新日本科学子会社、経鼻投与技術の研究開発など独占的権利を米社に供与
当社子会社の経鼻投与技術の導出契約締結に関するお知らせ
~不妊症並びに骨粗鬆症の治療(少子高齢化対策)に新たな道~
当社の100%子会社『Translational Research株式会社*1(略称:TRL社)』は、同社が開発した経鼻投与技術を用いた4種類の薬物〔FSH*2(卵胞刺激ホルモン)、PTH*3(副甲状腺ホルモン)、PTHrP*4(副甲状腺ホルモン関連ペプチド)及びGHRP*5(成長ホルモン放出ペプチド)〕への応用について、研究開発、製造、販売等に係る独占的権利をTokai Pharmaceuticals, Inc.*6(本社:米国マサチューセッツ州、以下TP社)に供与する契約を締結しましたのでお知らせいたします。
近年、不妊症は増加傾向にあり、妊娠可能年齢にある夫婦の約15%が約2年間の不妊の後に治療を受けています。その治療に関わる米国市場規模は2兆円にも達すると報告されています。FSHの注射薬は不妊症に対する有効な治療薬でありますが、問題は、卵子が成熟するまで約2週間、毎日通院して、皮下あるいは筋肉内に注射を続ける必要があるということです。加えて、注射部位は発赤したり、腫脹したりすることがありますので、毎回注射部位を変えて打つ必要もあり、患者さんにとってはかなりの負担が伴います。また、骨粗鬆症は人口の高齢化により著しく増加しており、2000年における主要国の骨粗鬆症患者数は3,500万人にも達しています。その治療薬に関わる米国市場規模は、2003年で8,500億円に達し、2014年には2兆円弱の規模になると報告されています。骨粗鬆症の治療薬として用いられているPTHやPTHrPは、いずれも骨形成促進作用を有しており、有効性も高いことが知られていますが、長期間にわたって注射を打ち続ける必要があります。これらの理由から、不妊症や骨粗鬆症の治療には、注射剤に代わる方法、すなわち痛みを伴わない、利便性の高い投与方法が強く望まれていました。
今回、TP社は、TRL社が開発した経鼻による薬剤投与技術を用いて、FSH、PTH、PTHrP及びGHRP等の経鼻剤開発に着手し、製造、承認及び販売を目指すこととなります。これらの治療薬の経鼻剤開発は、患者さんを注射の苦痛から解放し、QOL(Quality of Life:生活の質)向上に大きく貢献するものと確信しております。なお、本契約の締結により、TRL社は、ライセンス料(契約時:5万ドル、以後4年間で47.5万ドル、合計52.5万ドル)に加えて、製品販売に伴うロイヤルティーの支払いをTP社から受けることとなります。
他方、TRL社は、モルヒネ(鎮痛剤)とグラニセトロン(制吐剤)についても経鼻剤開発を自社で進めており、これらの開発と併行して、新たな他の新規薬効成分に関しても、本経鼻技術への応用に関わる研究開発とその導出契約交渉を積極的に進めてまいります。
なお、本件が当社グループの当期の業績に与える影響は軽微であります。
以上
【備考】
*1 Translational Research株式会社;当社グループ事業展開の一環であるトランスレーショナルリサーチ事業の基幹企業であり、薬効成分を鼻粘膜から吸収させる新しい経鼻送達技術を開発いたしました。TRL社が開発した経鼻送達技術の最大の特徴は、鼻粘膜に対して刺激性を有する吸収促進剤等を一切添加せずに、有効な量の薬効成分を吸収させ得るという極めて高い安全性にあります。現在、その経鼻送達技術を、鎮痛薬であるモルヒネや制吐剤であるグラニセトロン等に適用し、開発を進めております。即効性や吸収性に優れた当経鼻送達技術の応用によって、従来、注射以外の方法では十分な治療効果が期待できなかったモルヒネやグラニセトロンの投与が、簡便かつ無痛で行えることとなり、患者さんの痛みや悪心・嘔吐を即緩和させることが可能になります。
*2 FSH(卵胞刺激ホルモン);下垂体から分泌されるホルモンで、卵胞の発育を促進します。FSH製剤の外的適用は、不妊症治療を目的としているものです。
*3 PTH(副甲状腺ホルモン)
*4 PTHrP(副甲状腺ホルモン関連ペプチド);PTHは副甲状腺から分泌されるホルモンで、骨組織へのカルシウム動員を制御しています。PTH製剤の外的適用は、骨組織へのカルシウム沈着量を増加させることが可能で、骨粗鬆症患者で認められる骨塩量減少を回復させます。PTHrPはPTHと同様の作用が期待されています。
*5 GHRP(成長ホルモン放出ペプチド);成長ホルモンの分泌促進作用及び消化管運動性を促進するモチリン様作用を有しています。GHRPの外的適用は、拒食症治療などへの応用等が期待されています。
*6 Tokai Pharmaceuticals, Inc.;Apple Tree Partnersを筆頭株主とするバイオベンチャー企業であり、内分泌・代謝性疾患分野(特に産婦人科領域と加齢性疾患領域)におけるバイオ製剤を主体とした治療薬の開発を主力事業としており、現在内分泌・代謝性関連薬効成分の注射剤開発を実施しております。
