出光興産、ArFフォトレジスト原料のアダマンタン製造装置を徳山工場内に建設
ArFフォトレジスト原料アダマンタン製造装置を建設
~自社開発の環境負荷が少ない製造プロセスを世界で初めて採用~
当社(本社:東京都千代田区、社長:天坊昭彦)は、このほど、ArFフォトレジスト原料であるアダマンタン(注1)製造装置を、徳山工場内に建設することを決定しました。製造法には、当社が独自に開発したゼオライト触媒を用いる環境負荷の少ないプロセスを世界で初めて採用します。
近年、ArF(アルゴンフッ素)エキシマレーザー露光プロセス(注2)による最先端半導体の生産が開始されました。このプロセスでは、アダマンタン誘導体を原料に用いた高性能のフォトレジスト(感光材)が使用されています。当社は、ArFフォトレジスト開発の初期段階から需要家との共同取組を進め、ユーザーニーズに合致したアダマンタン誘導体(商品名:アダマンテート)を開発し、1998年より提供しております。この結果、当社は、主にArFフォトレジスト原料としてアダマンタン誘導体市場で約70%のシェアー(注3)を占めております。
ArFプロセスは、液浸技術等による技術革新により、今後半導体製造プロセスの主流になると予測されており、アダマンタン誘導体は大きな需要伸長が期待されます。現在、誘導体の原料であるアダマンタンは、処理が困難な廃触媒を発生させる塩化アルミ法により中国の中小メーカーでのみ生産されています。環境規制が厳しくなりつつある現状では、今後、多大な環境投資負担が発生し、供給面での問題が生じるおそれがあります。
この様な状況から、当社はアダマンタン誘導体事業の安定的な発展のためには、独自に開発した環境負荷の少ない触媒及び工業化プロセスを活用したアダマンタンの自社製造が必要であると判断いたしました。
既に周南市環境審議会にて承認されており、保安等の関係法令の許可後、2007年1月に着工します。
新設備の概要は以下のとおりです。
○アダマンタン製造設備の概要
1.生産能力 300トン/年
2.プロセス 自社技術によるゼオライト触媒法
3.建設場所 当社徳山工場内(山口県周南市、工場長:杉本祐司)
4.投資額 13億円
5.今後の予定 2007年9月 完工
2008年1月 商業運転開始
○新製造法の特長
(1)原料としてBTX装置から副生する豊富な未利用留分を有効活用する。
(2)ゼオライト触媒を用いるため、従来法の様な処理が困難な塩化アルミとタールの混合した廃棄物が発生しない。(環境負荷少)
(3)連続生産(従来はバッチ生産)による省力化プロセスであり、品質の安定性にも優れる。
当社は、アダマンタン誘導体の耐熱性や透明性、低誘電率等の特長を活かし、フォトレジスト原料以外の用途、例えば光学・通信や医薬品原料等、様々な分野において市場開拓を推進すると共に、原料のアダマンタンから誘導体までの一貫生産体制を確立し、「世界No.1のアダマンタンおよび誘導体メーカー」を目指します。
(注釈)
(注1)炭素数10の炭化水素化合物。ダイヤモンドの構造単位と同じ構造を持っており、透明性、安定性、低誘電率等に優れる。
(注2)半導体を製造する重要工程の一つであるシリコンウェハ上に回路パターン(半導体の設計図)を転写する際に用いるプロセス。ArFエキシマレーザー(波長:193nm)を光源に用いてウェハ表面に薄く塗布されたフォトレジスト(感光性樹脂)に光を照射、回路パターンの投影、現像処理を行い、回路パターンを転写する。従来のKrFプロセス(KrFエキシマレーザー、波長:248nm)に比べ光源の波長が短く、より微細な回路転写が可能である。
ArF半導体製造プロセスは、線幅90nm、65nmに止まらず、更なる技術革新(液浸技術等)による45nmへの応用が開発検討されており、中長期的に市場拡大が期待される。
(注3)当社推計
◆補足資料
添付資料をご参照ください。