飛島建設、地下空洞に起因する陥没などの防災対策工法を開発
地下空洞に起因する陥没などの防災対策工法開発
-3m超の空洞高さに対応する「限定充填工法」の隔壁施工法を実用化-
飛島建設(社長:池原年昭)は、廃坑、採石場跡や防空壕といった地下空洞に起因する陥没や沈下などの災害防止対策のひとつとして地下空洞充填工法に取り組み、広範囲に及ぶ亜炭廃坑等の地表面に施工する道路などの建設予定範囲に限定した地下空洞「限定充填工法」(特許第3807658号)を開発し、多数の実績を上げてきています。このたび、より高い空洞高さに適する高隔壁を構築し、且つ隔壁充填材の対象外流出を抑制する急勾配隔壁充填材を開発し、宇都宮市大谷石採石場跡の道路直下に限定した充填工事に適用しました。
これにより、空洞高さ1~3m程度の亜炭廃坑や水路跡等から高さ3m超の採石場跡などへ「限定充填工法」の適用範囲を広げたことにより、同工法の普及に道筋が出来たといえます。
【限定充填工法】
廃坑などの地下空洞には地下水や有毒ガスなどが充満しているケースが多く、充填する範囲を限定する隔壁構築や充填結果の確認が難しい工法でしたが、地下空洞の性状調査、隔壁構築、充填効果確認等、すべて地上から行う「限定充填工法」を開発し、着実に実績を増やしてきています。
限定充填工法は、最初に端部充填材を空洞内に充填して、対象とする空洞範囲の境界線上に連続した隔壁を形成します。その後、内部に中詰充填材を充填する工法です。(図-1参照)
図-1(*添付資料参照)
従来の端部充填材は、特殊水ガラスを添加したもので適度な流動性低下により、空洞天端への密着性を確保しつつ側面勾配を1:5程度とすることができます。亜炭廃坑などのように空洞高さが比較的低い場合には、端部材による隔壁の裾の広がりを数mにとどめることができます。しかし、採石場跡のような空洞高さの高い大空洞では、隔壁を形成するまでに大量の隔壁充填材が必要となり、境界外に流出する充填材量も多くなる課題がありました。
【大空洞向け端部材の開発】
端部充填材の構成材料である特殊水ガラスに替えて山岳トンネルNATM工法の吹付けコンクリートで用いる急結剤を適用することで、充填材に急硬性を付与し、流動性の低下と自立性の向上を図りました。吹付けコンクリートにおける粉じん低減対策工法として開発した「スラリーショットシステム」で用いるスラリー急結剤を充填工法用に改良しました。この急結剤はカルシウムサルフォアルミネートを主成分とするため、エトリンガイトの生成による早期の強度発現も期待できます。
端部充填材の性能確認試験では、充填形状の勾配1:3以下、空洞天端への密着性を確保するための押広げによる到達距離2m以上を目標にし、結果、勾配1:1.8、天端押広げ2m以上の性能が確認できました。
図-2(*添付資料参照)
【実施工への適用例】
・工事件名:市道640号線道路保全工事(地下空洞充填)
・発注者:宇都宮市
・工事場所:栃木県宇都宮市
・工期:平成17年12月2日~平成18年3月24日
・充填量:端部充填507m3,中詰充填190m3,計697m3
本工事は、宇都宮市に位置する大谷石採石場跡の道路直下に限定した範囲を充填する工事です。対象範囲の空洞の状況は、高さ約3m超程度、地下水なしであり、さらに、底面が傾斜しているため、従来の端部充填材では、充填材が対象外に流出する距離が約15m超にも及ぶと想定されました。
施工にあたっては、ボーリング孔から空洞内に挿入した空洞カメラで空洞内の充填材の流動状況を直接確認し、同じ孔から挿入したレーザー発信・受信機により、充填形状の勾配を測定しました。測定した4箇所の充填勾配は、目標とする1:3以下を確保できたものの、施工場所の低温が影響し試験施工結果に比べて緩勾配でした。
事後の検証では、材料温度と急結剤添加量に関し室内実験を実施し、実施工での急結剤添加量の妥当性を検証するとともに、低温環境下であっても急結剤添加量の調整等で、充填勾配の急勾配化に対して十分な性能を発揮できることを確認しました。
【今後の展開】
当工法は、東海地区の亜炭鉱を中心に事業展開していますが、地下空洞は全国各地に採掘・採石場跡、防空壕などの人工空洞や溶岩空洞、石灰洞などの自然空洞が分布しており、範囲を拡大して全国展開を図ります。
また、地下水の有無・空洞規模といった様々な地下空洞の条件に合致した充填工法および充填材の提案により、合理的かつ確実な地下空洞の防災対策を展開していきたいと考えています。
(*参考画像参照)
【地下空洞充填状況】
【地上事務所での注入状況モニタリング】
【地上での端部材試験:充填7m3】
【充填材:A液製造】
【充填材:B液製造(急結剤)】