NICT、10ギガビットイーサと80ギガビット光パケット間インターフェースの開発に成功
10ギガビットイーサ/80ギガビット光パケット間インターフェースの開発に成功
― 超高速光パケットネットワークの実用化へ向けて前進 ―
独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT。理事長:長尾 真)は、横河電機(代表取締役社長 内田 勲)とNTTエレクトロニクス(代表取締役社長 戸島 知之)の協力を得て、高速インターネットアプリケーションに用いられる10ギガビットイーサ(10G-Ether)(*1)ネットワークの電気信号と、新世代の超高速光パケット交換(OPS)(*2)ネットワークの信号(80ギガビット)とを相互接続する新しいインターフェースの開発に成功しました。併せて、全光ラベル処理機能を有する光パケットスイッチプロトタイプを介した100km伝送実験に本技術を応用し検証しました。この成功により、光パケットネットワークの超高速性を活かし、かつ汎用性を有するアプリケーションインターフェースが世界で初めて実現しました。実験結果等の詳細は、平成19年3月25日から米国のアナハイム市で開催される光ファイバ通信国際会議(OFC2007(*3))にて発表します。
<背景>
NICTでは、将来の超高速・大容量光ネットワークを実現するために、光ネットワーク上のパケットを光信号のまま高速転送する光パケットネットワークの研究開発を進めています。これまで、宛先ラベルの認識処理を光信号のまま行い、同時に到着する光パケットの衝突を避けるための光バッファと、光バッファを制御するスケジューラを備えた、1入出力ポート当たりの最大データ速度が毎秒160ギガビットの光パケットスイッチプロトタイプの開発に世界で初めて成功した実績(*4)を有しています。
しかし、こうした超高速光パケットスイッチと、高速インターネットとを直接接続するためのインターフェースは存在していませんでした。
<今回の成果>
これまでNICTが世界をリードして研究開発を進めてきた超高速光パケットネットワークを実際のアプリケーションに適用させるための汎用性のあるインターフェース(図1参照)を横河電機およびNTTエレクトロニクスの協力を得て、世界で初めて開発しました。今回開発したインターフェースは、今後需要が増大する遠隔サーバへの大容量データ瞬時転送、超高速大容量の情報伝送を必要とする超臨場感コミュニケーション、スーパーコンピュータ間ネットワーク、そして今後1000万をはるかに越えるFTTHユーザのデータ瞬時転送等のアプリケーションに光パケットスイッチシステムを用いる際、不可欠な技術です。10ギガビットの汎用データを80ギガビットの超高速光パケットに変換することにより、遅延のない超高速なデータ転送とネットワーク資源の有効活用の両立が可能になります。
本技術については、10ギガビットイーサネット形式の電気信号と80ギガビット光パケット信号の相互接続時に、全光ラベル処理機能を有する光パケットスイッチプロトタイプを介した100kmの光ファイバ伝送を行い、パケット損失10-6以下達成を検証しています(図2参照)。さらに3D-HDTVビデオストリーム(*5)実データ信号の伝送実証実験にも成功しました(図3参照)。
今後は光パケット交換技術をネットワークに展開すべく、新世代ネットワークアーキテクチャを設計するためのツールとして活用し、ネットワーク機器ベンダーと連携することによりNICT発の標準化と実用化を目指します。
●補足資料
図1 光パケットスイッチと開発インターフェースの適用概念図
図2 実験評価系
図3 システム構成
(※ 関連資料を参照してください。)
【用語解説】
(*1)10ギガビットイーサネット
IEEEにて標準化された通信方式。開発したインターフェースでは、光ファイバケーブルを媒体に用いた10GBASE-LR、10GBASE-SRという規格の毎秒10ギガビットのイーサネット信号を処理できる。イーサネットは以前はLANの通信方式であったが、最近ではギガビットを越えるものは広域ネットワークでも用いられるようになっている。
(*2)光パケット交換(OPS)
情報信号をパケット(小包)と呼ばれる小さな単位毎に宛先情報(ラベル)をつけて送信し、宛先情報に基づいてパケット毎に交換処理を行うパケット交換ネットワークにおいて、パケット信号を電気信号に変換することなく光信号のまま交換処理する技術。
(*3)OFC2007
Optical Fiber Communication Conference
毎年2月~3月に米国で開催される光デバイス・光通信・光ネットワーク関係の世界最大の国際会議。
(*4)160ギガビットの光パケットスイッチプロトタイプの開発に世界で初めて成功した実績。
参照URL http://www2.nict.go.jp/w/w112/index-j.htm
(*5)3D-HDTVビデオストリーム
3次元立体映像を表示するために、2台の撮像カメラで左右の目に対応した映像を取得し、データとして流したもの。映像の画質は、HDTV(High Definition Television:高解像度テレビ)に対応。