帝国データバンク、3月の全国企業倒産集計を発表
●2007年3月報
倒産件数は916件、2005年4月以降で最多
・倒産件数 916件
前月比 12.0%増
前 月 818件
前年同月比 8.0%増
前年同月 848件
負債総額 4730億7600万円
前月比 68.6%増
前 月 2805億9700万円
前年同月比 0.2%減
前年同月 4739億5900万円
【 ポイント 】
倒産件数は916件、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最多となった。これまで最多だった2006年12月(896件)を20件上回り、初の900件台。
負債総額は4730億7600万円で、前年同月を0.2%下回り、2ヵ月連続の前年同月比減少。負債トップは、貸金業のエス・エス・シー(株)(旧商号:四国日本信販(株))の約788億円。
3月は、三洋電機(株)(東証1部)が出資するゴルフ場経営子会社、(株)三洋スカイリゾート(負債116億円、大阪府)が、親会社の事業構造改革の一環として、民事再生法の適用を申請。
■件数
倒産件数は916件、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最多となった。これまで最多だった2006年12月(896件)を20件上回り、初の900件台。
倒産件数の推移は一進一退を繰り返しながら、確実にベースラインが上昇してきており、年度末にかけて倒産の増加ペースが加速した。
主な要因としては、業種別では建設、製造、サービス、規模別では負債1億円に満たない中小・零細企業の倒産増加が、全体の倒産件数を押し上げる要因となっている。
■負債総額
負債総額は4730億7600万円で、前月比は68.6%の大幅増加となったものの、前年同月比は0.2%の減少となり、2ヵ月連続の前年同月比減少となった。
負債額トップは、貸金業のエス・エス・シー(株)(旧商号:四国日本信販(株))の約788億円。
負債10億円以上の倒産は73件(前月54件、前年同月74件)発生しており、業種別ではゴルフ場経営業者が大半を占めている。
■業種別
業種別に見ると、「その他」を除く7業種中、建設業(241件、前年同月比+7.1%)、製造業(139件、同+35.0%)、小売業(166件、同+8.5%)、サービス業(170件、同+27.8%)など5業種で、前年同月比増加となった。
なかでも、製造業(139件)、サービス業(170件)は集計対象を変更した2005年4月以降で最多となった。また、建設業も241件発生し、前月(215件)を26件、前年同月(225件)を16件それぞれ上回り、「脱談合」加速の影響などから依然として高水準で推移している。
構成比でみると、上位は建設業(26.3%)、サービス業(18.6%)、小売業(18.1%)の順。
【 今後の問題点 】
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2007年3月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月(44.9)比0.6ポイント増の45.5となった。2006年8月以来6ヵ月ぶりに増加に転じた前月に続く2ヵ月連続の改善で、改善幅も前月(0.1ポイント)より拡大、これまでの悪化基調に歯止めがかかった。
■前月発表された2006年10~12月期GDPで順調な国内経済の拡大が示されていたなか、2007年1月時点の公示地価が3大都市圏の大幅上昇と地方中核都市への波及により前年比0.4%増(全国平均)と16年ぶりに上昇。バブル崩壊後長らく続いた土地デフレの克服が裏付けられ、幅広い業界で景況感が改善した。また、年度末を迎えて企業業績の堅調持続が改めて認識される時期だったことや、年度末特需のほか季節要因も景況感を押し上げた。
■しかし、地方圏を中心に地価下落が続いている地点も少なくなく、15県では景況感も悪化するなど地域間格差は一層拡大する様相をみせている。また、業界間や規模間でも格差が縮小する気配はない。各種経済統計では国内経済の拡大が示されているものの、その恩恵を享受しているのは大都市圏における一部の業界大手企業に限られ、地方圏や中小・零細企業はいまだ景気回復を実感できない状況にあるのが実態である。
■こうしたなか、2006年度の法的整理による倒産は9572件となり、前年度(8759件)を9.3%上回った。月ベースでみても、件数は一進一退を繰り返しながらも前年同月比ではほぼ一貫して増加。特に3月は前月比12.0%増、前年同月比8.0%増の916件と2005年4月に集計対象を変更して以降で初めて900件台に達するなど、年度末にかけて倒産の増加ペースが加速した。
■一方、負債総額は5兆2565億1500万円にとどまり、前年度(5兆7494億4100万円)に比べ8.6%の減少となった。大型倒産上位の顔ぶれをみると、不動産業やゴルフ場などバブル処理型案件でほぼ占められ、実体のある企業の大型倒産は1年を通して沈静化した。
■半面、負債1億円未満の倒産は5637件と前年度比15.6%増加し、業種別では小売業やサービス業など内需関連が増加、地域別では地方圏の倒産が目立った。景気回復局面でも「不況型倒産」の割合が7割を大きく上回っているのは、景気回復が遅れる地方圏の中小・零細企業や内需関連企業が業績不振で力尽きていることに起因しており、「倒産件数増、負債総額減」という現象も倒産の二極化構造の深化によるものにほかならない。また、ジャスダック上場の(株)ユニコ・コーポレーション(負債891億7000万円、北海道、10月)や東証2部上場の(株)アイ・エックス・アイ(負債119億2300万円、大阪府、1月)など、IT・新興ベンチャー系でコンプライアンス違反など放漫経営型の倒産が頻発したことも、2006年度の倒産の特徴といえる。
■国内経済は、長期的な世界経済の拡大とともに順調な成長が見込まれている。しかし、「脱談合」が加速し、個人消費も依然として盛り上がらないなかで、今なお景気回復感の乏しい地場建設会社や下請け業者、小売業者は窮地に追い込まれている。また、資源価格の上昇も中小・零細、地方圏の企業体力を疲弊させているうえ、今後、金利引き上げやセーフティネットの役割を担ってきた中小企業向け公的信用保証制度の縮小、貸金業法の改正による融資の引き揚げ圧力なども、倒産リスクを増幅させる公算が大きい。
■業界・規模・地域間の業況格差のさらなる拡大が不可避な状況下、内需関連や中小・零細企業、地方圏の小口倒産が続発することは避けられない。監査の厳格化によるIT・新興ベンチャー企業の倒産や資源価格高騰倒産も上乗せされる形で、倒産の「件数増、負債総額減」傾向は変わらないまま増加基調が維持されるものと思われる。