米ファイザー、「チャンピックス」を禁煙治療薬として欧州委員会が承認
ファイザー社の「チャンピックス(R)(一般名:バレニクリン)」
禁煙治療薬として欧州委員会が承認
ニューヨーク、9月29日付 -ファイザー社は、本日、欧州委員会(EC)がチャンピックス(一般名:バレニクリン)を承認したと発表しました。バレニクリンは禁煙のための新規の医薬品です。さらに、喫煙者が禁煙に成功するためには十分な禁煙支援の提供が必要なことから、バレニクリンは患者さんを支援するためのプランと併せて発売されます。このプランは喫煙者が禁煙を試みる際,喫煙の誘惑に打ち勝てるよう、患者さん各々がカスタマイズして使用することが可能です。
喫煙は慢性・再発性の病気であり、身体的・心理学的なニコチン依存を伴います。欧州だけでも、毎年120万人以上が喫煙関連疾患で死亡しています。健康への悪影響のみならず、喫煙には有意な社会的・経済的コストが関与します。世界保健機関(WHO)は、タバコ関連疾病の年間のグローバルコストは2010年までに約5,000億ドルに達し、うち欧州が少なくとも1,650億ドルを占めるものと予想しています。大半の喫煙者は喫煙に重大な健康リスクが関与するということを認識していますが、研究によれば、適切な行動療法と周囲の支援がなければ、大半の喫煙者は禁煙を試み始めてから数日で喫煙を再開し、禁煙を維持できるのは少数に過ぎません。
ファイザー社メディカル部門のマイケル・ベレロウィッツ博士(Dr. Michael Berelowitz, Pfizer Worldwide Medical)は次のように述べています。「バレニクリンは、禁煙治療を目的に創薬された、ユニークで新しい治療薬です。喫煙者は簡単にはタバコを止められませんが、それはタバコに含まれているニコチンへの依存症となっているからなのです。これまでの研究では、行動についてのカウンセリングと薬物療法を組み合わせれば、支援なしに禁煙を試みるよりも、より効果的で費用対効果も大きいということが示されています。こうしたニーズに応えるため、ファイザー社では、新しい治療薬の提供に加えて、カスタマイズされた行動的支援を提供することとしました。それが今回の行動療法プログラムであり、禁煙のプロセスにおいて喫煙者を支援するよう設計されています」。
バレニクリンはファイザー社が発見・開発した禁煙治療のための医薬品です。この薬は喫煙者のタバコへの欲求やニコチンからの離脱症状(禁断症状)を緩和し,さらに、服薬中の患者さんがタバコを吸っても、バレニクリンが喫煙から得られる満足感を抑制します。バレニクリンの持つこの2つの作用により,ニコチン依存症に打ち勝つことを支持するのです。
欧州の多くの国々では、政府のタバコ規制政策を変更して、禁煙を望む喫煙者を支援する環境作りを目指しています。こうした政策には、タバコの広告やスポンサーシップの禁止、公衆衛生に対する警告の表示の強化、レストラン、バー、パブを含むあらゆる公共の場での喫煙禁止などが盛り込まれています。職場での全面的な禁煙はすでにアイルランド、イタリア、マルタ、ノルウエー、イングランド、スコットランド、ベルギー、リトアニアで承認されており、同様の政策がフランスやドイツなどの国々で検討されています。
パリにあるピチエ・サルペトリエール病院の集中治療部門のベルトラン・ダウツェンベルグ教授(Professor Bertrand Dautzenberg, Service of Intensive Care, Hospital Pitie-Salpetriere, Paris)は次のように述べています。「公衆衛生キャンペーンによって喫煙が健康に及ぼす弊害が広く理解されるようになり、喫煙者に対する教育的効果から禁煙への志向が高まっています。さらに、欧州で禁煙政策が普及した結果、禁煙を試みる喫煙者が増え、禁煙治療を必要としています。革新的な治療薬バレニクリンの承認により、ヘルスケア専門家と喫煙者は困難であるが克服すべきニコチン依存症と優勢に戦うことができるようになります」。
バレニクリン承認の根拠となったのは、およそ4,000名の喫煙者を対象に実施された4つの主要臨床試験を含む包括的な臨床試験です。対象となった喫煙者は,平均1日21本のタバコを平均25年間吸っていました。ほぼ同一のプロトコール下に実施された2つの臨床試験において、バレニクリン12週間、1日2回各1mgの投薬を受けた被験者は、12週間の投薬の最後の持続禁煙率がプラセボ群のほぼ4倍で、対象薬として用いたブプロピオンSR群の2倍近くになりました。 これらの臨床試験に参加した患者さんには、禁煙のための教育用資料が配布され、受診毎に簡単な禁煙カウンセリングを受けました。12週間の投薬終了後も40週間にわたって禁煙状況をフォローアップされました。1年後の時点で、バレニクリンの12週間投与を受けた患者さんのうち,5名に1名が禁煙を維持していました。また、バレニクリンの12週間投与を終えた時点で禁煙した患者さんは、さらに12週間バレニクリンの延長投与を受けると長期的に禁煙に成功する確率が高まりました。
全試験を通じて、バレニクリンの忍容性は良好であり、脱落率はプラセボ群と同等でした(バレニクリン群11.4%,プラセボ群9.7%)。最も多かった副作用は吐き気、夢の変調、頭痛、不眠、便秘、腹部膨満感、嘔吐でした。
バレニクリンは禁煙治療薬として米国食品医薬品局(FDA)2006年5月に承認されており,現在, チャンティックス(TM)(Chantix(TM))の製品名で発売されています。日本では本年6月に製造販売承認申請を行いました。
以上
ブプロピオンSR(bupropion):製品名 ザイバン(Zyban)、日本国内では未承認。データが示すところによると、バレニクリン(1日2回各1mg)による治療を受けた患者さんの約44%が12週間の治療期間が終わるまでに禁煙しました。これに対し、ブプロピオンSR(1日2回各150mg)群では30%、プラセボ群では18%でした。