花王、温熱パックによるひざ痛の緩和効果を確認
温熱パックによるひざ痛の緩和効果を確認
■温熱パックで4週間温めると生活困難度が軽減され、動きやすく
■動きやすくなると、温熱パック使用を止めてもその改善状態は持続
花王株式会社(社長・尾崎元規)は、ひざに痛みや違和感を持つ人を対象に意識と実態を調査するとともに、その対処方法として在宅での温熱パック長期連用試験を実施しました。
医療機関の報告によると「変形性膝関節症」の患者数は、50歳以上の日本人で3,000万人を超え、老後の介護要因にも繋がるため、その対策が急務となっています。今回の実態調査の結果でも、多くの人が季節にかかわらず毎日の生活場面で困難を抱えており、自ら色々な対処を行なっています。ところが膝関節症の原因である磨耗した関節軟骨に対しては、病院での治療も外科的手術は少なく、多くが鎮痛や筋力強化、柔軟性賦与、血行改善といった保存療法による進行防止と症状緩和が中心となっています。
そこで今回、保存療法の一つである温熱療法に着目し、「変形性膝関節症」と診断された患者を対象に、日常生活の中で毎日一定時間、家庭用温熱パックを装着したままで生活する試験を行ったところ、4週間で膝痛が緩和され、階段などでの行動困難度の改善を確認しました。また試験終了6週後も、試験4週目の改善状態が維持されていました。
この試験結果については第18回日本運動器リハビリテーション学会(2006年7月15日、岡山)、および第55回東日本整形災害外科学会(2006年9月15日、東京)において、順天堂大学医学部 整形外科 講師 池田浩先生および同総合診療科助教授 久岡英彦先生との共同研究として発表いたしました。
■温熱パック試験 方法と結果
●家庭用温熱パック試験方法
被験者 : 変形性膝関節症と診断された女性32名(45~69歳)。医療機関(順天堂大学付属医院整形外科)で膝関節のレントゲン撮影を行い、症状が急性期でなく温熱パック等の温熱療法が適性であると判断された被験者。
加温方法 : 市販の家庭用温熱パックを症状がある片方の膝に貼付。パックは伸縮性のあるサポーターで包み、普段通りの生活を行います。また加温(40℃前後)は4週間にわたり、毎日1回6時間を限度としました。
評価方法 : 変形性膝関節症に起因する「生活行動17項目」における自覚程度(過去48時間以内)を5段階で聞き取り調査。その程度は、困難が「無し」「少し」「中程度」「かなり」「極度」の5段階。
●結果I: 温熱パックで生活困難度が軽減/試験4週終了時
今回の被験者が感じる困難で一番多かったのは階段を降りる行動で、その他に床掃除や重いものを運ぶ、階段を昇る、床に落ちたものを拾う、あるいは車の乗り降り時などに多くの被験者が困難を感じていました。
このような生活行動での困難は、毎日加温することにより、中程度以上の困難度を自覚する被験者の割合は減り、大多数が「少し」ないし「無し」の程度にまで軽減する結果が得られました。 行動困難度が少なくなるため、生活の中で被験者が動きやすくなっていると推察されました。
●結果II: 試験終了後、温熱パック使用を止めても改善効果が持続/試験終了後6週目
試験終了後6週経過した時点で、被験者の一部(11名)の状況を調べたところ、11名中、7~10名の被験者が試験終了時の良くなった状態を維持していました。これは、温めることにより生活の中で動きやすくなり、そのため以後温めなくてもその改善効果が続いたものと思われました。
●変形性膝関節症に対する家庭用温熱パックの効果についてのコメント
<順天堂大学医学部 整形外科 講師 池田浩先生 >
温熱療法には血行促進や軟部組織の伸張性増大などの効果があるといわれていますが、今回の研究結果から、変形性膝関節症に対する温熱療法(4週間、毎日一定時間、膝に温熱を加える)は、疼痛などの症状緩和に対して非常に効果的であったと言えます。
またその改善状態は、調査終了から6週後も良い状態が継続していました。今回、評価として疼痛などの主観的項目とともに、日常生活動作の困難性など機能性についても検討を加えましたが、平地歩行や階段昇降時の困難性は明らかに改善していました。日常生活動作における疼痛の緩和や困難性の改善は、歩行などの活動性を増加させ、結果として膝周囲筋の強化や膝関節内・外の血行促進など新陳代謝にも効果的に作用し、歩くことを避けて弱っていた非生理的な膝を、より生理的な状態に回復させたことが、効果の持続につながったものと考えます。
今回の結果より、家庭用温熱パックなどで膝関節周囲を温めながら日常生活の中で適度な運動を心がければ、変形性膝関節症の症状緩和に対しては、さらに効果が上がるものと考えられます。