東レ、LCDバックライト用機能統合フィルムの開発に成功
LCDバックライト用機能統合フィルムの開発に成功
―独自のフィルム設計技術と表面加工技術の融合で光学機能を1枚のフィルムに―
東レ(株)は、このたび、液晶ディスプレイ(LCD)のバックライト(光源)に用いられる複数の光学フィルムの機能を統合した革新的な光学用ポリエステル(PET)フィルムの開発に世界で初めて成功しました。本フィルムにより、バックライトの光線を画面全体に広げる拡散板(乳白板)をはじめ、集光機能を持つビーズシートやプリズムシートなどを1枚のフィルムにまとめることが可能となります。当社は本フィルムを、LCDの軽量化や部品点数の削減による製品設計の効率化に寄与できる先端フィルム材料として、本年度末から大型液晶テレビのバックライト用途を中心に本格展開して参ります。また、薄膜、軽量、高い光透過性に加え、優れた光拡散性と集光性などの特長を活かし、リアプロジェクション用スクリーンなどの各種機能フィルム、スクリーン材料としても幅広く展開していく計画です。
今回開発した新規機能統合フィルムは、当社独自のフィルム設計技術と表面加工技術の融合により実現しました。技術ポイントは下記のとおりです。
記
1. 「高性能内部拡散フィルム基材」の実現
バックライトの光を画面全体に広げる役割を担う拡散素子として、独自設計の屈折率制御ポリマー粒子を適用しました。これを新開発の特殊混練技術と高精度延伸製膜技術によりフィルム中に最適配置することで、これまで二律背反の関係にあった光透過性と光拡散性を高レベルで両立することに成功しました。本技術は当社独自の光学設計理論に基づくもので、光拡散性についても容易に制御することが可能です。
2. 「特殊形状インプリント」による光線制御
フィルムの表面に微細な凹凸を転写する「表面インプリント技術」を新たに開発し、高い光透過性と優れた光拡散性を両立した内部拡散フィルム基材表面に、光拡散機能と集光機能を併せ持つ特殊ストライプレンズ層を形成することに成功しました。レンズ層の厚みは僅か10~50ミクロンで、当社独自の光学設計技術を応用することで、バックライトの性能や特徴に応じて光線を制御することが可能です。
PETフィルムは、透明性、表面平滑性、強度、耐熱性、コスト面において優れた特性を有することから、LCD用の基材フィルムとして幅広く使用されています。LCD分野では現在、部品の高機能化と小型・軽量化、およびコストダウンが追求されており、フィルムに関しても、蛍光管やLEDなどから放射される不均一な光を、より明るく効率的に拡散して画面を均一にする薄膜・軽量な新素材の開発が求められています。しかし既存材料のさらなる改良だけでは、今後ますます高度化するLCD分野の技術要求に応えることが難しくなっています。一方、これまでPETフィルムに光拡散機能や集光機能を付与することは不可能とされてきました。これは、フィルム中に無機粒子や有機粒子等、異素材からなる拡散素子を添加すると、フィルム製膜時の延伸工程で拡散素子とベースフィルムの境界に隙間が発生し、フィルムの光透過性が損なわれて輝度が著しく低下する他、光拡散性の制御も困難であったためです。今回開発した機能統合フィルムは、これらの技術課題を一挙に解決したものです。
以上