エーザイ、FDAから血液凝固阻止剤「フラグミン」の効能・効果追加承認を取得
血液凝固阻止剤「フラグミン(R)」、FDAより
がん患者における静脈血栓塞栓症再発抑制の効能・効果追加承認を取得
エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)の米国事業会社エーザイ・インク(本社:ニュージャージー州、会長:清水初)が販売する血液凝固阻止剤「フラグミン(R)」(一般名:ダルテパリンナトリウム)は2007年5月1日(米国東部時間)、がん患者における静脈血栓塞栓症(以下、VTE)の再発抑制の効能・効果についてFDA(米国食品医薬品局)の追加承認を取得しました。これにより、「フラグミン(R)」は、がん患者のVTE再発抑制を目的とした症候性静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺塞栓症)の治療に使用できる初の薬剤となります。
今回の追加承認は、急性深部静脈血栓症および肺塞栓症を発症したがん患者672人を対象に行った6カ月間投与によるCLOT.試験のデータに基づいたものです。この試験の結果、「フラグミン(R)」投与群は、ワーファリンナトリウム(VTEの長期治療の標準薬として長年使用されてきた経口抗凝固剤)投与群に比べ、深部静脈血栓症および肺塞栓症の再発率において統計的に有意な低下を示しました。
VTEは、がんに多く見られる合併症で、がんを発症していない場合に比べてVTEが発症する危険性が高いとされています。また入院などにより運動機能が制限されることもあるため、VTEにかかりやすい傾向があります。
当社は、がん領域を重点領域のひとつとして位置づけています。2006年10月に米国・ライガンド社(本社:カリフォルニア州、社長:ヘンリー・F・ブリッセンバッハ)の抗がん剤4品目の製品買収を行い、また本年4月には抗体医薬を専門とするモルフォテック社(本社:ペンシルバニア州、社長:ニコラス・ニコライデス)を買収するなど、がん領域への本格的参入をはかるとともに、有望な自社抗がん剤の開発促進やマーケティング体制整備など、さまざまな取り組みをグローバルに展開しています。
今回の「フラグミン(R)」の追加承認を通し、当社はがん領域でのさらなる製品ラインの拡充を図り、患者様とそのご家族の方々のベネフィット向上に貢献してまいります。
以 上
【参考資料】
1.FDAに申請した臨床試験結果の概要
今回の追加承認は、急性深部静脈血栓および肺塞栓症(両疾病を併発しているケースを含む)と診断されたがん患者672人を対象に行った6カ月間投与によるCLOT試験*のデータに基づいたものです。
CLOT試験では、対象となった患者を無作為に二つのグループに分け、一方に「フラグミン(R)」を、もう一方にワーファリンナトリウム(VTEの長期治療の標準薬として長年使用されてきた経口抗凝固剤)をそれぞれ6カ月間投与しました。
この試験の結果、1日1回の「フラグミン(R)」投与により、がん患者の深部静脈血栓症および肺塞栓症の再発率がワーファリンナトリウムに比べ52%と低くなり、統計的に有意に抑制されたことが示されました(p=0.002)。また、抗凝固剤の副作用のひとつである大出血の発生率は「フラグミン(R)」で5.6%、ワーファリンナトリウムで3.6%でした。なお、CLOT試験の結果は、「ザ・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(the New England Journal of Medicine)の2003年7月10日号で発表されました。
※the Randomized Comparison of Low-Molecular-Weight Heparin versus Oral Anticoagulant Therapy for the Prevention of Recurrent Venous Thromboembolism in Patients with Cancer(CLOT):がん患者様におけるVTE再発抑制に関する低分子ヘパリンおよび経口抗凝固剤のランダム化比較試験
2.用語解説
○静脈血栓塞栓症(VTE:Venous Thromboembolism)
深部静脈血栓症と肺塞栓症を併せた総称です。肺塞栓症のほとんどのケースが深部静脈血栓症に起因しているため、二つの疾病を一つの疾病として静脈血栓塞栓症と呼ばれています。
○深部静脈血栓症
深部静脈血栓症は大静脈の血栓によって引き起こされ、壊れた血栓が肺に移行すると肺塞栓症を引き起こします。深部静脈血栓症の兆候は通常、一肢に現れ、痛み、圧痛、膨れ、発赤を合併します。しかし、この病気と診断された患者の半数は全く兆候を示しません。
○肺塞栓症
肺塞栓症は壊れた血栓が肺動脈あるいはその分枝を閉塞し、肺動脈循環障害を来たした状態で、場合によっては死に至る可能性のある疾病です。主な兆候は呼吸時の息切れや胸痛です。深部静脈血栓症の約3割は、血栓が肺に移行して肺塞栓症を発症するといわれています。