働きがあります。
▼日本免疫学会について
学術集会の開催等による免疫学及び関連分野の研究等を通してその進歩と発展を図り、国民の医療福祉に寄与することを目的としています。1970年代後半から日本免疫学会員の国際的な活躍とともに、日本免疫学会が国際免疫学会を主催することとなりました。今回の大会は第36回日本免疫学会総会・学術集会となります。
以上