ポーラ化粧品研究所、肌内部の細胞接着装置にうるおいを守るシステムを発見
世界初肌内部の細胞接着装置にうるおいを守るシステムを発見
ポーラ化粧品研究所では、東京慈恵会医科大学DNA医学研究所(佐々木博之助教授)との共同研究で細胞と細胞を接着する因子「タイトジャンクション(TJ)」が、肌内部のうるおいを守る機能をもつことを、人の肌において世界で初めて明らかにしました。TJは細胞間を通り抜ける水分の調整を行う、いわば水門のような働きをしています(図1)。TJの水分バリア機能を向上させることで新世代の皮膚保湿機能が可能になります。
肌の保湿やうるおいは、これまで肌表面を構成する角層が鍵を握ると考えられ、角層を油膜でカバーして水分の蒸散を抑えたり、ヒアルロン酸など水分保持力の高い高分子で乾燥を防いだりするなどの方法が考えられてきました。
TJは腸などの上皮組織に多く見られる細胞間接着装置で、主に細胞と細胞の隙間を塞いで物質移動をコントロールする役割を担っていることが知られていました。皮膚においても近年TJが存在することが明らかとなりましたが、人の肌においてはその機能については不明でした。
TJにうるおいを守る機能を発見
ポーラと東京慈恵会医科大学は、人の皮膚の細胞で作った培養皮膚モデルにおいても、細胞間でTJが形成されることを確認しました。また、TJを形成させた場合と形成させなかった場合を比べると、TJがある場合は水分バリア機能が向上することを人の肌において世界で初めて確認しました(図2)。TJはいうなれば水門のように細胞間を通り抜ける水分を調節していると考えられます。
オウレンエキスにTJの修復効果を発見
培養皮膚モデルでは人工的に肌荒れをおこすとダメージを受けたTJは一時的に壊れることも判明しました。TJの修復には多数の植物エキスの中から、オウレンエキスが有効であることがわかりました(図3)。さらにオウレンエキスを実際に肌に塗布すると、水分が必要以上に肌表面から蒸発するのを防ぐ作用があることも判明しました。
この研究成果により、スキンケア化粧品で肌内部の水分貯蓄システムであるTJをケアすることにより、より確実に皮膚内部のうるおいまでも守ることが可能になります。
従来のような角層に水分を与えたり、肌表面に膜を作って肌からの水分蒸散を防いだりする保湿ケアに加え、TJの機能を向上させて肌の内側までも潤いで満たす保湿機能を持たせることで、スキンケア化粧品の機能を一層進化させることができると期待しています。
尚、この研究成果については10月に大阪で開催される国際化粧品技術者会(IFSCC)で発表します。