横河電機、毎秒160ギガビット光信号を品質劣化なしに切り替え可能なことを確認
毎秒160ギガビット光信号を品質劣化なしで超高速切り替え
- 次世代光ルータ向け光ルータコアサブシステムの性能を実証 -
横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:海堀 周造)は、独自の超高速光スイッチ技術を応用した「光ルータコアサブシステム(超高速光回線交換機)」を開発し、光通信に用いられる毎秒160ギガビットの光強度変調信号※をはじめ、毎秒40ギガビットのDQPSK(差動4値位相変調)信号※、同DPSK(差動2値位相変調)信号※、10ギガイーサネットを変調速度、変調方式に関係なく切り替え可能なことを実証実験で確認しました。
このコアサブシステムは、導入が始まったNGN(次世代ネットワーク:Next Generation Network)の発展につれて必要とされてくるカットスルー型光ルータの実現に不可欠な要素技術です。この技術の実用化により、従来の電気処理を用いた場合に比べ消費電力が100分の1程度にまで削減できると見込まれます。さらに、光ルータ(光交換機)だけでなくスーパーコンピュータのノード間通信などにも応用できると考えています。
当社は、今後「光ルータコアサブシステム」の実用化に向け、さらなる開発に取り組んでいく予定です。
なお、当社は、この成果を6月13日から15日まで幕張メッセで開催されるInterop Tokyo 2007で展示します。
【 開発の背景 】
各家庭と通信事業者のローカル局とを直接光ファイバーで接続する光アクセス網(FTTH)が本格的に普及し始め、通信事業者の基幹系ネットワークでもNGNの構築が始まりました。NGNは、中・近距離都市間の通信回線容量のバランスを柔軟に変更して回線負荷を分散できるように、50ミリ秒以内に光回線を切り替えることができるように設計されています。
NGNが今後発展を続けると、このような通信回線容量の制御がさらに高度化し、光信号を電気に変換することなく、パケット単位で光回線を切り替えることのできるカットスルー型光ルータが主流となると言われています。
【 実証した技術 】
横河電機では、独自に開発した超高速光スイッチを応用した「40Gbit/s光パケットスイッチ」を2004年2月に発表して以来、コア技術である光スイッチの性能改良および光スイッチを用いたアプリケーション開発に取り組んで来ました。
当社の光スイッチは、化合物半導体に電流を流すと電流が流れている部分の屈折率が変化する現象(プラズマ効果)を利用し、薄い層状に電流を流すことで光導波路中に鏡に相当する面を創出して光を全反射させて経路を切り替える方式を採用しています。このため、消光比・切り替え時間の波長依存性が無いだけでなく、入力される光信号の変調レートや変調方式による制限が原理上ないと考え、検証・評価を進めて参りました。
今回は、開発した「光ルータコアサブシステム」で実際に毎秒160ギガビットの光強度変調信号、毎秒40ギガビットのDQPSK(差動4値位相変調)信号、同DPSK(差動2値位相変調)信号、10ギガイーサネット信号の4種の光変調信号を用いた光回線切り替え実験を行い、原理通りビットレート、変調方式によらず本サブシステム通過による光信号の劣化がほとんど無いことを確認しました。
当社では、今回の実証結果により、将来の光ルータの骨格をなす光回線交換部の要素技術が確立したと考えています。
【 今後の展開 】
今回開発した「光ルータコアサブシステム」のシステムとの整合性の向上ならびに周辺サブシステム(制御サブシステムなど)の拡充を図り、2010年をめどに商用機を市場に投入するべく開発を進めます。
以 上
※光通信の変調方式について
光強度変調:0と1で構成されるデジタル信号を光のオフとオンの状態で表すようにした変調方式。原理的に構成が簡単なため従来から最もポピュラーな光通信方式として使用されてきた。しかし、通信速度が速くなると長距離通信が難しくなる欠点があり、毎秒40ギガビット以上では短距離通信向けが主な用途になると考えられている。
DPSK:光が電磁波の一種であること利用してデジタル信号を光の位相の状態(0degと180deg)で表すようにした変調方式。受信側で連続する2ビットの位相差を光干渉の原理を用いて検出することによりデジタル信号を復調することができる。光強度変調方式の欠点を克服し、毎秒40ギガビット以上の高速通信でも長距離通信が可能である。
DQPSK:デジタル信号を表すのに4つの光の位相の状態(0deg、90deg、180deg、270deg)を用いる変調方式。1回の変調で4値(=2ビット)を表現できるため、DPSKと同じ通信速度を実現するのに必要な変調速度が半分で済むという利点がある。そのためDPSKと比較してより長距離の通信が可能である。ただし、DPSKに比べて送受信器の内部構成はかなり複雑になる。