富士経済、外食産業の14分野126業態の市場動向調査結果を発表
外食産業126業態の市場調査を総合分析
―外食産業(中食を含む)市場は06年33兆5,412億円(前年比0.4%増)見込み―
●すし4業態は06年1兆6,014億円(前年比1%増)見込み、2010年1兆6,510億円(05年比4.1%増)を予測
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、05年4月から7月にかけて外食産業の14分野126業態の市場動向を調査した。このたびその調査を基にして外食業界の総合分析、有力ベンチャー企業30社の企業研究などを中心に報告書「外食産業マーケティング便覧2006総括編」をまとめた。
主な収載内容は、
(1)全国外食企業1,000社のビジネスデータリスト
(2)外食市場の将来を担う注目ベンチャー企業30社の企業事例
(3)有力チェーンのエリア別シェアと店舗展開状況をまとめた「外食産業エリアマップ」
<注目される外食産業の動向>
2006年の売上高が高成長すると見込まれるチェーンは、全体的に高価格メニューや高度なサービスによって成長しているチェーンが多い。しかし単なる高価格メニューではなく、斬新な接客サービスを合わせて付加価値を高める手法が増えている。2006年9億円の売り上げが見込まれる「コールド・ストーン・クリーマリー」は、客前で歌いながらアイスクリームをミックスする演出で消費者を惹きつける(05年比30倍)。「椿屋珈琲店」は、コーヒー一杯1000円前後のメニュー価格とそれに見合う付加価値の高いサービスを提供することで2006年15億円(前年比25%増)を見込み新たな高級喫茶店市場を確立しつつある。
90年代半ばから2000年頃、既に巨大な売上規模に成長した「ガスト」、「マクドナルド」、「吉野家」などの低価格チェーンは2ケタの伸びを続けていた。そして2006年の低価格チェーンは、「カレキチ」が9億円(前年比2.1倍)、「中華そば日高屋」が156億円(前年比21%増)、「無添くら寿司」が410億円(前年比19%増)、「あきんど、スシロー」が515億円(前年比16%増)見込みなどが成長途上にある。
126業態の中から、2つの分野を取り上げてその市場性、動向を見た。
(1)すし4業態(回転ずし、テイクアウトずし、宅配ずし、すし専門店)
06年見込み1兆6,014億円(前年比1.0%増)10年予測1兆6,510億円(05年比4.1%増)
すしは日本人に馴染みが深く専門料理店として古くから大規模な市場を形成してきた。しかし価格が高い点や魚介の提供価格が時価であり価格が表示されないなどファミリー向きではなかった。70年代はテイクアウトずし、80年代は回転ずし、90年代は、宅配ずしなど手頃で明瞭な価格体系によってすしの敷居を下げた業態に需要が集まった。しかし同時にCVSや量販店デリカにおけるすしメニューの本格化とバリエーションの拡大などで競合が激化してこの4業態はマイナス推移を辿った。
そして今、安さが魅力で低価格の回転ずしチェーンが好調に推移している他、ワンランク上の高付加価値メニューを提供するチェーンが見られるなど、他の業態の良い面を取り入れていく動きも進んでいる。この回転ずしが牽引して2002年からは市場全体の売上高は拡大を続けている。対面のすし業態においても価格を明示したり、一皿105円など低価格で提供するチェーンが台頭している。
回転ずしトップ企業のカッパ・クリエイト(06年685億円見込み)は近年大型店舗や都心立地への出店を中心に行っており、新規出店によって実績を拡大している。関西に大きなシェアを持つあきんどスシローは、鮮度管理の徹底と低コストを維持するシステムによる値頃感のあるメニューを強みとしており、関東圏への出店を加速して実績を拡大している。
(2)コーヒーショップ4業態(低価格型、高価格型、喫茶・コーヒー専門店、多毛作型)
06年見込み1兆3,273億円(前年比1.2%増)10年予測1兆3,645億円(05年比4.0%増)
この市場は、フルサービス型の喫茶・コーヒー専門店によって市場が形成された。その後80年代に入ると、コーヒー1杯300円前後の市場にドトールコーヒーが1杯150円という低価格で参入して消費者に支持され実績を拡大した。1996年に「スターバックスコーヒー」が出店されると、海外のカフェブランドが相次いで日本に持ち込まれてカフェブームを巻き起こした。その後、最大市場の喫茶・コーヒー専門店の不調によって市場は減少したが、2002年には高価格型コーヒーショップが低価格型コーヒーショップを抜き、以降も2桁成長を続け、低価格・高価格型のコーヒーショップが市場を牽引し、僅かながら拡大推移を遂げている。
市場の80%を占める喫茶・コーヒー専門店はセルフ型のコーヒーショップへ需要が流出してマイナス推移を辿っている。しかし、"非日常の空間"をコンセプトに、高付加価値メニューとサービスを充実させた東和フードサービスの「椿屋珈琲店」など、セルフ型との明確な差別化によって拡大を果たすチェーンも見られる。
低価格型コーヒーショップと高価格型コーヒーショップは、懸念された需要の奪い合いも見られず、異なる客層を獲得して着実に成長している。また、ルノアールや珈琲館などフルサービス型の業態がセルフ型に転換する動きが出ていることも拡大の要因となっている。
<調査結果の概要>
富士経済が定義する外食産業市場は料理品小売業(中食市場)も含む広義の外食産業を対象としている。2004年で約25兆円という外食産業総合調査研究センターや日本フードサービス協会によって公表されている狭義の外食産業とは数値が異なる。
1.外食産業全体市場の動向(14分野126業態)
05年33兆4,145億円、06年見込み33兆5,412億円(前年比0.4%増)
外食産業の全体市場は、2005年にほぼ横ばい、2006年には微増に転じる見込みで、98年以来8年間に亘る縮小推移に終止符を打つと思われる。一般的に外食産業は不況に強いといわれ、市場が成熟していない90年代半ばまでは景気に関係なく高成長を遂げてきた。バブル崩壊後も高級店などが打撃を受けつつも、トータル市場としては低価格チェーンの台頭などで微増を維持していた。90年代後半から本格的な景気後退が始まると98年に初の市場縮小を喫し、以来マイナス成長を余儀なくされた。しかし、景気が上向けばやや遅れて外食産業も再拡大に転じる見込みである。成長期には景気に関係なく拡大を続けた外食産業も、成熟期を迎え景気の動向と一致して来ている。
2005年、2006年の外食産業全体の市場再拡大の要因としては客単価の上昇と、中食市場の増加そしてBSE、鳥インフルエンザによる客離れの終焉が挙げられる。
●客単価の上昇
98年以来の縮小期はデフレとの闘いであった。消費者の低価格ニーズをうまく捉えて圧倒的な価格競争力を実現したチェーンは大きく成長したが、消費者の飽きも早いために縮小や横ばいに転じた業態も多い。値下げは行わなくても低価格帯メニューに注文が集中するなどによって客単価は下降を続けていたが、2005年頃から全体的に上昇に転じた業態が多い。今回調査において客単価増減分析が可能な99業態のうち、客単価が上昇したのは35業態、横ばいであったのは39業態、下降したのは25業態であり、上昇が下降を上回った。消費者の財布のひもが緩んだことに加えて、回復基調を敏感に捉えた外食企業側が客単価を上昇させる施策を行っていることも大きい。
(1)ファーストフード
最大のボリュームを持つハンバーガーは、圧倒的なシェアの「マクドナルド」が低価格路線から脱却を図っている。2005年は集客優先のために"100円マック"による価格訴求を行ったものの、2006年はメニューミックスによって客単価を引き上げる戦略に転換している。牛丼、立ち食いそば・うどんなどでも3年前と比べて客単価が上昇傾向をみせる業態が多い。従来のファーストフードイメージを払拭すべく、参入企業がメニューの品質向上やセットメニューによる値頃感の訴求といった施策を着実に成果に結びつけている。
(2)テイクアウト
成長が続く中食市場にあって、デリカショップやCVSデリカ、量販店デリカなどは日常生活に即したリーズナブルな価格が前提となってきた。しかし、競争の激化から店舗間での差別化を図る動きが活発化、メニュー品質を高めることで需要の取り込みを図っている。消費者側も品質の向上を伴う価格の引き上げであれば受容性は高く、客単価の上昇と同時に市場規模の伸びも続いている。一方で、それまで"高級感"を訴求して付加価値の高いメニューを求める消費者の需要を取り込んできた百貨店デリカでは客単価の低下が見られる。業態自体の新奇性が薄れたことや、品質を向上させたデリカショップやCVSデリカ、量販店デリカへの需要流出が少なからず影響している。
●中食市場の増加
2005年 対前年比 2006年見込 対前年比
外食産業(狭義) 26兆4,143億円 99.9% 26兆4,731億円 100.2%
中食産業 7兆 3億円 100.7% 7兆 682億円 101.0%
中食産業を除いた狭義の外食産業は、2005年は前年比99.9%、2006年は前年比100.2%であり、これに対して中食であるテイクアウトとホームデリバリー・ケータリングは、2005年対前年比100.7%、2006年対前年比101.0%に伸びている。好調な中食に外食需要が奪われているためであるが、2006年も依然として中食が拡大し、さらに外食が成長したことからトータルで拡大につながると見込まれる。
●BSE、鳥インフルエンザによる客離れの終焉
ここ数年は、BSE、鳥インフルエンザなどが外食産業にとって大きな痛手となっており、依然として影響が残っているが、消費者の敬遠、買い控えなどは以前のようなヒステリックな反応は減少している。2006年8月の時点で、大半の企業はアメリカ産牛肉の使用について様子見の段階で、世論や消費者の反応を確認しながら徐々にアメリカ産に移行していくと見られる。消費者の過剰なアレルギー反応を恐れていることもあるが、価格と供給量が不透明であるために現段階では明言できない側面もある。
BSEや鳥インフルエンザによって消費者が不信感から牛肉や鶏肉を敬遠し、これに代わった業態やメニューが登場して人気となった例もある。ジンギスカン料理、豚肉料理などの業態はBSE騒動以降に急成長し、牛丼チェーン各社が牛丼の代替メニューとして投入した「豚丼」も市民権を得た。
・豚肉料理・・・以前は脂肪分が多いなどのマイナスイメージが強かったが、豚肉のヘルシーさが見直されたことと、牛肉の代替需要によって専門店が増加。またイベリコ豚、白金豚、和豚もち豚などのブランド豚が増加したことも一因。
<調査方法>
当社専門調査員による、既刊の外食産業調査報告書「外食産業マーケティング便覧2006(上・下巻)」の資料と関係各方面の公表データの分析および関係企業、官公庁の聞き取り結果を参考にしてまとめた。
報告書「外食産業マーケティング便覧 2006(上・下巻)」の収載分野と業態数
「上巻」
≪A.ファーストフード≫(20業態)≪B.テイクアウト≫(11業態)≪C.ホームデリバリー≫(8業態)
≪D.料飲店≫(9業態)≪E.交通機関≫(5業態)≪F.レジャー施設≫(10業態)
「下巻」
≪G.ファミリーレストラン≫(11業態)≪H.喫茶≫(11業態)≪I.西洋料理≫(11業態)
≪J.日本料理≫(11業態)≪K.東洋料理≫(5業態)≪L.エスニック料理≫(3業態)≪M.給食≫(6業態)
≪N.宿泊宴会場≫(5業態)
調査時期:上・下巻の個別市場調査は、2006年4月~7月に実施
総括編調査は、2006年7月~8月に実施
以上
資料タイトル :「外食産業マーケティング便覧2006総括編」
体 裁 :A4判 205ページ
価 格 :80,000円(税込84,000円)
調査・編集 :富士経済 東京マーケティング本部 第一事業部
TEL03-3664-5825 FAX03-3661-6140
発行所 :株式会社 富士経済
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