ローム、カーナビ・車載モニター用リアルタイム動画エンジンLSIを開発
カーナビゲーション、車載モニタ用リアルタイム動画エンジンLSIを開発
半導体メーカのローム株式会社(本社:京都市)はこのほど、カーナビゲーション、車載モニタなどのLCDディスプレイ搭載機器向けに、動画像をリアルタイムに補正し大幅に視認性を向上できる、リアルタイム動画エンジンLSI「BU1573KV」を開発。この「BU1573KV」は、セキュリティカメラ用「BU1570KV」(量産中)向けに開発したハードウェアエンジン「AIE」(Adaptive Image Enhancer)をコアに採用し、さらにディスプレイに最適な新画像処理機能を業界で初めて1チップに集積した製品です。2007年6月からサンプル出荷(サンプル価格:1000円)を開始し、2007年10月から当面月産50万個の規模で量産を始めます。前工程をローム本社(京都市)、後工程を、ROHM INTEGRATED SYSTEMS(THAILAND)CO.,LTD.(タイ)で行います。
テレビ放送が世界規模でアナログ放送からデジタル放送に移行するなか、カーナビゲーションや車載モニタなどのLCDディスプレイ搭載のポータブル機器でも動画コンテンツを視聴する機会が急速に増えています。しかしこの一般の動画コンテンツを屋外で視聴すると周囲光の影響を大きく受け、画像は明るすぎる部分や暗すぎる部分が生じディスプレイ上で視認性が著しく悪化する場合がありました。今回ロームが開発した「BU1573KV」は、画像データの全体の輝度を一律に変えるのではなく、明るすぎる部分と暗すぎる部分を高度な画像補正アルゴリズムにより選択的に輝度補正を行うインテリジェントなAIE機能を搭載。またRGB18/16bitデータフォーマットに対応したRGB LCDインターフェースを内蔵することでWVGA+サイズまでのLCDディスプレイで実際に「人の目」で見たような優れた画像視認性を実現できます。また前段からの入力もRGB18/16bitデータフォーマット対応のため、既存のシステムを変更することなく容易にシステムを構成できます。加えて「BU1573KV」」は、テロップや字幕の輪郭がシャープに見えるエッジ強調やLCDディスプレイの輝度特性に合わせ込むガンマ補正、そしてLCDバックライトの調光に必要なPWM信号を生成するジェネレータといった機能までも内蔵し、ワンランクアップの動画表示を実現します。
また低消費電力リアルタイム動画エンジンLSI「BU1573KV」は、完全ハードウェア処理の専用画像補正LSIのため消費電力が1.5mW(QVGA 15fps処理時)と小さく、バッテリ駆動時間を長く持てるのも特長です。
《「BU1573KV」の主な特長》
1.AIEコア技術で動画のフレーム毎に、画像に最適な補正効果を実現
2.人の目で見るような全体イメージを再構築し、見やすいクッキリ画像を実現。
3.カラーコレクション機能を内蔵し色鮮やか画質を再現
4.QCIFサイズ(176×144dot)から最大WVGA+(864×480dot)までの画像データに対応
5.CPUバスインターフェースまたはRGBインターフェースに対応
6.入出力データフォーマットは18/16bitに対応
7.動作モードは画像エンハンストモード、アナリシスモード、スルーモード、スリープモード
8.CPUバスインターフェースによる間接アドレッシングまたはI2Cにてレジスタ設定可能
9.LCDバックライト制御用PWM出力
10.エッジ強調フィルタ、ガンマフィルタ内蔵
ロームは独自の画像補正技術で開発したハードウェアエンジン「AIE」をコアに、今回のLCDディスプレイ搭載機器向け以外にもプリンタ向け、セキュリティカメラ向けなど専用画像補正LSIのラインアップ充実を行ってまいります。
◆用語説明
1.「AIE」(Adaptive Image Enhancer)
ロームのハードウェアによる画像処理技術。映像信号に対してリアルタイムにそしてアダプティブに補正を行います。
「AIE」コアの中枢は、輝度判別、画像エンハンス、カラーコレクションの3つのブロックで構成され、輝度判別ブロックでは映像信号に応じて補正量を自動計算し以降のブロックでの処理に反映されます。画像エンハンス、カラーコレクションブロックでは、映像信号の輝度信号、色信号に対してAIE独自のアルゴリズムに従い処理を行って大きく視認性を向上し、実際にその場で「人の目」で見たような映像に改善させます。
2.アルゴリズム
ある特定の目的(計算)を達成するための演算の組み合わせ方法をアルゴリズムといいます。
3.QCIF
ITU(国際電気通信連合)が定めた映像信号フォーマットの標準の1つで、176×144dotの映像を映し出します。携帯電話のビデオ撮影機能に使用されています。
4.WVGA+
画面の表示能力(解像度)を示す標記のひとつです。もともとVGA(640×480dot)という画面表示の規格があり、それを横に広げたWVGA(800×480dot)の規格に対し、16:9のワイド画面表示を可能にしたもので、一般的に864×480dotが用いられています。
5.CPUインターフェース
CPUインターフェースには、80系と68系の2タイプがあり80系はインテル社のCPUとのインターフェースの名称。
68系はモトローラ社CPUとのインターフェースとの名称。80系はCSB(チップセレクト)、WEB(ライト)、RDB(リード)とデータ線で、また68系はCSB(チップセレクト)、W/R(リードライト)、EN(コントロールイネーブル)とデータ線でやり取りします。
6.RGBインターフェース
赤:(Red)/緑:(Green)/青:(Blue)の3原色をもとに画像を表示する出力画像信号方式。カラーモニタやテレビなどは、RGB方式で色調を表現します。RGBデータ信号線の他に水平同期信号:H/垂直同期信号:V/ドットクロックでインターフェースを構成しています。例えば、各色に8bitが割り当てられた24bitのRGB信号では、16,777,126色が、そして8bitでは256色が表現できます。
7.エッジ強調
画像の輪郭部や濃度勾配を急峻にし、画質をシャープにする処理。
8.γ(ガンマ)補正
CRTやLCDディスプレイの特性として、入力電圧の上昇に対して、表示輝度(明るさ)は正比例には上昇しません。(曲線的に上昇します。)これを補正するのがγ補正です。液晶モニタでは、CRTと互換性を持たせるためCRTと同じような特性をもつよう補正を行っています。画像の黒い部分が黒つぶれしたり、明るい部分が白とびして見えにくい場合や微妙な中間域の色再現性が正確でない場合に、諧調を調整することで見やすくします。
※製品写真は添付資料を参照