ポーラ化粧品研究所、アルギン酸とその誘導体を使った新しいエマルションを開発
業界初アルギン酸およびその誘導体を使った新しいエマルションを開発
ポーラ化粧品研究所では、アルギン酸誘導体を業界で初めて乳化剤として活用し、油溶成分の肌への浸透性を高めた処方開発に成功しました。アルギン酸誘導体を用いたエマルションは従来の乳化剤を用いたエマルションと比較すると、油滴膜がやわらかいため、肌に塗布すると油滴がすばやく崩壊します。そのため油滴中の油溶成分の経皮吸収性が高く、なめらかな使用感が得られるという特長があります。そして、油滴の凝集を防ぐため、これまで考えられなかった架橋という方法でエマルションの安定性を実現しています。
一般的にエマルション(乳液)は、水の中に油を滴状に分散させた状態です。水と油は混ざり合わないため、乳化剤を用いて水の中に油を分散させています。しかし、時間の経過や温度の影響により、次第に油滴が凝集、合一をし、最終的に水と油に分離してしまいます。エマルションを安定化させるために、従来は油滴の周りに頑丈な膜を作る等の対策がとられていました。(図1)
一方で、油滴の安定性を高めすぎると、エマルションを皮膚等に塗布した場合、油滴の一部が破壊されず、油滴中に含まれる成分の皮膚への浸透を妨げる等の問題点がありました。今回、新しく開発したエマルションはこの問題点を解決し、エマルションとしては安定であるが、塗布するとすばやく油滴が崩壊するという特長があります。
アルギン酸およびその誘導体を使った新エマルションの構造
アルギン酸とは、海藻中に含まれる高分子であり、化粧品ではエステ用のパックに用いられていますが、乳化剤としての機能はほとんど有していないため、エマルションには活用されませんでした。
今回、アルギン酸の化学構造の一部を変えたアルギン酸誘導体(アルギン酸プロピレングリコール)を用いることで、油を乳化することが可能となりました。従来の乳化剤のように、油滴の周りに安定な膜を形成しにくいため、エマルションは非常に不安定であり、塗布すると直ぐに油滴が崩壊することが分かりました。
この不安定性を解消するために、従来の油滴の膜を強くする方法ではなく、アルギン酸で油滴同士を架橋するという全く新しい方法で、凝集、合一を防ぐことに成功しました。すなわち、アルギン酸誘導体で乳化した油滴同士に、アルギン酸で架橋することで、油滴同士の凝集、合一を物理的に抑制させ、安定性を高めています。(図2)
※エマルションイメージ図など詳細は添付資料参照