野村総研、2012年までの三次元仮想世界の進展を予測した「ITロードマップ」を発表
2012年までの三次元仮想世界の進展を予測した
「ITロードマップ」を発表
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、社長:藤沼彰久、以下「NRI」)は、2012年までの三次元仮想世界の進展を予測した「ITロードマップ」(※1)を発表します。
一般家庭におけるブロードバンドネットワークの普及が進み、PCの性能が向上したことを背景に、米国リンデンラボ社の「Second Life」に代表されるような三次元仮想世界の利用が拡大傾向にあります。「三次元仮想世界」とは、ネットワーク上のサーバが作り出す三次元の仮想空間を指し、「メタバース(Metaverse)」(※2)とも呼ばれています。
新たに登場しつつある三次元仮想空間の特徴として、仮想世界の内部で利用者によって作られるコンテンツ(UGC:User Generated Content)が商品として、仮想通貨を介して流通している点が挙げられます。また、一般のウェブサイトとは異なり、利用者は「アバター」と呼ばれるCGのキャラクターを通して仮想世界内部のモノや商品を自由に動かしたり、他のアバターとのチャットや買い物を楽しむなど、さまざまな仮想体験ができます。
三次元仮想世界のロードマップ
※ 関連資料参照
■2008年までは、普及のすそ野が広がる三次元仮想世界
三次元仮想世界では、利用者によってUGCが作られて仮想世界全体のコンテンツ量が増えていくと、それが呼び水となって利用者が集まると考えられます。利用者の増加はUGCのさらなる増加を招き、その結果、利用者の拡大とコンテンツの増加の好循環が生まれやすくなります。これにより、仮想世界の提供会社は、大量の利用者情報を保有するマーケティングのフロントサイドとしての役割を担うようになると考えられます。仮想世界の黎明期にあたる2008年までには、三次元の特性を活かしたマーケティング手法や仮想世界内部でのビジネスの可能性が模索される段階と位置づけられ、おもに商品プロモーションや企業から消費者への情報提供など、実験的な活用が始まると考えられます。
■2009年から2010年に、三次元仮想世界を活用したビジネスが本格化
2009年から2010年にかけて、グラフィックス性能が向上したPCが普及し、消費者による三次元仮想世界の利用が進むと、仮想世界を活用したビジネスが本格化すると予測されます。これに伴い、仮想世界を活用した電子商取引の基盤構築とマーケティング手法の確立がこの時期に期待されます。従来のウェブサイトとは異なる顧客の導線設計や、顧客行動の分析手法などが検討されると考えられます。
さらに、ポルノやカジノなどの現実社会で規制されている産業が仮想世界でも拡大する可能性を考慮すると、仮想世界に対する法整備の検討が必要になると予測されます。
■2010年以降は、消費者ニーズに応じた多様な仮想世界の誕生と並存
2010年以降には、三次元仮想世界をつくるためのサーバソフトのオープンソース化が進展し、誰でも仮想世界を容易に作ることが可能になると予測されます。それにより、消費者のニーズに応じて複数の仮想世界が並存する「マルチバース(Multiverse)」(※3)時代の到来が期待されます。マルチバース時代においては、利用者のニーズの違いに応じて多様な仮想世界が並存し、たとえば、自由なコンテンツの創造と流通を重視した仮想世界や、企業が提供する満足度の高い仮想体験ができる仮想世界などが考えられます。
企業にとっては、目的に応じて複数の仮想世界に参入することで、仮想世界の活用が広がると期待できます。また、仮想世界間でのコンテンツの再利用や仮想通貨同士の交換などの相互運用性が確立されていくと考えられます。
※1 ITロードマップ:IT戦略の意思決定を支援することを目的に、5年先までの情報技術を予測したNRIの技術見通し。NRIの技術調査部が半期ごとに公表している。
※2 メタバース:三次元仮想世界が物理的には存在しない抽象的な世界であることから、現実世界を表す“Universe”に、「抽象的な」という意味を持つ接頭詞“Meta”を加えて作られた言葉。
※3 マルチバース:メタバースが複数存在する状態のこと。“Multi Metaverses”の省略形。